裏切りのサーカス (※やおい視点強め注意)

 29,2012 23:57
観終わった後、「もう1回絶対観る!」と即断した久しぶりの作品。


東西冷戦が予断を許さない状況の1970年代前半、英国情報局秘密情報部(MI6)が舞台。MI6といえばジェームス・ボンド! ――が有名だけど、ハッキリ言ってこの作品には、ボンド的華やかさやきらびやかさはまっっったくありません。大体、スクリーンに映し出される風景はいつもどんより曇って陰気で寒そうだしね。


でも静かにゆっくり、しかし後半は怒涛の展開を繰り広げる物語に、気付いたらドップリとハマってるのー!!!


裏切りのサーカス
原題:TINKER TAILOR SOLDIER SPY
監督:トーマス・アルフレッドソン 2011年 イギリス・フランス・ドイツ

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※やおい脳全開、かつネタバレ含み、かつ暑苦しく語っているので折りたたみます
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東西冷戦下、英国情報局秘密情報部MI6とソ連国家保安委員会KGBは熾烈な情報戦を繰り広げていた。 ある策略により、英国諜報部<サーカス>を去ることとなった老スパイ・スマイリーの元に、困難な任務が下される。 それは、長年に渡り組織の幹部に潜り込んでいるソ連の二重スパイ<もぐら>を捜し出すこと。 標的は組織幹部の4人、<ティンカー(鋳掛け屋)、テイラー(仕立屋)、ソルジャー(兵隊)、プアマン(貧乏人)>。 過去の記録を遡り、証言を集め、容疑者を洗いあげていくスマイリー。浮かび上がるソ連の深部情報ソース<ウィッチクラフト>、そしてかつての宿敵、ソ連のスパイ<カーラ>の影。やがて彼が見いだす意外な裏切者の正体とは―。


諜報部(サーカス)幹部の中にいる裏切り者“もぐら”を突き止めるため、一度はサーカスを去ったスマイリーが、工作員・ギラムを相棒として、元同僚たちを探っていく。


誰もが怪しげで、誰もが一癖ありそうで、誰が“もぐら”でもおかしくないように見える、サーカスの面々。

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この沈鬱な雰囲気もザワザワする


地味でなかなか進展しない捜査の様子と、時々差し挟まれるスマイリーの過去の回想シーンが、あまりにも静かで淡々としているので、ちょっとダレそうになってしまうのだが。


ギラムの部下の工作員・リッキーが登場してからガシンとギアが一つ上がり、任務に失敗して亡くなったと思われた元工作員・プリドーが生きていたと分かって、さらにギアがまた一つ上がり――気づいたら物語の展開に目が離せないまま、一気にラストになだれ込むのだった!

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ギラム役はドラマ「シャーロック」のシャーロックを演じるベネディクト・カンバーバッチだよ!


ちなみに、スマイリーの回想シーンも、もちろん“もぐら”捜査にピタッとハマります。1シーンたりとも、ムダはありません。


それにしても何がビックリしたって、ゲイリー・オールドマンの物静かな演技ですよ! 「シド・アンド・ナンシー」とか「ブリック・アップ」とか「レオン」とか、ちょっとブッ飛んだ役の印象とは正反対。地味でどこにでもいそうな老けた姿が新鮮だった。

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コントロール役のジョン・ハートも素敵な枯れっぷり


そして、ほかのサーカスのメンバーも皆、地味で目立たず、しかし油断ならないたたずまいが、いかにもスパイという感じ。


腹に一物あり、内心では何を考えているのか分からない、互いのことを信頼などしていないような得体の知れなさが、サーカスの男たち全員からにじみ出ていた。


まあ、だからこそ、“信頼”が伝わる関係がやけに目立って、ハァハァしちゃったんですけどね。


――ええ、この映画、わたしにとっては久しぶりにやおい脳がフル回転しっ放しだった映画でした。


いえ、作中、登場人物たちのセクシュアリティがサラッと分かるシーンもあるんですよ。ギラムは男性の恋人と同棲していたし、ヘイドンは女だけでなく若い男の愛人がいると告白するし。


もちろん、そのシーンも印象的ではあったのだけど、そうと説明されていないけどビンビンと匂う関係の熱さ・深さに、もう何度心の中で「ギャーッ!!」と叫んだことか!


その1
“もぐら”を突き止める作戦が失敗し、リーダーのコントロールが責任を取ってサーカスを去るのだが、その際、彼の右腕だったスマイリーを「スマイリーは私と共に去る」と断言し、スマイリーの意思を確認することなく、二人で粛々とサーカスを後にする。コントロールが信じていたのはスマイリーだけだったってことでOK!?

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沈黙したまま、スマイリーとコントロールはサーカスの前で別れるのだった……


その2
ギラムが、仕事の先輩として、かつ任務のボスとして、スマイリーを信頼し敬愛しているらしい様子が、物語が進むにつれて色濃くなっていく。

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かぶりつきそうな勢いでスマイリーを見つめるギラムくん


その3
“もぐら”の手がかりを掴みかけたリッキーが、イスタンブールから命からがらロンドンに帰ってきてスマイリーの自宅に侵入し、スマイリーに「あなたに会いたかった」と告げる。そりゃ、そっちの意味じゃなくて、掴んだ情報を報告するために「会いたかった」なのは分かってるけどさ。

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妙に唇が印象的なリッキー役のトム・ハーディー。フレッシュ感あふれているけど彼もベテラン工作員


その4
コントロールの作戦でブダペストに派遣され、KGBに撃たれた工作員・プリドーは、サーカスのヘイドンと学生時代からの親友同士で、サーカスの元職員からも「いつも一緒で一心同体」と評されていたほどの仲。プリドーはブダペストに行く前にヘイドンに会いに行き、ヘイドンはプリドーが撃たれたと聞いて、深夜にも関わらず真っ先にサーカスに駆け付けた。


――このプリドーとヘイドンの関係は、物語が進むにつれてあちこちに散りばめられ、ジワジワ来るんだな、これが。


プリドーが撃たれた夜、ヘイドンはハンガリー大使館に電話し、「プリドーが死んだら容赦しない!」と怒鳴るし――

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洒落者ヘイドン役、コリン・ファースのシニカルな役どころは、「アナザー・カントリー」が思い出されてニヤニヤしたよ!


ヘイドンが撃たれたプリドーの自宅に行った際、二人が肩を組んで笑って写っている学生時代の写真を、そっと上着の内ポケットに入れちゃうし――


プリドーは、転校生でクラスになじめない教え子の名前が「ビル」(ヘイドンの名前)と知り、「ビルという名前はいいヤツばかりだ」とつぶやくし――

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プリドー役のマーク・ストロングは、目力強し。ちょっとニコラス・ケイジに似てるような


プリドーが撃たれる前、コントロールがリーダーだった頃のサーカスのパーティーでは、ヘイドンがプリドーを探し、見つけると視線を交わし合って微笑みあうし――


まだまだあったはずだけどとりあえずここまで。とにかく、パンフレットや映画サイトには「プリドーとヘイドンは親友」と説明されているけど、どうしてもどうしても、親友以上の何かが感じられて仕方ありません。特にプリドーの方ね!


とどめは、ラスト、ソ連に送還されることになったヘイドンを、プリドーが射殺するシーンでしょう! 視線を絡めあった直後、一発で急所を撃つプリドー。あれを見た瞬間、「愛だ……愛だよ……!」と心の中で絶叫したもんね。


――暑苦しく萌えを語ってしまいましたが、少ないながらも、女性もしっかりと存在感をアピールしていたのもよかった。特にKGBの工作員・イリーナね。イリーナの死を知らず、彼女を待つリッキーの姿が、ちょっと切なかった……。

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イリーナとリッキーの腹の探り合いを見ていたせいか、この二人は恋人というより“同志”のように見えたんだよな


“もぐら”を突き止め、サーカスのリーダーに就任したスマイリーの淡々とした姿に、ちょっとだけゾクッとした。スマイリーは、本当は何かを知っていたんじゃないか? と思わせられて。

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リーダーの椅子に座るこのシーンは、妙な威圧感があった


きっとその後は、ギラムを右腕として、スマイリーは諜報活動を取り仕切っていくんだろうなぁ……。


2回目に観た時、1回目に観た時には気づかなかったことに気づいて、ちっとも飽きなかった。それどころか、もう一度観たいと思ったほど。


でもさすがに映画館で観るのは限界があるので、来月発売されるDVDを買って、また舐めるように観ようと思っている。


ああ……髙村薫のスパイ系の作品、「リヴィエラを撃て」や「李欧」が、こんな風に映画化されたらなぁ……!



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Tags: “漢”な映画 ゲイ バイ

Comment 4

2012.11.07
Wed
22:47

rili #KD5XUSzs

URL

初めまして。
いつも楽しくブログを読ませて頂いてます。
今回は私も好きな映画の話が出たのでついコメントします!

ビルとジムは原作の小説では性的な関係がある、という
扱いでしたよ。原作のギラムは女好きだったので、
セクシュアリティが変化したのはビルとジムの関係をより強く
匂わすためだったのかなぁ・・・とか考えました。
でも、私も映画が先だったので、見ていてあまりにやおい妄想が広がり過ぎて頭がどうかなりそうでした(笑)
そんなに妄想が広がるのも原作がそうだから仕方がないですよね!

編集 | 返信 | 
2012.11.08
Thu
05:57

lucinda #-

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コメントありがとうございます

> riliさん

初めまして、コメントありがとうございます!
先日、書店の平台に乗っていた原作を思わずパラパラっとめくってしまったのですが、「ギラムはゲイってわけじゃないのか…?」と思っていました。なるほど、そういうことだったんですね~!
そして、ビルとジムは原作では関係があったっというのも、やはり…!とニンマリしました。いや、映画ではビンビン漂ってましたよね? 「言わんでもわかるだろ?」って挑発されているのかと思うほどでしたよね!?<興奮し過ぎ

>やおい妄想が広がり過ぎて頭がどうかなりそうでした
わかりますわかります。仕方ありません(笑)

編集 | 返信 | 
2013.02.17
Sun
16:12

通りすがり #JalddpaA

URL

画像検索でこちらに辿り着きました。
去年の記事にコメントするのもどうかと思ったのですが、
最後のシーン、La merでスマイリーが最高責任者の席に着くシーン、本当はこれをスマイリーが一人で聴くシーンも撮ったそうですが、そのシーンを入れてしまうと、色々な意味で情報や解釈を入れすぎてしまうと、監督が外したそうです。
「スマイリーは、本当は何かを知っていたんじゃないか? と思わせられて。」ですが、「キム・フィルビー」で検索すると、オチがご覧になれると思います。
失礼いたしました。

編集 | 返信 | 
2013.02.24
Sun
01:06

lucinda #-

URL

コメントありがとうございます

> 通りすがり さん
お返事が大変遅くなり、申し訳ございません。
過去のエントリでもコメントは大歓迎です。ありがとうございます!

最後のシーン、ほかのバージョンも撮ってたんですね。そして「キム・フィルビー」みました。ある意味、この人は幸せな人だったのかもなぁと思いました…。なんかアナザー・カントリーもますます見直したくなりましたw

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