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【勝手に祭り】勝手に榎田尤利祭り

 22,2006 23:37
BL小説でわたしが作家買いをしているのは、木原音瀬さん、榎田尤利さん、英田サキさん。この3人の作品は、個人的にほとんどハズレがない。そして最近、立て続けに榎田さんの新作を読み、しかもこれがまたよかったので、勝手に一人で盛り上がって、榎田尤利レビューをアップすることに決定。盛り上がりすぎてかなり長いので、ご注意(笑)。

わたしがいたく気に入っている、イチオシ作品が、これ。
普通の恋普通の恋
榎田 尤利

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「普通の男」の続編。前作が出たのが3年前らしく、その間、読者から続編希望の声が、ずっと寄せられていたらしい。いやー、わかりますわかります。

ビジネス系出版社に勤める、編集の花島と営業の的場。お互いストレートだったのだが、だんだん惹かれあい、恋に落ちる。前作はお互いの気持ちを認め合ったところで終わり。今作は、そこスタートするのだけど、お互いの誤解であっという間に関係が破綻しそうになる。

何がいいって、主人公2人がストレートゆえに、同性を好きになった戸惑いや悩みを感じつつ、手探りで歩み寄る様子。しかもストーリーの中心には、しっかりと、異性だろうが同性だろうが関係ない、恋愛の普遍的な高揚感や苦しみが描かれているところがすごいのだ。いざセックスを…という段になって、同じ男から組み敷かれる戸惑いを感じる花島。行きつけのバーのママ・コーちゃんに、アナルセックスや自分が挿入することを当然だと思うな、と指摘されハッとする的場。コーちゃんの恋人から、男同士で「受け」としてセックスするための準備や注意点などを教えてもらう花島。こういう風に「男同士のセックス」を、けっこうマジメに取り上げている作品も、珍しいんじゃないだろうか。

「普通の恋」の主人公は、出版社に勤めるサラリーマンだが、榎田作品のキャラ設定は、働いている男同士がほとんど。医者とかマンガ家とか作家とか、いろんな職種が登場するけど、これまで読んだ中では、圧倒的にサラリーマンが多い。おまけに仕事風景もけっこうしっかり描かれていて、この辺り、榎田さん自身のお勤めの経験が反映されているのかもしれない。仕事を通して、主人公たちが張り合ったり助け合ったりする様子は、もう……! リーマン好き&ただのラブイチャは物足りないわたしは、小躍りして万歳三唱したくなる設定だ。

舞台が会社やお店など仕事場なので、当然、主人公のカップルはそこでイチャイチャすることはなく、したがって、軽くツンデレといっていいんじゃなかろうか。あとは攻めキャラが、年下だろうが年上だろうが、強気なことが多いかもしれない。ああ、でも、「アズマリシリーズ」の伊万里は、3作目あたりはちょっとヘタレていたけどね。

そして、職場には男ばかりがいるわけではなく……。榎田作品には、魅力的な女性脇役キャラが登場するのも気に入っている。「ゆっくり走ろう」の栗田さんや、「アズマリシリーズ」の河川敷さん、宮益さん、「ごめんなさいと言ってみろ」の麗さん(オカマだけど)などなど、いやぁ、どのキャラも、ちょっと一癖あってステキです。河川敷さんは、もうお友達になりたいぐらい。社長のメモを文字校正して返すような人なんですから! 極真空手をたしなんでいる人なんですから! セクハラ発言も冷静に切り返しちゃう人なんですから!

またほかにも、以前「藤井沢商店街シリーズ」のレビューでも触れたけど、登場人物にセクシャルマイノリティがほぼ必ず登場するのも興味深い。作品の中で彼らは、主役の場合はごく自然に恋愛関係に流れ込ませ、脇役の場合は主人公たちの相談に乗ったりする。彼らが登場することで、「男同士の恋愛」に脈絡を持たせようとしているような、現実の社会から作品世界を客観的に見ても違和感がないように工夫しているような、そういう気がするといったら、穿ちすぎでしょうか。

このように設定やキャラクターが魅力的なことに加えて、榎田さんの場合は、文章がうまい。突っかかりなくスルスルとテンポよく読み進められ、かつ、言葉遣いや表現方法がどこか軽妙。わたしなんかはツボにハマって、クスクス笑ってしまうことがちょこちょこある。たとえば―。

「月曜日も太陽は相変わらず東から昇り、上司である進藤課長の髪が突然増えているなどということもない」(「普通の恋」より)
「ただ歩くだけなのに、自分の右足で左足を踏むような男だ」(「ごめんなさいと言ってみろ」より)
「だって人体構造上無理があるでしょ! そこは出口でしょ! 高速道路だって出口から入ったら、大事故でしょ!」(「ソリッド・ラブ」より)

もちろん、作品によって、ぐっと落ち着いた雰囲気のものや、シリアスな設定のものもあるけど、そういうものでも、決して硬すぎたりしない。ライトノベルとしての読み進めやすさを、すごく意識している人なんじゃないかという気がする。

力が入りすぎて、やたらとダラダラと長く続けてしまったが、最後に。榎田作品、連作やシリーズものが多いのも特徴だと思う。わたしが持っているものだけでも、

・アズマリシリーズ(「ソリッド・ラヴ」など)
ソリッド・ラヴソリッド・ラヴ
榎田 尤利

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・マンガ家シリーズ(「愛なら売るほど」など)
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・藤井沢商店街シリーズ(「ゆっくり走ろう」など)

と3つもある。ほかにも「魚住くんシリーズ」とか「ラブ&トラストシリーズ」とかいろいろあり、なんというか、

――すごい創作力――

と感心してしまう。実際、毎月2冊は新刊が出ているし、おまけに雑誌の執筆もあるだろうし、いったいどんなペースで書いているのか考えると、ちょっと恐ろしい。それだけ読者から「続編を!」と期待されることが多いということだろうし、榎田さん自身のプロットも大きいのかもしれない。

ふと気づいたのだが、そういえば、「刑事・探偵・ヤクザ」という、BLにはポピュラーな職業の人は、これまで榎田作品で見かけていない。ポピュラーゆえに、あえて避けているのか、この職業に興味がないのか――。この職業設定で作品を執筆していないところに、榎田さんのBL作品に対する心意気のようなものを感じてしまうのは、わたしがもう榎田作品にメロメロだから? まあ、榎田さんの書く「刑事・探偵・ヤクザ」が主役の作品も、見てみたい気はする。しかしなにはともあれ、ハイペースで執筆して、いきなりぶっ倒れないように、体に気をつけていただきたいなぁ――と思うのだった。

だって、榎田作品が読めなくなったら、かなり今の読書生活はつまらなくなりそうだからねぇ…。

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Tags: 勝手に祭り 榎田尤利 宮本佳野 高橋悠 セクマイ

Comment 7

2006.10.24
Tue
10:01

もと #4pDgvQA2

URL

木原さん、英田さんとここ読んでから買って読んでるんですけど、ハズレがなくてすごく感謝してます。
今度はこの方も見たくなってしまいました!! う~、気になる!

編集 | 返信 | 
2006.10.24
Tue
13:12

lucinda #-

URL

照れる……いやいや、わたしの方こそ、おもしろいコミックス教えていただいて、すごくありがたいです。

木原さんや英田さんでおもしろいと思われるなら、多分、榎田さんもイケます。いや、多分。「普通の男」「普通の恋」はもちろんイチオシなんですが、わりと地味目。どれも読んでソンはないけど、わたしが持っている「藤井沢商店街シリーズ」は、いろんな職業の主人公が登場してます。一人称がイヤでなければ、「アズマリシリーズ」もおすすめです。ぜひぜひ!

編集 | 返信 | 
2006.10.24
Tue
18:24

かせ #.wkWn3KA

URL

初めまして。突然お邪魔いたします。
榎田さんの作品の良さは、デビュー作の「魚住君シリーズ」に集約されていると勝手に思っているオタク歴20年の女です(lucinda様と同年代です…たぶん)。「魚住くんシリーズ」を、私はBLだとは思っておりません。文学作品といってもいいあのすばらしさ(でもお堅いわけでもありません)を、これから白紙の状態で楽しめるlucinda様がとてもうらやましいです!
是非是非読んでみてください!
(ただし、シリーズ後半に精神障害??などの描写が出てくるので、精神力に問題のないときに読むことをお勧めします…)

蛇足ですが、榎田さんは、私の知る限りでは探偵ものも一作書かれています。シリーズ連載途中で掲載誌が休刊してしまったので、私はシリーズが完結したのか確認していないのですが、「眠る探偵」というタイトルです。子持ちやもめで睡眠障害もちの美青年探偵のお話でした。雑誌休刊後、講談社(ホワイトハート)から単行本が出ているようです。お時間があればネットや古本屋さんで探してみてはいかがでしょうか。

編集 | 返信 | 
2006.10.24
Tue
19:44

乱菊 #pMXl.iIs

URL

榎田さんは私もちょこちょこ読んでます。
なんだかこの作家さんは、私の中でいつの間にか「うまくて当たり前」の位置づけになってました。
だから少々の内容では感銘を受けなくなってました。
この人は本当にコンスタントにそれなりのものを書き続けてらっしゃるので、とても力がある方なんだと思います。
けれども、そのハイレベルな執筆ぶりが、逆にアダとなってしまうような・・・すごく生意気な意見だ~私(汗)

木原さんみたいにもともと遅筆だったら、出たときの衝撃度も高いんですけどねー(木原さんのレベルが云々というたとえではありません。念のため)
でもここで執筆のスピードが落ちたら「書けなくなった」とか言われるんでしょうねぇ。
作家によって自分の一番いいスピードはあるだろうから、それぞれでもちろん結構なんですが、もしちょっと無理をしているんであければlucindaさんのおっしゃる様に体が心配!
ぶっ倒れて・・・というのは本当に避けていただきたいので。

ああ、だらだら書いてスミマセン。
何が言いたかったかというと、榎田さんスキ☆ってことです。

編集 | 返信 | 
2006.10.25
Wed
01:37

lucinda #-

URL

>かせさま
どうも、ようこそいらっしゃいました。コメントありがとうございます。

あ、探偵モノ、あったんですね。スミマセン。探してみます。ありがとうございます! 魚住くんシリーズ、かなりいいといわれてますよね。読もうと思いつつ、でもなんだかもったいない気がして手を出せないような……いや、もったいない、の根拠はないんですけどね。でも、必ず読みます。

>乱菊さま
うまくて当たり前、っていう感想、わたしも覚えアリです。

>けれども、そのハイレベルな執筆ぶりが、逆にアダとなってしまうような・・・
ああ、わたしも、それ、感じるんですよね。木原さんもうまいんだけど、榎田さんの場合は、その多作さとか筆の速さが、木原さんとは対照的な感じがしないでもありません。自分がタカムラーゆえの超個人的な感覚ではあるのですが、なんだか作品出版数における、高村薫と宮部みゆきの比較を連想させるような。
おもしろい作品を読めれば満足なんだけど、作品が出れば出るほど、おもしろさの要求は高くなっていく――読者はワガママだなぁと思います。ほんとに。

編集 | 返信 | 
2006.10.25
Wed
18:10

mawi #-

URL

lucindaさま はじめまして。
こちらには最近よせていただくようになったのですが、とても楽しませていただいております。
わたしも榎田さんは大好きで、全てを読んでるわけではないですが、やくざ物もいくつかあったので、ご紹介させて頂きます。
「神さまに言っとけ」「ラブトラストシリーズ(全3巻)」です。
どちらもおススメです!

編集 | 返信 | 
2006.10.25
Wed
19:22

lucinda #-

URL

どうも、ようこそいらっしゃいませ。コメントありがとうございます!

あらー、探偵ものに引き続き、ヤクザもの、あったんですねぇ。やはりよくよく調べてモノを言え、って感じですね。すみません。
でも、情報ありがとうございます。ラブトラストシリーズも、読もう読もうよ思いつつ、つい、新刊に手を出してまだ読んでいないのですが、近いうちに必ず。
また遊びにいらしてください。

編集 | 返信 | 

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