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リセット (谷崎泉)

 29,2012 23:19
読み始めたらユー・キャント・ストップ! ……って、昔のコマーシャルのフレーズじゃないけれど、この作品、本当に読むのをやめられなかった。何しろわたし、2日連続で明け方まで起きてたもんね。


奈良さんの表紙絵も、個人的には久々にヒット。上下巻とも構図がカッコよく、連動感があるのがさすが!


ただ、密林などあちこちのレビューでは、BL的要素が足りないという声も多いのだった――。


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一九八九年、とあるマンションの一室で起きた放火殺人。当時十三歳だった橘田と高平は事件に巻き込まれて以来、互いしか知りえぬ思いを共有する。しかし橘田の心の空隙は次第に二人の関係を歪ませ始めていた――。大学進学後、高平との関係を断ち切り、一人事件の悪夢にうなされ続ける橘田の前に現れたのは、義弟の倉橋だった。倉橋もまた橘田の苦しみを知り、心を砕くようになるのだが…。時を経て起きた新たな事件が、それぞれの道を歩んでいたはずの三人の男たちを呼び寄せる。そこに待つのは悲劇か、過去との決別か。


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……俺は弱い。それを認めて、強くあろうと努力できたのは、君のお陰だ。上十条一家殺害事件の管理官を任された橘田は、かつて関係を持ったが二度と会わないと誓った義弟の倉橋と再会する。
大人になり経験値の増した倉橋の優しさは、仕事に邁進し人のぬくもりさえ忘れていた橘田の心に、六年間ずっと認められなかった感情を呼び起こす。一方、高平に消えない傷を負わせた放火殺人事件は時効を迎え、時の流れがすべてを風化させていくかに思えたが…。私欲にまみれた犯罪、繰り返される悲劇、それでもやってくる明日を生きるため――過去から始まる再生の物語、解決編。
結論から言おう。わたし自身は、BL的要素が足りないとは感じなかった。なぜなら、


●放火殺人事件に遭遇し精神的にダメージを負っている橘田を、高平が身体で慰める。高平は以前から、橘田のことを憎からず思っていたフシがある


●そんな高平に黙って、橘田は京都の大学に進学を決め、高平との関係を断ち切ろうとする。高平、いきなりの仕打ちに呆然&涙。


●だがしかし、橘田は高平に対して罪悪感しか持っていなかったわけでもなさそう


●橘田は、勉強を見てやっていた義弟の倉橋と、ひょんなことから関係を持つのだが、倉橋はどんどん橘田に惹かれ、溺れていく


●そんな倉橋に大学院に進学すると嘘をついて、橘田は警察官になるため東京に戻り、倉橋との関係を清算しようとする。倉橋、いきなりの仕打ちに呆然&号泣。


●だがしかし、橘田は倉橋との関係に罪悪感を感じていただけではなく、実は倉橋の存在に癒され励まされていた


――という、キャラたちの恋愛関係がエロ込みでしっかりと描かれていたから。橘田は若干魔性が入っているっぽい受けだし、そんな彼が惹かれ、また彼を守ろうとする攻めは、高平も倉橋も、ガタイがよくて世話焼きで大らかな好い男。というわけで、ブレがないのもいいじゃん? と思う。


橘田は高平と倉橋、どちらに対してもいきなり関係を断ち切ろうとするが、それも自分の弱さを責めるゆえ。二人に迷惑をかけられないと自らを奮い立たせ、心のダメージから立ち直ろうとする姿は、わたしの大好物な「受けと攻めの対等な関係」を連想させて好ましい。


さらにいえば、橘田と高平は放火殺人事件だけでなく、橘田の母の事故死という大きな事件を共有していて、お互いがお互いに対して罪悪感を抱え、お互いだけしか感じえない複雑な物思いを共有している。それなのに、橘田が安らぎを見出すのは倉橋だという、人の心の深遠さ!


なんか橘田と高平と倉橋で3P展開でもアリじゃね!? などと、読み終わる頃に一人で盛り上がったほどだ。清々しい明け方だったというのに。


こんな風にわたしは、BL的要素については十分満足しているけれど、“足りない”と思う人が、少なからずいるんだよねぇ……。そりゃあ、そういうシーンの描写は濃密でも甘くもなかったけど、レビューを読んでみても、どういうところが物足りないのかイマイチわからない。ということは、特定の要素がないということで……。


BLは、本当に読み手の好みがハッキリと出るジャンルだなぁと、改めて思った。


BL的要素についてばかり触れているけど、この作品は、ミステリとしてもよくできていると思う。結局最後まで真相はわからなかったこともあり、ぐいぐいとストーリーに引き込まれたものね。


細かいことを言えば、放火殺人事件の真相がちょっと説明不足のような印象がなきにしもあらずだし、上十条の事件が15年前の放火殺人事件に期待するほど密接につながっていなくて、ちょっとハンパな感じがしないこともなかった。


とはいえ、橘田と高平の決断にいろいろと考えさせられた。現在は殺人事件の時効が撤廃されていて、それについては当然だと思うけれど、犯人が捕まらない限り、気持ちに何らかの区切りをつけられないという面はあるかもしれない……。


橘田と高平は、悪夢のような過去から“リセット”でき、また、橘田と倉橋はお互いの関係を“リセット”できてハッピーなはずなのに、どこかほろ苦さが漂う。カタルシスは得られないかもしれないけれど、その分、余韻が残る。


――ん? この余韻が、“BL的要素”の実感を左右しているのかしらね!?


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Tags: 谷崎泉 奈良千春 警検麻ヤ

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