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J・エドガー [1]

 05,2012 03:22
ジョン・エドガー・フーバーという名前を知らなくても、FBIは聞いたことがあるという人は多いと思う。フーバーはFBIの初代長官で、48年間もその地位に就き、8人の大統領に仕えた人物。


48年って! 生まれた赤ん坊に、ヘタしたら孫が生まれてるかもしれないほどの時間の長さだよ! 大統領8人に仕えたというのも、大概びっくりするけれども。


そんな彼の半生を描いたのが、「J・エドガー」。フーバーという人には、ゲイだったとか女装癖があったとか、気になるウワサがあるので、その辺りも描かれるのかしら!? ――と作品発表時からワクワクしていた。しかも監督は、クリント・イーストウッド! 期待するなという方がム・リ!


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「J・エドガー」公式サイト

最高潮に胸を高鳴らせながら映画を見てきたのだけど、当然ながら作品のテーマは、フーバーがゲイだったかどうかがメインではない。だから例えば、「フィリップ、きみを愛してる!」のように、どストレートに男同士の愛が描かれているわけではないし、イーストウッドが監督をするなら、恋愛一直線のある意味単純な作品にはしないだろう――とは思っていた。


でもね――ワタクシ、映画を観ていて2回ほど、心の中で大きくのけぞってしまったのだ。
のけぞり1回目。それはフーバーが、彼の右腕として活躍していた部下のクライド・トルソンに、「これからもずっとそばにいてほしい」と言うシーン。


まあこのセリフも、フーバーがゲイだった可能性を考えれば非常に意味深ではあるのだけど、これに答えるトルソンのセリフがすごかった。


「一つだけ頼みがある。昼食か、あるいは夕食のどちらかでいいから、毎日必ず一緒に食事をしてほしい


――はい、これでプロポーズ確定!


食事を必ず一緒にとってほしいなんて、夫婦の間の約束事そのものじゃありませんか。この時のトルソン演じるアーミー・ハマーの目がねぇ……うっとりと幸せそうでねぇ……! 彼の言葉にうなずく、フーバー演じるレオナルド・ディカプリオの表情も嬉しそうだったけどさ。


そして実際、トルソンは公私に渡ってフーバーに寄り添い、一部で“愛人”と目され、確かに毎日一緒に昼食を取っていたらしいのだ。多分、夕食を一緒に取った日も多かったに違いないよ。


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どこへ行くにも一緒のフーバー&トルソン。これはプロポーズの後の場面だったはず


そしてのけぞり2回目は、映画の終盤、トルソンがフーバーに引退を促すシーンだ。


フーバーは大変虚栄心の強い人物だったらしく、執筆中の自らの伝記で、部下の手柄を自分の手柄として書いたり、自分が犯した過ちをトルソンには何でもなかったかのように話したりしていた。


それを知ったトルソンは、


「君がほかの人に嘘を言ったり誇張したりするのはいい。でも僕の前だけでは本当のことを話してほしい


というようなことを言って、フーバーに長官職を退く潮時なのではないかと静かに話す。しんみりしてしまう深い言葉である。


そんなトルソンの言葉を黙って聞いていたフーバーはおもむろに、「君との面接のことを覚えているか? あの時、僕は汗をかいていただろう?」と話しかける。「トレーニングをしていたからだろう?」とトルソンが答えると、フーバーはこう言うのだ。


「いや、実は違う。本当は君を見た瞬間、君が僕にとって必要な人物だとわかったからなんだ。僕に必要な人とあんなにはっきりわかったのは、君が初めてだった


――なにその、「一目合った瞬間に、この人と結婚すると直感しました」的告白!


実は映画の冒頭のあたりで、フーバーは長年秘書を務めた女性・ガンディにプロポーズをするシーンがある。ガンディに断られてあっさりと諦めるのだけれど。


また中盤あたりでは、フーバーは女優と結婚しようと考えていることをトルソンに告げ、トルソンをえらく怒らせ、殴り合いになるシーンもある。これも、トルソンに出て行かれそうになり、フーバーが必死で縋り付いて事態が収拾したのだけれども。


しかし、このトルソンに向けたセリフのおかげで、ガンディへのプロポーズは愛とは別の思惑があったこと、さらに女優と結婚しようと思ったのは社会的な体面を保つためだったことが明らかになって、フーバーが愛し求めたのはトルソンだけだったということが、クッキリと浮き彫りにされるのだ。


――ディカプリオがなー、ガンディ演じるナオミ・ワッツに、フツーに嬉しそうに接しているのが、何かディカプリオの女好きがダダ漏れしているみたいで、若干残念だったんだけどさ……。


ともかく、超ストレートにガッツリと男同士の愛が描かれているわけではないけれど、フーバーとトルソンが特別な“パートナー”であり“同志”であったことが、じわりとそこはかとなく伝わってくるように作られていた


侘び寂びじゃないけれど、その奥ゆかしい感じにジーンときた!


作品は、フーバーの死と、その直後にガンディが極秘ファイルを処分しているシーンで終わるのだけど、いろいろ調べてみると、トルソンはフーバーの葬儀で、遺族が受け取る星条旗を受け取り、死後はフーバーの墓の近くに埋葬されたらしい。もう、夫婦ってことでいいんじゃないかな、この二人!


フーバーとトルソンの関係だけフォーカスしたレビューになっているけれど、作品はいろいろと、「なるほどねぇ……」と思わされる内容だった。


アメリカがヒステリックなまでに共産主義を敵視するのは、アナーキストたちによるテロ事件が続いていたからだったんだなぁ……とか、指紋など犯罪現場に残された証拠の科学的操作を導入したのはフーバーだったのか……とか。


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FBI長官に任命されて張り切って職員を選別するフーバー。差別主義者といわれる彼は、完璧主義者でもあったと思う


よく言われる、フーバーが大統領など政財界の要人や有名人に対して諜報活動や恐喝をしていたことも、「国家を守る」という信念が暴走した果てだったのか……とか。


海外ミステリなどで悪者として登場するフーバーという人物の、さまざまなイメージを集めてノイズを削ぎ落して彫り出された姿を見たような気がする作品だった。


e7.jpg
晩年のフーバー。レオ、年老いたフーバーをかなり熱演していたんだが、どうにもとっちゃん坊やに見えて仕方ない、気の毒なベビーフェイス


フーバーが登場するミステリを読むと、この作品のフーバー像が起ち上がるようになる……かも?


※文中、引用したセリフは、正確な言い回しはありません。

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Tags: ゲイ クィア映画

Comment - 4

2012.05.01
Tue
17:50

zebra #ngCqAwRo

URL

ジョンエドガーフバー長官

 こんにちは エドガー フーバーですか・・・

大統領以上に 謎が深い人物だな~って思ってたんです。

彼の人生の前半の初め・・・20~30年代ですが 禁酒法と大恐慌時代 マフィアは存在しないと 頑として認めなかったんです。
 その反面 ジョンデリンジャーやボニー&クライド、バーカー母子など 銀行強盗の連中には 殺してでも解決しろと躍起になる

 うわさでは マフィアの連中からワイロをもらっていたというのもあるほど・・・

 フーバーは世間が注目する事件には 熱入れる
そして 盗聴。 50年代の赤狩りでも盗聴で 共産主義者の弾圧 それと 歴代大統領の不倫スキャンダルを入手したりと・・・

 FBI長官として やはり汚い方面での権謀数術には長けてたようですが


 そんなフーバーも自分が弱味握られたら ダメだから マフィアには手をだせなかった気がします。

編集 | 返信 | 
2012.05.03
Thu
23:11

lucinda #-

URL

>zebraさん

コメントありがとうございます!
フーバーは謎の多い人物ですよね。フィクションに登場する際は大抵悪者のような気がするし、フィクションじゃなくても、わりと批判的に描かれているような…。まあ、ダーティーなイメージが強いので、この映画の中のフーバーは、ちょっと新鮮でした。ダーティー一辺倒で描かれているわけではないので…。

マフィアとの癒着をなんとなく匂わせる描写も、映画の中には描かれていましたよ~。
権謀数術に長けていた人物であるのは間違いないでしょうね。何しろ50年近く長官の座に就けてたぐらいですもんね。

編集 | 返信 | 
2012.05.05
Sat
13:24

zebra #ngCqAwRo

URL

フーバー長官の死後 FBIは・・・

 こんにちは lucindaさん

だいぶ フーバーから話が ズレますので 予め ご容赦くださいませ

 たしかに フーバーは 未熟な小さな FBIの前身だった捜査局の創成期に発展させた人物でした。黒人差別主義でもあったし 不倫・同性愛・借金など局員の私生活になにかあれば解雇する
強権姿勢もあった・・

 じゃあフーバーの汚い面があれば解任されて当然なのにならなかったのは 誰も逆らえなかったでしょう。 

 仮に解任されれば 自分の生活態度も調査されるからそれも恐れていた もし そうなっていたら マフィアとの癒着も早くから暴け、組織取締りも早くから実行してたんじゃあないかな?

 赤狩り(おそらく 無実だった人たちも相当いたでしょう)
よりもマフィアを発展していく方が 恐いよ。まちがいなく組織を野放しにしたのもフーバーの"罪"の面のひとつです

 フーバーの死に 組織を引き継いだ 後任の長官たちは マフィア方面の取り締まりを強化していき、こんにちまで 大勢の組織関係者を逮捕し裁いていった。

 ジョニーデップ演じた「フェイク」のジョセフピストーネ潜入捜査官
みたいに内部にもぐりこんで行ったり 組織に不満をもってるマフィアメンバーの情報提供など 

 最後にlucindaさん マイヤーランスキー フーバーと同世代のマフィア関係者の写真みましたが 惚れちゃ ダメですよ(^^) たぶん 「タイプじゃないんです」と いいそうですが・・・^^

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9E%E3%82%A4%E3%83%A4%E3%83%BC%E3%83%BB%E3%83%A9%E3%83%B3%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%BC
 

編集 | 返信 | 
2012.05.08
Tue
14:35

lucinda #-

URL

>zebraさん
コメントありがとうございます。

フーバーが難アリな人物だったというのはその通りなのだと思います。私もフーバーが素晴らしい人物だったとはまったくもって思いません。

ただ、映画「J・エドガー」で私が感心したのは、フーバーを単に「自己中心的で極悪なことをさんざんやってのけた人物でした」とだけ描いて終わっていたのではないことです。フーバーがどうしてあんなことをしたのか、などを窺えたり考えさせられたりできたのが、とても面白かったなぁと思うし、個人的にはそういうところに、イーストウッドってさすがだなぁ!と唸って、またウットリしてきたのでした。

あと、マフィア関連については映画であまり触れられていませんでしたが、いろいろ、大人の事情があるのかもしれません。

もともとミステリ小説に出てくる以上のことでフーバーや米国の犯罪史、FBIに興味がなかったということもあり(フーバーのゲイ疑惑は除く)、映画を観たからといって、フーバーに肩入れしたくなるということはありませんが、FBIがフーバーを得て巨大な組織となっていく時代的背景も、興味深いと思って見ました。

そんな感じです。フーバーやFBIについて、あまり熱心に興味がなく恐縮です…!

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