人生はビギナーズ

 04,2012 23:16
ある日、もう年金暮らしをしていてもおかしくないほどの年齢の自分の親から、「実はゲイorレズビアンだ。好きな人がいる」と告白されたら、どんなリアクションを取ればいいのか、わかんないなぁ……と思う。


理想としては、その重大な告白をしっかり、でもすんななりと受け止めて、好きな人との関係を応援することだけど――オリバーのようにうまくできるかしら……と、映画を観ながら思った。

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「私はゲイだ」 父が75年目に明かした真実が、僕の人生を大きく変えた。アートディレクターのオリヴァーは、愛に臆病な内向的で真面目な38歳独身男。ある日、44年連れ添った妻に先立たれ、自らもガンを宣告された父ハルから、ゲイであることを告白される。厳格だった父の突然のカミングアウトに戸惑いつつも、病に立ち向かいながら新たな人生を謳歌し始めた父と語り合い、少しずつ距離を縮めていくオリヴァー。やがて父との永遠の別れを経て、大いなる喪失感を抱えたままの彼の前に、フランス出身の女優アナが現われる。互いに人と距離を置きながら生きてきた似たもの同士の2人は、ほどなく恋に落ちるのだったが…。

公式サイト
父親・ハルが75歳にしてゲイだとカミングアウトし、亡くなるまでの日々を回想しながら、おくてで不器用なオリバーの恋が進行する、という構成。そのせいか、父親との暮らしの回想部分が、とても美しく見えて切なくなる。


ハルはカミングアウトしてから、それまでオリバーが知っていた父とは別人のように朗らかに前向きになる。いや、ゲイであることをオープンにして生きると決めたため、ふっ切れて、本来持っていた快活な部分が前面に出てきたのかもしれない。


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ハルの若い恋人・アンディ。花火職人。「ER」のコバチュ先生だよ!


オリバーの回想によると、オリバーの子ども時代、ハルはあまり家におらず、息子と接することのない口数の少ない父親だったようだけど、それが信じられないほど、オリバーとハルの間には深い信頼関係ができている。


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父の買い物につきあうし、父に本を朗読してあげたりもするオリバー38歳、親孝行な息子


また、ハルのカミングアウトを受けて、両親の間に愛はあったのかと疑問を感じるオリバーだけど、両親はお互いに葛藤はあったものの、それなりに愛はあったらしいことが、映画を観ていくうちにわかってくる。


――ま、なんというか……ハルが若かりし時代は、現代よりもかなり保守的で、ホモ・フォビアが強く、ゲイとして生きることが生半可なことではなかった、ということですね。それゆえハルはゲイであることを注意深く隠し、女性と結婚して家庭を持ち、一見、“普通の”生活を送っていた、と。


そして同時に、第一線を退いても、75歳でも、その気さえあれば新しい人生を始められるという、まさに作品のタイトルそのままのメッセージも、しかと受け取った。


ハルの死後、ハルの残した愛犬・アーサーと、心の内側に閉じこもって暮らすオリバーは、アナという女優と恋に落ちる。


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アナも家族に複雑な気持ちを抱いているらしい。アナがとてもカワイイ人だったなぁ


そんなオリバーを励ますかのように、ハルとの暮らしの回想シーンが差し挟まれるので、見ているわたしもハルと共にオリバーの背中を押しているような気分になり、同時にわたし自身もハルから励まされているような気持ちになった。


オリバーを演じたユアン・マクレガー、今回も穏やかでナイーブなキャラクターだったせいか、どうにもこの時の“お花ちゃん”なイメージが重なって仕方がなかった。


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繊細なオリバーだからこそ、犬のアーサーと会話できるのか……?


というか、最近のユアンは、繊細でやさしげな役柄が多い気がする。昔はこんなエッジの効いた役柄もやってたのに……。


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いえ、ナイーブな役柄のユアン、好きですけどね。


個人的には、オリバーの子ども時代の回想に出てくる母親が、強く印象に残っている。心に何かを抱えているらしいことが見て取れる、ちょっとエキセントリックな母親。メアリー・ペイジ・ケラーがカッコよかった。


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美術館で、現代彫刻と同じポーズをしてみる母。ちょっと寂しそうなんだけどオリバーとのやりとりがユーモラスだった



クリストファー・プラマー演じるハルが、精一杯楽しく余生を生きようとする姿もとても美しくて素敵だったし、思わず笑顔になってしまうほど本当に幸せそうだった。誰も恨まず責めず妬まず、仲間に惜しまれながら見送られるハルの最期は、理想のあり方の一つだと思うなぁ。


ハルがいよいよ息を引き取るという場面に思わず泣いちゃったよ……。オリバーとアナの恋の進行よりも、そっちが強く印象に残っているなんて、わたしったらほんと、枯れてるんじゃなかろうかと思わないでもない……。


この作品、監督のマイク・ミルズの実体験をベースに作られたという(監督の父親が75歳にしてゲイとカミングアウトし癌で亡くなった)。全体的に優しさと穏やかさに満ちていてすがすがしいけど、どこかちょっと寂しさのような悲しみのような後味が残る作品。良作。

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Tags: ゲイ

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