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「男の花道」(木原音瀬)

 09,2012 19:05
このブログ内で何度か書いたと思うけど、わたしにとって木原音瀬作品は、読む前に非常に覚悟が必要だ。


つまり、グッサリと心を抉られるかもしれないことへの。


あるいはバッサリと心に斬りつけられるかもしれないことへの。


または消化しきれない何かがズッシリと心に残ったり、後味の悪さのようなものを抱え込んでどんよりしてしまうかもしれないことへの。


覚悟を決めて読んだものの、やはりグッサリ・バッサリ・ズッシリ・どんよりとヤられてしまって、心身共に著しく消耗することもしばしば。「これはヤバいかも……」と思っても、途中で読むのをやめられない巧みなストーリー展開が、罪作り。


そんなわけで、買いはするものの積読率ナンバーワンという、まことに恐縮極まりない読書状況の木原作品なのだけど、この作品は最初からイケそうな予感がしていた。


男の花道―Don’t Worry Mamaシリーズ (ビーボーイノベルズ)男の花道―Don’t Worry Mamaシリーズ (ビーボーイノベルズ)
木原 音瀬 志水 ゆき

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ゲイバーのマスター友晴は男らしい見かけと違いバリバリなオカマ口調の男。ひょんなことから万引き犯に間違われたオタク男・松尾の潔白を証明してやった。漢らしく啖呵をきって助けてくれた友晴に松尾は感動して、自分も男らしく変えてくれと懇願してくる。あまりの熱心さに友晴は絆されてオネエな口調を隠し、松尾に付き合うが…。BL界の話題をさらった、あのシリーズが帰ってきた。ついに最新刊登場。

予感は大当たり。わたしの大好物・マッチョなオネエ攻めというだけでも嬉しいのに、受けはディープなオタクという夢のような設定(微笑)。ま、どちらもハンサムで美青年、というBLルールには則っていますけどね。


「Don't Worry Mama」シリーズのキャラたちがちょこちょこ登場するのも、わたし好みだ。


オネエでバリタチのゲイという友晴が世話好きで社交的でオシャレだったり、巨乳好きでアニメやフィギュアが大好きなオタクの松尾が内気でアガリ症でダサかったりと、キャラが“いかにも”な感じのステレオタイプなので、読み始めた頃は、ちょっとそこが鼻について、微妙な気まずさを感じていた。


しかし読んでいくうちに、そんな気まずさを吹き飛ばす勢いで、友晴の松尾に対する心情や、バーの客たちとのやりとりに噴き出したりしんみりしたりして、ぐいぐいとストーリーに引き込まれてしまう。


そう、この作品、「ブッ」と笑いたくなるところがあちこちに散らばっているせいか、友晴と松尾の関係の切なさや痛みのようなもの=木原作品ではおなじみの“辛い・痛い・切ない”が、いい具合に緩和されている気がする。


ストーリーは三人称で語られるものの、“友晴の気持ちや視点”を語る友晴の一人称が、カギカッコ(“「」”)や丸カッコ(“()”)からダダ漏れしたかのようにスルッとシームレスに入り込んでいる構成も、木原作品には珍しいんじゃないかな。


例えば、松尾に頼まれて松尾の洋服を見立てに行くシーン。駅の改札口で松尾を見つけた友晴は、松尾の大胆なダサさに絶句する。


 クリスマスの翌日に会った時、赤いジャンパーに緑のパンツなんて、これ以上に酷い組み合わせはないだろうと思っていたのに、今日の松尾はその上をいっていた。
 赤いジャンパーはこの前と同じだけど、下に穿いているパンツは紫と水色の縞模様。南米の昆虫でもリスペクトしているのかしら、と嫌味の一言でも言いたくなるほど下品で奇抜。髪は寝癖が酷いし、眼鏡に至ってはサイドの蝶番の部分がセロハンテープで補強されてる。
 この酷い有り様は……いったい何なの……。
(本文P60より ※色分けは管理人)


――紫にした部分は三人称に一人称が少し混ざった感じで、ピンクにした部分は完全に一人称になっているのがわかると思う。ね? 三人称に一人称がスルリと入り込んでいるでしょ? それにしても「南米の昆虫でもリスペクトしているのかしら」っていうツッコミ、辛辣でスキだなぁ。


友晴は、松尾への報われない恋心に悩んで嘆いて、友人の東山(『Don't Worry Mama』の攻め様)に話を聞いてもらったり、一時は松尾を無理矢理犯したかもと勘違いし絶望して失踪したりと、心は本当にオトメそのもの。とってもカワイイ。女子が“親友”に欲しいゲイのタイプそのものといえましょう。


そんな友晴のアドバイスで、まるで「マイ・フェア・レディ」のイライザのように垢抜けていく松尾。松尾も素直でピュアな好青年ではあるけれど、友晴に心底愛されていることに気付かず、友晴に自分の失恋の傷を慰めてもらう鈍感さと無邪気さが、ちょっと憎い。


しかも松尾ときたら、友晴が自分の前から姿を消すたびに(それは友晴が松尾への片思いに堪えかねたせいなのだけど)、同じ職場の東山にしつこくメールや電話をしまくって、東山をうんざりさせるのだ。


このちょっと偏執的ともいえる頑なさ、木原作品には珍しくないキャラではあるけれど――大抵の場合、こういうキャラは“攻め”が多くない!? 残酷なほど鈍感なところも、不器用なところも、木原作品では“攻め”であることが多いんじゃなかろうか?


そう気付いたら、友晴のようなけなげで一途で心がオトメで社会性のあるキャラは、木原作品においては“受け”であることが多いんじゃないかと思い当った


この受け攻めのキャラ設定も、木原作品ではレアなんじゃないかしら? ――と考えると、いろいろな意味でこの作品は、これまで読んだ木原作品の中では、珍しい要素が詰まった作品といえるのかもしれない。


まあ、あえて「オネエ攻め」にしたところが、木原さんのチャレンジ精神の証というべきなのかも。


最後はもちろん、友晴と松尾は無事に両想いになって恋人になる。その後、(ホントは違うんだけど)初めてセックスをするために、二人がグルグルと悩むところがとってもおかしい。特に松尾が東山に相談するシーン、最高です! 勉強熱心だけど今一つズレてて噛み合っていない松尾を、ここで初めて愛おしく思いました。


――ところで、この作品、元々は同人誌で発表されたんだよね。わたし、同人誌を買っているのだけど、例によって「ヘビーだったらツラいなぁ……」と積読していた。商業誌のみならず、同人誌まで積読してるって……。


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Tags: 木原音瀬 志水ゆき オカマ オタク

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