シェフズ・スペシャル

 14,2009 15:20
シェフズ・スペシャル 原題:Fuera de carta
監督:ナチョ・ガルシア・ベリジャ 2008年 スペイン
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マドリードのおしゃれな地区で、有名なオーナーシェフとしてレストランを経営するマキシ。ビジネスは順調、友人にも恵まれ、気ままな独身生活を送る、彼のたった一つの願いは、ミシュランガイドで星を取ること。そんな彼の生活が、ある日を境に180度変わってしまう。離婚した妻が入院してしまい、二人の子供を引き取ることに!子供たちの出現は、マキシの友人達まで巻き込んで、毎日がまるでジェットコースター!そんな時、隣の部屋にイケメンの元サッカー選手オラシオが引っ越しを。マキシのおいしい食事を味わったオラシオは、マキシにもうメロメロ。子供たち、オラシオ、友人たちとのハチャメチャな毎日を送りながら、マキシは何かが自分の中で変わってきたのを感じ始める…。スペインの爆笑コメディを、あなたもラテンなノリで楽しんで!(LGFF公式サイトより)


“いかにもラテン”という感じの明るさがまぶしい、ドタバタコメディ。久々にスペイン語のあの巻き舌をたくさん聞いた気がする――笑。


主人公のマキシが登場したとたん、「あ、この人はなんだかオネエ言葉をしゃべってそう」と思ってしまった。いえ、字幕は別にオネエ言葉じゃなかったんだけど、なんというか仕種とかしゃべり方とかに、こう、オネエさんっぽさがにじみ出ている感じ。


マキシは、レストランでフロアを担当するアレックスと部屋をシェアしているのだが(多分)、そのアレックスが、隣りに引っ越してきた元サッカー選手・オラシオに一目ぼれ。


ところが彼は実はゲイで、マキシのことを好きになってしまうのだ。ちょっと変形的な恋の三角関係に加えて、マキシの子どもたち、エドゥとアルバも同居することになり、毎日もう大騒ぎ。


ストーリー自体がドタバタなのだが、マキシをはじめ、登場する人物が揃いも揃って強烈な個性の持ち主のため、ドタバタ感はさらにアップ。映画の間中、クスクス、ニヤニヤ、ゲラゲラとずっと笑っていた。もちろん、わたしだけじゃなく、会場中の人も笑っていましたとも。
強烈な登場人物その1は、アレックス。ラテンの女のイメージそのもので、失恋したといって飲んだくれて泣きつつ、新しい恋に貪欲。やたら前向きで立ち直りが早く、肝っ玉母さん風で、ウザいけどカワイイ。ペドロ・アルモドバル作品に登場する女性キャラを思わせるところがあり、こういう女性は、かの国では珍しくないのかも……と密かに感心した。


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失恋でヤケクソになってマキシに体ごと迫るアレックス。ハッキリいってマキシより強そう

その2は、レストランで働くラミロ。超お調子者でアホっぽく(良い意味で!)、本人は大まじめの、でも傍から見たら壮絶なちゃらんぽらんさ加減がたまらない。
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いい加減でズケズケとものをいうけど何か憎めないラミロ。やんちゃ受けって感じかな

その3はマキシの両親。父親はデリカシーのない冗談を飛ばしまくり、母親は勘違い発言を連発し、さらには夫婦でお互いをけなしあっている。マキシやマキシの子どもじゃなくても、この2人と暮らすのは相当な忍耐が必要そうだ。


あと、強烈ではないけど、レストランで働く中国系スタッフのデス(男)が、ラミロとよく絡んでいて印象的だった。やっぱり欧米系映画にアジア系が登場すると、注目してしまうものですね。


全編笑いっぱなしの作品だったけど、重いテーマもしっかり織り込まれている。その一つが、「ゲイであることを隠し通す=自分を偽って生き続けるか」。マキシは職場にも家族にもカミングアウト済みだけど、人気サッカー選手であり、今もサッカー解説や少年サッカーチームを運営しているオラシオはそうではない。


スポーツ界では、ゲイとカミングアウトするにはリスクが高すぎると沈黙を守っているのだが――しかし映画の後半、マキシとのすれ違いに悩み、自爆のような形でカミングアウトしてしまって、あら大変。結果的に、「自分を偽るのはよしましょう」という結論に達したようだけど、カミングアウト後、オラシオ仕事は大丈夫なのかとちょっと気になる……。


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確かにイケメンなオラシオ。オロオロしてヘタレだけど行動は早い

もう一つは、「親子の和解」。なぜマキシが結婚したのか、その時にゲイだと自覚していたのかどうかは謎。だけど離婚して音信不通だった子どもたちを、元妻の死をきっかけにひきとってから、気ままで気楽な生活は、忍耐と妥協が要求される生活に一変する。まあ、すごく乱暴にまとめれば、子どもと暮らすことでマキシは成熟しました――というところかな。最初は反発しあっていたマキシとエドゥが少しずつ歩み寄っていく様子、もう少し丁寧に描かれてもよかったような気がする。


ラストに向かって、あれもこれもぶちまけて取ってつけたように終わった感じはあるのだけど、見終わった後にハッピーな気持ちになれたので、ヨシ。


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Tags: ゲイ クィア映画 LGBT

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