UNDER THE HEAVEN (かわい有美子)

 19,2011 23:48
かわい有美子さんの新作は、あの「MIKADO ―帝―」の新装版! と知ったのは、上巻の裏表紙のあらすじを読んだ時だった。


表紙絵が、「MIKADO」の新装版だとは思えないほどキビキビした感じでカッコイイし、“大幅改稿”とあるからには、「MIKADO」のあのストーリーの耽美的ではあるけどモヤモヤしていたものは解消されるのかしら……ということで、ドキドキしながら読んでみた。


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両親を失い、施設で育てられた史貴は妹と、同じく施設育ちのアレックスと一緒にマフィアの帝王・ハーベイに引き取られる。ハーベイの実子・イェインと共に成長していく中、史貴は寡黙だが頼れる兄的存在のアレックスにほのかな想いを抱くようになっていた。しかし、イェインの歪んだ欲望のはけ口が史貴へと向けられ、その秘密をアレックスに知られてしまい…。かわい有美子の衝撃作「MIKADO―帝―」が大幅改稿してついに登場。



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施設からずっと一緒に育ったアレックスへの恋心を自覚した史責。しかしルームメイトだった友人の裏切りで、敵対するマフィアの手に堕ち、心と身体に二度と消えない「傷」が刻み込まれてしまう。完全に自分を喪失した史貴は捨てられるようにして帰宅を果たす。「愛してる」アレックスの声が凍てついた史貴の心を震わせた―。衝撃作「MIKADO―帝―」が、大幅改稿して、新たなラストでついに完全。


下巻のあらすじの終わり、「完結」の間違いですね、きっと。


「MIKADO ―帝―」のレビューはこちらをご覧ください。
『MIKADO―帝(かわいゆみこ)』


ところで、「UNDER THE HEAVEN」は「MIKADO」とどのくらい変わったのか?


そうね……ストーリー展開の大筋は変わっていない。でも、「MIKADO」でちょっと物足りなかった、消化不良な感じがした部分が補われている。例えばアレックスの、「自分の両親を殺したのは、実は自分の養父だった」ということへの苦悩。


アレックスが自分の気持ちを史貴に語ることで、「MIKADO」よりも、アレックスの苦悩の行方が鮮やかに描かれており、アレックスがハーベイを裏切らなかったことも、「そういうことなら……」と納得できる感じがした。


またイェインが、史貴とアレックスの関係をそれとなく知っていて気遣う素振りを見せるのも、読んでいて好ましい。イェインはかつて、史貴を麻里絵の身代わりにしていたわけだが、それについてのアレックスの憤りやイェインの謝罪の気持ちもそれとなく触れられているので、彼らの間で決着がついたんだな……とも思えた。


そしてラストの兄弟たちの別離も、4人がそれぞれ納得し、再会を約束して別れる。これが、「MIKADO」との大きな違いかしら? 「MIKADO」では、麻里絵がよくわからないままアレックスに連れられて旅立ち、史貴はイェインと、心中のように死ぬんじゃなかろうか……と思わされたもの。


同時に、ラストにかけて、イェインと麻里絵の関係の回復の兆しが見られたのも、新装版の特長のような気がする。何しろ、麻里絵が別れの直前、自分の黒髪をイェインに手渡していたものね。旧版なら、その黒髪は史貴に渡してもおかしくないいほど、麻里絵はイェインのことをあまり意識していなかったような。


最後の書き下ろし後日譚は、まあ、今風BLな感じでいいんじゃないでしょうか。個人的にはこの後日譚がなくても、4人がいずれ再会するであろうことは予想できる希望にあふれた終わり方だったので、後日譚は本当に“おまけ”的印象。希望と安心を改めて確認OK、ヨカッタ!――という感じ。しかし、旧版の雰囲気が好きだった人には、蛇足だったかもねぇ……。


「MIKADO」の、耽美的ではあるけれども救いを見出せない展開に鬱屈を抱えていたわたしとしては、


――かわいさん、本当にありがとうございました! みんなが不幸なままで終わらず、安心できました!――


と、感謝の気持ちでいっぱいだ。


この物語、マフィアのボス家族の物語だけど、マフィアといえば“血”を重んずる人たち。それが、ハーベイの家族には養子が3人もいて、しかもその養子が民族や人種がまったく違いながら結束しているという、ちょっと珍しい、ある意味ファンタスティックな家族。


でも、そのファンタスティックさや、血に頼らず築かれる絆の深さは、生殖によらず、いわば他人同士の男同士で濃い関係を築くBLだからこそ、すんなり受け入れて読めたのかもしれないなぁ……と思うのだった。

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Tags: かわい有美子 立石涼 警検麻ヤ

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