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遊郭モノで百合とは[2]― 花宵道中(斉木久美子)

 25,2011 16:46
江戸末期の遊郭を舞台にした漫画「花宵道中」、レビューの続きです。


[1]で取り上げた三津と緑の関係は、百合ではおなじみの“上級生と下級生”の関係になぞらえることができると思うのだけど、個人的にもう一組、百合っぽいなぁと思ったのが、霧里と菊由の関係。


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「いつか江戸に会いに行ったるからな。待っててな」「あてにせんと待っとるわ」
京都島原の売れっ子遊女だった霧里は「他の遊女の客を盗った」という罪で江戸吉原に追放され、最愛の弟・東雲と離ればなれになる。小見世の山田屋へ売られた霧里は朝霧という地味な禿(かむろ=住み込みで働く幼女)の面倒を見ることに。筋のいい朝霧はさまざまな芸事を身につけていった。しかし、朝霧が初見世(はじめて客をとり一人前の遊女になること)を迎えるまで自分が守ろうと決めた霧里を待っていたのは思いもしない悲劇だった――。遊女たちの恋と運命が絡まり合う官能純愛絵巻第三弾!


霧里は「天女のように美しい」と称えられる京島原の売れっ妓だったのだけど、客の取り合いがもとで、江戸吉原に追放されてくる。


この霧里、壮絶な過去を持っていて――好きあって一緒になったはずの両親なのに、父親は外に女を作って家族をかえりみず、心を病んだ母親は、霧里の幼い弟・東雲の目の前で自殺する。呆然とする幼い姉弟の前に、帰ってきた父親は、乱心のあまり霧里を犯し、子どもたちを打ち捨てていったのだ。


二人ぼっちになった姉弟だが、弟が陰間屋に売られそうになったのを必死で止めたのは霧里。姉弟の絆は強く、お互い、恋心のようなものを抱いている――と思わせる展開なのだが、誇り高く気の強い霧里が、吉原に来て心を許すのが、同じ見世にいた遊女・菊由。


霧里は、妹分の朝霧にも思いやりを見せるが、これは保護者の子どもへの愛情のような感じ。でも菊由は霧里の同輩だ。霧里がその気位の高さゆえに敬遠されているのを、菊由がやんわりと指摘したり、菊由が想いを抱いている別の遊女の客との接点を、霧里が取り持ってやったりと、対等な友人関係、という感じが伝わってくる。


そして、朝霧を守るために迎えた客は、なんと自分を捨てた父親で、しかも父親は自分に気づかないという悲劇に打ちのめされた霧里を、菊由が優しく慰めるのだが――このシーンに、ちょっと色っぽさを感じたのね、わたし。


辛いことや苦しいことがあると、霧里は心の中で弟の東雲にすがり、拠り所としていた。最大の悲劇の最中も、霧里は東雲に心の中で助けを求めていた。だから、霧里が東雲に、弟以上の感情を抱いている――というのは、否定しない。


でも、そんな霧里が菊由の胸に抱かれて泣き安心する姿は、東雲以外の人物に初めて心を許しているように思えて、そこに色っぽさを感じたのかもしれない。


物語の後半、菊由は労咳に倒れ、霧里は懸命に看病する。やがて菊由の死後、霧里も労咳を患い死んでいく。いや、霧里は東雲に再会できる見込みもない中、菊由がいなければ生きていけなかったと思うよ! そして霧里と菊由の関係は対等さゆえか、わたしにはちょっとやおいっぽくも感じられたのかも。


――わたしが百合っぽさを強く感じたのは緑と霧里の話だけど、ほかの話でも、深読みすれば……と思えるものはあった。三津と姉女郎・八津の関係とか。八津の妹分・茜と、大見世の看板遊女・水蓮の関係とか。「姉女郎に対する妹分の憧れ」が随所に見られるので、百合百合しさを感じたのかもしれない。


ここでは百合に絞って感想をまとめたけど、ほかの話も描写が細やかで印象深い。また、全体的に時代考証がいい加減な感じがしないのもよかったな。全てが正確かどうかはわからないけど、いかにも適当だったり、現代風アレンジが強すぎると、ちょっと萎えちゃうもんね。


この作品は、百合作品とはいえないかもしれないけれど――久々に、百合的描写で満足したのだった。

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Tags: 斉木久美子 宮木あや子 百合

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