J・エドガー [2]

 07,2012 03:50
いろいろと深く感じ入った映画「J・エドガー」だけど、フーバーとトルソンの静かな愛の告白(勝手に定義付け)以外に、強く心に残っていることがある。


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これは北米版ポスターらしい


それは、フーバーの秘書、ヘレン・ガンディの存在。冒頭で、若きフーバーからプロポーズされるもののそれを断り、だが個人秘書としてフーバーが死ぬまで忠誠を尽くして仕えた女性。


ガンディがプロポーズを断る時のセリフは


「結婚には興味がないのです。私は仕事を優先したいのです」


というもの。それを受けてのフーバーの「では秘書になってほしい」という依頼を、ガンディは承諾するのだけど。


このやりとりを見ていて、何かちょっと引っ掛かかったのだ。

その後、実際に仕事でフーバーに尽くし、フーバーから全幅の信頼を寄せられていたガンディ。終盤、これまでやってきた極秘ファイルによる脅しが通じないのではと、ニクソン大統領に対して恐れを抱くフーバーに対し、


「大統領からどんなに圧力をかけられても、極秘ファイルは絶対に渡しません」


とニッコリと微笑むガンディを見て、


――もしかしてこの人、この作品の中のラスボスなのかも……!?


と感嘆しつつ、プロポーズを断ったセリフを思い返して思ったのだ。ガンディは、ひょっとしたらレズビアンだったんじゃないかな、と


ガンディについては、フーバー以上に記録も情報も残っていないため、実際にどんな人物だったのかはわからない。なので、これはわたしの単なる推測、というか邪推に過ぎない。


でもガンディの世代で独身を貫き、キャリアを追求することを選ぶ女性というのは、かなり珍しかったんじゃなかろうか? なにしろフーバーでさえ、世間体のために結婚しようとしたのだから。


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「仕事を優先させたい」と言い切ったガンディ。ナオミ・ワッツがクール・ビューティーだった!


フーバーから、トルソンと共に信頼され、FBIの組織を固めるべくまい進する姿や、フーバーとトルソンの関係を陰ながら支えていたような様子は、男女の性別なんか飛び越えた、フーバーの“同志”というイメージがピッタリくる


仕事に人生を捧げている物堅いたたずまいは、男性に頼って生きることをよしとしない信念のようなものまで窺えるようで、男性に寄り添うガンディなんて、まったく想像できない。


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フーバー、トルソン、ガンディの強固な絆がある意味眩しかった……


そんな姿とプロポーズを断ったセリフとがあいまって、ガンディはレズビアンだったのかもなぁ……と思ったのだった。


まあ、万が一にもガンディがレズビアンだったとしたら、フーバーとトルソンと、FBIを作り上げた重要人物の3人が同性愛者だったということになるな。フーバー自身は、FBI職員が同性愛者だとわかると、解雇していたらしいけど。


ところで、映画の中でフーバーは、非常に厳格な母親の期待を一身に背負っていた。フーバーは母親から強く影響を受けており、何かっちゃ母親に相談し、母親に言われたことに逆らえないでいた。


女性とダンスを踊るのはイヤだと弱音を吐くフーバーに、フーバーの幼馴染みがゲイ疑惑によって自殺したことを思い出させて、同じ目に遭いたいのかとハッパをかけたり


弱音を吐くと出てくるフーバーの吃音を、矯正トレーニングを思い出させて収束させたり


そもそもフーバーがガンディにプロポーズしたのも、母親を喜ばせるためという設定になっているのだ。


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息子とその恋人と一緒に観劇に行っちゃうママ


フーバーは43歳の時に母親が亡くなるまで、ずっと母親と同居していた。母親が亡くなった直後、フーバーがショックと悲しみのあまり、母親の服を着てネックレスを首に巻いて泣き崩れるシーンがあるのだけど、こういう風にフーバーの女装癖を匂わせるのは、巧いなぁと唸ってしまった。


ことほどさように、フーバーに多大な影響を及ぼしていた母親だけど、もしかしたらガンディは、年を重ねるごとにフーバーの母親的な役割も担っていたのかもしれない……と、思った。


特にあの、極秘ファイルの処分をガンディに依頼するシーン。母親とトルソン以外で、フーバーがあれほど弱気な姿を見せるシーンはなかったものね。


強くて、毅然としていて、1ミリも揺るがない女性。いやマジメな話、「何があっても極秘ファイルは渡しません」と微笑んだガンディの姿は、誰よりも男前だったんだよ!


ガンディのことが明らかになることは、もうこの先ないんだろうなぁ……。


※文中、引用したセリフは、正確な言い回しはありません。

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Tags: ゲイ クィア映画

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