アンダルスの獅子(松岡なつき)

 02,2012 23:15
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アラブBL作品にあまり触手が動かないわたくし。でもこの作品のあらすじを読んだら何となく見過ごせなくて、読んでみたら――。


アラブはアラブでも、異色の歴史モノ・アラブBLだったよ!


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松岡 なつき 亜樹良 のりかず

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キリスト教徒による国土回復運動が終盤を迎えようとしていた15世紀スペイン―最後のイスラム教国であるアル・アンダルスの武人サイードは、海賊に捕われ奴隷として売られそうになっていた敵国商人の息子ラファエルを、宮廷に入り込んだ間諜を探らせるため買い上げる。天使の名ながらも、あくまで屈伏しない意志の強い瞳を持つラファエルに興味を抱き、戯れにその体を凌辱するサイード。そして常に黒衣をまとい、魔神に魅入られた男と畏怖されるサイードの冷めた傲慢さに、激しい憎悪と反発心を抱くラファエルだったが…。



舞台はイスラム勢力が統治する、15世紀スペインのアンダルシア地方。「FLESH&BLOOD」の1世紀ぐらい前の頃ですかね。こんな時代を選ぶなんて、実に松岡先生らしいじゃありませんか! 


アラブ系の傲慢な攻め×異教徒で奴隷にされた受け、という組み合わせはアラブBLの定番が押さえられてはいるけれど、何しろ舞台は15世紀スペインのレコンキスタの時代ですからね。異教徒の受けは、栗色の髪と淡褐色の瞳を持つカスティーリャ人です。


カスティーリャってどの辺りだっけ? と調べてみたのだけど、有名な地域としては、トレドやマドリード、バレンシアがあるようだけど、なんだかいろいろ複雑そう……。ま、とにかく、カスティーリャもアンダルシアと同様、スペインの一地域です<大雑把すぎ


ともかく、歴史モノ、それも外国が舞台の歴史モノで、さらにいえば日本人にあまりなじみのないスペインのイスラム教徒VSキリスト教徒の歴史世界を選び、おまけに日本人を一人も登場させないという、商業BL小説としては茨の道を選んだと言ってもいいようなこの設定。ついでに、砂漠もラクダも登場しません。


魂が震えます――そのチャレンジ精神に!


単にわたしが歴史好きなだけとか、ニッチ好きなだけとか、そんな話もあるけれど。


しかし物語自体も、もちろん上質だった。まあ松岡先生のことなので、歴史考証がしっかりされているのは当然として、物語がイスラム教国側で進行するため、西洋史にありがちな、キリスト教世界が正義であり是であるという視点で描かれていないのも、良い。


攻めのサイードの生い立ちには悲劇があって、それがサイードに付けられている「魔物」や「妻殺し」という、ちょっと不吉な二つ名の秘密に間接的に関わっているというエピソードは、アラビアンナイトの中の話のようにも思えて面白かった。単に“奴隷頭の宦官”が登場しているからかもしれないけどさ。


サイードについては、あとがきで松岡さんは、松岡さんご自身が理想とする「傲慢攻め」を描いてみた、と書かれていた。「理想の傲慢攻め」とはすなわち、「ちょっと受けに酷いことをしたと思っても、決して退かず謝らず、しかし受けの心はしっかり読み取って後でフォローする」というもの。


ええ、松岡さん理想の傲慢攻めを、サイードにしっかり感じました。ただ言わせていただけるなら、「傲慢」というより「誇り高い孤高の軍人」という印象が強い感じ。


だけど誇り高いと言うなら、受けのラファエルも負けてはいない。鼻っ柱が強くて一言余計なことを言っては、サイードに仕置きされていたもんなぁ……。


宮廷にいると思われる間諜は一体誰なのか!? ――って煽りつつ、正体はわりとあっさりと割れたように思えるのは、サイードとラファエルの駆け引きがたっぷり描かれていたせいかもしれない。それでも、間諜を追い詰める場面はドキドキしたけれども。


亜樹良のりかずさんのイラストも、物語の雰囲気にピッタリ合っていて満足。


――こんなアラブBLだったら、じゃんじゃん読んじゃうなぁ……。でも多分、きっと、間違いなく、あんまり需要はないよね……ちえっ!


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Tags: 松岡なつき 亜樹良のりかず 歴史/時代BL アラブ

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