休眠中に花丸急上昇のオキニイリ―「背中合わせでキスを」「もしも願いが叶うなら」(安曇ひかる)

 09,2011 04:51
ごきげんよう。旅に出ていました。


……………。でもそういいたくなるぐらいの、久しいご無沙汰となってしまったこのブログ。面目ないことです。ちょっといろいろ、重なっていました。


ただ、アウトプットはできていなかったけど、新たに出会ったお気に入り作家さんの作品は、ちびちび楽しんでいた。というわけで、その作家・安曇ひかるさんの作品について。


背中合わせでキスを (幻冬舎ルチル文庫)背中合わせでキスを (幻冬舎ルチル文庫)
安曇 ひかる 三池 ろむこ

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隣り同士の家に三日違いで生まれた郁弥と皓。何かにつけて張り合いながら成長した二人が、大人になって偶然再会して……!?


むむ、素っ気ないあらすじですな。まあよろし。


家が隣同士で、誕生日まで近い幼なじみの、頑固な意地っ張り×負けず嫌いの意地っ張り、というカップリング。これがうまく描かれていて、ワクワクしてしまった。三池ろむこさんのイラストもハマっていたと思う。


何かにつけて張り合い、競わずにはいられないタイプの男の子がいるけれど、郁弥と皓はお互いがまさにそれ。二人のやりとりには、そんなある種くだらないメラメラした対抗心が浮き彫りにされていて、「あー、こういうコはいたなぁ……」と、遥か昔を懐かしく思い出した。


しょっちゅうしている言い争いも「仲良くケンカ」の部類ゆえ、皓が中学の時に黙って引っ越して離れ離れになったとたん、どちらも元気がなくなって、自分の殻に閉じこもったり喪失感を感じたりしていた様子も、カワイイ。


この作品、実は子どもの頃からお互いを意識し――特に攻めの皓ははっきりと郁弥への恋愛感情を自覚していたにも関わらず、10年ぶりに再会してみれば、お互いに恋人がいましたとさ、という、わりと王道なストーリー。


けれども、主人公二人の意地の張りっぷりが生き生きと描かれていたことと、郁弥がゲイで、その恋人とは不倫関係かも……と知った皓の挫折感と郁弥への気遣いがストーリーに大きく作用していて、マンネリ感を感じなかった。二人の共通の思い出(カメと映画「卒業」のラストシーン)も、いい具合に絡められていたし。


終盤のエッチシーンまでもどっちが主導権を握るのか争っていて、「これは、うまくするとリバ……!?」と期待したのだが、残念ながらそんなことにはならなかった。いや、まあね、わかってますよ、リバは難しいって。途中までリバっぽいムードだったので、それだけでも満足でございます、はい。



もしも願いが叶うなら (幻冬舎ルチル文庫)もしも願いが叶うなら (幻冬舎ルチル文庫)
安曇ひかる 亀井高秀

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深見奏太は不慮の事故に遭い、恋人の目の前で意識不明に陥る。奇跡的に意識が戻り社会復帰を果たした頃、恋人の久埜和臣は家業を継ぐべく親の会社に入り婚約までしていた。すっかり変わってしまった周囲の状況に、取り残されたような気持ちになる奏太。久埜が奏太に何かを伝えようとしていた事故当日の記憶だけがどうしても戻らないままで…。


記憶喪失モノではあるけれど、そして「失われた記憶が戻ってハッピーエンド」というお決まりのラストではあるけれど、グイグイとストーリーに引き込まれた作品。


ストーリーは、主人公が失ったある1日の記憶を軸に、過去と現在を行き来する。


ストーリーの背骨はもちろん、「不幸な事件によって意識不明に陥っていたものの、4年ぶりに奇跡的に社会復帰した奏太が、事件当日の失った記憶を取り戻す」だ。ポイントは、失った記憶は事件に遭遇した前後の記憶だけということ。


この背骨に、恋人だった久埜に再会した奏太の嬉しさと戸惑いや、久埜に婚約者がいると知って衝撃を受けても、久埜への想いを断ち切れない奏太の切なさや――


事件のことは何も語ろうとしない、いわくありげな久埜の様子や、事件によって自分がゲイだと家族に知られたと確信しながらも、それを確かめられない奏太の怯えや――


奏太の回想として描かれる、奏太が中学生の時にゲイだと自覚し、親にも打ち明けられず悩んでいた苦しみや、そんな奏太がすがる思いで出かけた2丁目で出会った久埜への、奏太の焦がれるような想いや――


――そんないくつものエピソードが複雑に絡まって積み重なり、物語に陰影と深みを与えているのが技アリ。しかもとても繊細に語られているので雰囲気もバッチリで、読んでいるうちに目が離せなくなり、最後まで一気に進んでしまった。


また、奏太の姉が語る、奏太が意識不明に陥っていた間の家族や久埜の様子も、印象的だったなぁ……。恋人の久埜が、奏太をどうにか助けたいと苦悩するのはBLなので当然だとしても(<そうか!?)、家族の献身ぶりが丁寧に描かれているせいか、両親が久埜を敬遠したり、奏太がゲイであることを受け入れられないでいる姿を、一方的に憎めなかった。いや実際、家族は混乱するよね。


奏太の4歳の甥・優斗が非常に愛らしく、ある意味優斗が、奏太と久埜の新たな関係が展開するきっかけになっているのも、巧い。


それにしても、奏太の回想として語られる久埜の「ずるい大人の男」っぷりが、セクシーでカッコよすぎだ。奏太の口の周りについたアイスクリームを、バーのカウンター越しに久埜が舌で舐め取るシーン、めちゃくちゃエロくてドキドキした!


ラストのエッチシーンよりも、この回想の中でのエロシーンの方が、数倍エロティック。一糸纏わぬ姿で抱き合ってるだけがエロいわけじゃないのよね、改めて。


――ことほどかように、今年に入って安曇作品にのめりこんでいるわたし。実は、最近出版されるB小説に勢いやキラキラ感が少なくなった気がしてちょっと失望していたのだけど、安曇作品に出会って、やっぱりまだまだ捨てたもんじゃないわよねぇ……と、自分の思い上がりを反省した次第。


過去の作品はもちろん引き続きフォローしつつ、これからの作品にも期待急上昇なのだった。

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Tags: 安曇ひかる 三池ろむこ 亀井高秀 複数レビュー

Comment 6

2011.03.09
Wed
08:11

もと #-

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読メ登録しておきます(。・∀・)ノ
最近、人様の嗜好を辿って読書にハマってます。自分では選ばないものが面白かった時はガッツポーズ出しちゃいますねw

編集 | 返信 | 
2011.03.11
Fri
11:49

lucinda #-

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コメントありがとうございます。
>自分では選ばないものが面白かった時はガッツポーズ出しちゃいますね
めちゃくちゃわかります! それでブログ巡回とかしちゃいますもの…

編集 | 返信 | 
2011.03.17
Thu
00:48

lucinda #-

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拍手コメントRES

>03/11 22:29 Mさま

はじめまして。拍手コメント、ありがとうございます。
Mさんもオーバー30なんですね~。
ぜひぜひ、読んでみてください!

編集 | 返信 | 
2011.03.18
Fri
07:49

訪ね人 #-

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ご質問ですが、ブログ『四十路のBL読書』のセミプロ批評家のアラスカ様は、引退なされたのでしょうか。
昨日気になり、ケータイで検索するとBL記事を集めたツイッターの管理人が同じ名でした。
4da様のコメントでも拝見しています。
ご存じでしたら、お手数ですがお知らせを頂きたいのですが。

編集 | 返信 | 
2011.03.18
Fri
16:09

lucinda #-

URL

>訪ね人様
アラスカさんは、ブログは閉鎖されました。同名のツイッターの管理人については、私は存じ上げません。
お力になれず申し訳ございませんが、よろしくお願いいたします。

編集 | 返信 | 
2011.03.31
Thu
06:23

訪ね人 #-

URL

お手数をおかけしました。

自身も、一昨年から去年末まで同ジャンルの小説・漫画を買い漁っていた。
某セミプロ・ゴシップニュースブログに、『本の買い溜め/腐女子』関連などに出入りしている。自身の場合残っていたBL小説10数冊、天災後馬鹿らしくなったんでいんめつした。
一発屋から有名人まで。11.03.16 17:28
チキンでしょ?

編集 | 返信 | 

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