百合男子 2 (倉田嘘)

 29,2012 21:57
「熟な腐女子を探る!(仮)アンケート 第2回『一番お金をかけてるのはどれ?』」を実施しています。アンケートフォーム上では、100票まであと少し! 携帯電話からフォームに行けないというご報告がちらほらあるので、フォームへリンクを貼ってみました。31歳以上腐女子」(赤いアンケートフォーム)と「30歳以下腐女子&腐男子」(青いアンケートフォーム)があります。ご協力をよろしくお願いいたします!



先日帰宅途中、踏み切りで電車が通過するのを待っていたら、斜め後方で


「『おおぶり』好き~! いいよね~!! 特に●●ちゃん(キャラ名忘れた)がほんとカワイイよね!」
今度『おおぶり』の総受けキャラについて語ろうよ~!


と、はしゃいだ会話が聞こえてギョッとしたlucindaです。できる限り自然な感じで恐る恐る振り返ってみたら、部活帰りなのか、ジャージを着たスポーティーな雰囲気の娘さん2人だった――。


間違いなく腐女子だろうけど、でも、遮断機の音で会話が聞こえてないと思ったら、大間違いなんだから!


まあ、萌えすぎるあまり興奮して声が思わず大きくなったり、妄想がダダ漏れてニヤついたりというのは、わからなくもないですけどね。


この作品の主人公も、激しすぎる百合妄想のせいで、ちょっと不審なヒトなっているのは前回と同じ。でも今回はなんだか、やけに苦悩していた。


百合男子 2巻 (百合姫コミックス)百合男子 2巻 (百合姫コミックス)
倉田 嘘

一迅社 2012-06-18
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少女同士の関係性を主に描いた“百合”に萌えてしまう“百合男子”花寺啓介。
そんな彼と、百合男子の在り方をめぐって、啓介と真っ向から対立するチャラ男・籠目正二郎、啓介の過去を知っているらしい魚屋の出現…自分がなぜ百合に萌えてしまうのか、そしてそのきっかけはいつからだったか…そんな新たなかたちの残念系男子・啓介のルーツが明らかになる第2巻。…別に明らかになんかならなくても…という意見は至極もっともであるが、あしからずご了承頂きたい。


「百合男子」とは、つまり百合に萌える男子たちのこと。文字通りそのまんまだけど、「腐男子」を百合に萌える男子だと解釈する向きもある、とTwitterで見かけてのけぞったわたしとしては、直球表現の「百合男子」は正しいのではないかと思うわけであります。


主人公の高校生・啓介は、百合ジャンルの商業誌や同人誌を愛読する一方、同じクラスの女子(宮鳥、藤ヶ谷、松岡)に百合妄想をして悦に入っているバリバリの百合男子。


1巻もそうだったのだけど、啓介たち百合男子の百合に対するさまざまな見解は、“やおいあるある”だよなぁと、改めて唸った。腐女子のやおいに対する気持ちと対称を成しているというか、相似形を描いているというか――。


例えば啓介が、宮鳥・藤ヶ谷・松岡の会話のやりとりなどから、百合作品の定番シーンをすかさず連想して萌え、脳内で“リアル百合”としてダダッとショートストーリーを組み立てていくその才能(?)は、程度の差こそあれ、腐女子も持っているんじゃないかしら。


2匹の猫がじゃれ合っている様子を見て「きっとつがいよ~」とはしゃいでいる女性のそばを、「両方雌だとは思わないよな……」と通り過ぎる様子や、


日常生活でも広告の文字をことごとく百合に空目したり
テレビの音声に過敏に反応したり(エ●アンの絵にフイた)


という若干自嘲的なモノローグなどなど、ページのあちこちに「あるある」と思ってしまうネタが描き込まれているので、読んでいるとだんだん、


――やおい・BLに萌える女性と、百合に萌える男性とで、感覚の違いはあんまりないんだろうか!?


とさえ思ってしまう。特に2巻の帯のコピーにも使われている、啓介の唱える「百合男子の定理」


俺の嫁なんて、いねえ!!
惚れず! 求めず! 踏み込まず!



なんて、目にした日には! 何この既視感さえ覚える、傍観者的立ち位置。男性オタクで「俺の嫁なんていない!」と言い切るって、ちょっと珍しいんじゃないかなぁ……。


しかし2巻で啓介は、フィクション(百合)と現実(リアルなレズビアン)の境目との折り合いのつけ方について、百合男子仲間の籠目に厳しい指摘を食らってしまう。


籠目のセリフが興味深いので、長いけど引用してみる。


大体 百合を愛すると言うけれどその百合ってなんだ? セクシュアルマイノリティー つまりは他人の苦悩を餌にした妄想じゃねぇか
俺たちは女子に魅力を感じるからこそ 百合に興味を示す訳で 結局根底にあるものはヘテロセクシュアリズム!
百合っぷる(※注:百合カップルのこと)とは最もかけ離れたところに居るただのヘテロの野郎さ!
蚊帳の遥か外から娯楽の延長として注がれる自分本位の興味なんざ 文字通り「興味本位」
だからそんな人間が理解しようがしまいが 礼を尽くそうが尽くすまいが 存在自体迷惑でしかねぇ!
百合男子は百合男子である限り彼女らにとって 唾棄すべき存在以外の何者にもなれないんだよ!


「百合」を「やおい・BL」に、「百合男子」を「腐女子」にすると、妙な説得力を感じやしませんか?


百合・BLと、実際のセクシュアル・マイノリティとの対比については、結構大きく難しい問題だと思う。個人的にはこれまで何度かここに書いたように、百合・BLはまったくリアルとは別モノである、と言い切ることに抵抗があるけれど。


ただ、啓介はこの籠目の指摘に対して、自分なりの回答をまだ出していないようなので、今後どんな回答を導き出すのか、ちょっと楽しみだ。


啓介の妄想や感覚に共感してしまうところは多々あるものの、籠目との対立や、啓介に百合を教えた“師匠”である魚屋のオヤジとのやりとりは、少年マンガのやたらドラマチックな対決シーンそのものなのが笑える。


あと、この作品独特の百合用語(?)も面白くてニヤけるのだ。百合カップルという意味の「百合ップル」とか、百合だったはずなのに最後は男とくっつく「百合百合詐欺」とか、百合男子のリーダーってことで付けられた「百合ーダー」とか。


意外と他人な感じがしない百合男子――なんだけど、わたし本人は相変わらず百合作品にあまり食指が動かないのが、なんともねぇ……。


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Tags: 倉田嘘 百合 百合男子 セクシュアリティ レズビアン

Comment 4

2012.07.31
Tue
16:19

いお #-

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読みたい!

はじめましてこんにちは、ブログ楽しみにチェックしてます!

最近私も腐女子(自分含め)の生態が気になって仕方がなく、中島梓さんや斉藤環さんの本を読んでみたりしていました。
このブログでのアンケートも前回同様楽しみにしています。

で、「百合男子」。
書店で見かけて「これはっ…!」と思い、購入しようかどうか迷っていたところでした。
lucindaさんもやはり読んでいらしたのですね。レビューを読んで「思った通り腐女子あるあるだ!買わなくては!」と今うずうずしているところです。

思わずコメントしてしまいました。
ではでは失礼しました。

編集 | 返信 | 
2012.07.31
Tue
19:36

卿熙 #sSHoJftA

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BLと百合ものと実際のセクシュアル・マイノリティー

こんばんは、lucindaさん。またお邪魔させていただきます。:D

実は私、百合ものも大好きなのでこの書き込み、すごく参考になりました。
ぜひ読んでみます(笑)。百合男子、まったく腐女子と変わらないな、と思いました。(笑)。


そう言えば、BLって、形は同性愛ですが、結局「異性愛」の規範を越えられず、かえって「異性愛規範」をより堅いものにする側面あるな、と思えてくる時があります。攻と受のあり方が異性愛社会の男女のあり方そっくりな作品であればあるほど、そう思えてきます。「少女マンガやレディコミとこれが何が違うんだろう。受が男性の体だということだけで、考えるのはまったく女そのものじゃん」と思える作品も、少なくないです。今の自分は、BLの読者の多くがセクシュアル・マイノリティーじゃなくヘテロの女性だから、作品に彼女達の好みに合わせて「男女カップルそっくりの形」のカップルが出て、実際のマイノリティーのカップルとは違うカップルが出るわけ、かなと思っています。
作品の中ではヘテロもセクシュアル・マイノリティーも共感できる作品もあって、ヘテロの場合BLのおかげ(?)でセクシュアル・マイノリティーのことを思いやることができるようになった人もいるのは確かだと思います。作品のよっては実際セクシュアル・マイノリティーの方々が自分と近い存在として登場人物に共感しながら読むこともあります。それをみたら、やっぱり、BLが異性愛の規範を踏襲するところも、異性愛社会のセクシュアリティーの在り方を考えさせるところもあるかな、と思えてきました。

編集 | 返信 | 
2012.08.03
Fri
09:04

lucinda #-

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コメントありがとうございます

>いおさん
初コメントありがとうございます! レスが遅くなってすみません。
「百合男子」は、私的には予想以上にヒット作でした。古今東西の名言をいちいち百合にアレンジしているウザさもウケます(笑)。
ぜひ読んでみてください!

>卿熙 さん
いつもコメントありがとうございます。レスが遅くなってすみません。

>百合男子、まったく腐女子と変わらないな
⇒「百合男子」のやたら理屈っぽいところは、男子っぽいなーって思いましたけどね(苦笑)。ただ、ほかの百合男子が啓介みたいなのかというところは疑問ではあります。

>BLって、形は同性愛ですが、結局「異性愛」の規範を越えられず、かえって「異性愛規範」をより堅いものにする側面あるな、と思えてくる時があります。
⇒まあ、そういう面はありますよね。少女マンガやレディコミと変わらない、と思える作品もありますが、でも少女マンガやレディコミでは満足できないのでBLを読んでいるという部分もあると思うと…この辺はいろいろな見解が出ていますし、「BLとは」を考えるポイントの一つなんだろうと思います。

>BLが異性愛の規範を踏襲するところも、異性愛社会のセクシュアリティーの在り方を考えさせるところもあるかな
⇒あると思います。BLも時代(?)と共に変わっている面もあると思いますし…。表現規制問題があるので、今後尻すぼみになるのではという恐れはありますが、ガシガシ本を読みながら見守っていきたいと思います(笑)

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2012.08.03
Fri
16:52

lucinda #-

URL

拍手コメントRES

>08/01 21:11 Hさま
初コメ、ありがとうございます!
百合に食指が動かない理由は、おそらく、百合モノはほぼ中高生モノだからかなーと思っています。BLでもそうなんですが、中高生にあんまり興味ないんです^^;
もちろん、良い作品もあるので、まったく読まないわけじゃないんですが…。大人の百合作品、ないかなぁ…

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