リバと山と○○と―「リバーシブルスカイ」(沙野風結子)、「天国に手が届く」(夕映月子)

 28,2010 05:11
とうとうこの時が来たか! と万感の思いで手に取ったこの作品。


何の“時”かというとアナタ、リバを描いたBL小説の発売という“時”ですよ! <アナタって誰?


BLには職業や属性は言うに及ばず、エロのバリエーションもさまざまに描かれているけれど、リバが取り入れられた作品は、商業誌の小説では見当たらないのが長らく不満だった(「最果ての空」(英田サキ)では、脇でリバがうっすら描かれていたけれど)。コミックなら、すでにいくつかもう出ているというのに。


よほどリバには抵抗のある読者が多いということか……この嗜好も腐女/男子の中にあってはマイノリティってことかな……などと半ば諦めていたのだけれど、まさかの展開に大はしゃぎ。しかも作者が、沙野風結子さんでありますれば、期待しない方が無理というものでしょう!


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沙野 風結子 和鐵屋 匠

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高校時代、クライマーを目指していた医者の蒼一は、弟の親友・陸に夢を託し、活躍を密かに見守っていた。しかし、登山中に弟が死亡し、陸が重傷を負ってしまう。彼を救いたい一心で、ともに暮らし面倒を見るが、肉体は回復しても、陸の心はズタズタなままだった。毎晩悪夢にうなされる陸を起こしていた蒼一は、ある夜夢うつつの彼に、突然襲われ…。相手への想いに葛藤しながらも、頂上を目指す二人の運命は―。


クライマーものということで、さらに一層、わたしの期待感は高まったのだが――なんというか、ちょっとトンチキの香りがうっすらしていたのが予想外


陸は、山がなければ生きられないような、ストイックな男。親友でクライミングのパートナーだった蒼一の弟・昇を目の前で失ってから生きる屍のようになったほど、不器用で純粋でもある。


そして蒼一も、一時はクライマーを目指していたほどクライミングに打ち込んでいたのは分かる。


でもだからといって、エロシーンのその行為をクライミングになぞらえたり(肩甲骨をホールドに見立てるとか)、クライミングでの言葉を相手に囁いてみたり(「頂(ピーク)だ」とか「あそこ、パンプしそう」とか)しなくてもいいんじゃないの? 読みながら何だか落ち着かず、「また言っちゃったか……」と何度も苦笑しちゃったよ。


また、理学療法士の野木の陸への執着ぶりが、徐々に“イッちゃってる”感じになるのだけど、そのイキっぷりが気持ち悪くも滑稽。こちらはちょっと、あり得ないほど豪華なトレーニングルームなどトンデモ設定もあって、怖いわぁ……と思いつつ、これまた何度も笑ったのだった。


作品のタイトルに「リバーシブル」と入れられているほどなので、この作品は、「とにかくリバを描く!」ことが最大の目的だったのだと思う。ただ、ちょっと肩に力が入りすぎてしまったのか、せっかくのエロシーンにさほどエロさが感じられないのが何とも惜しい。蒼一と陸の“対等感”も、ちょっと物足りなかったし。かすかなトンチキ風味は、気合が入りすぎたせいなのかも。


とはいえ、さすが沙野さんだなぁ……と感心したのが、エロシーンがほのかに3Pっぽくなっているところ。エロシーンは3回あるのだけど、1回目(陸×蒼一)と2回目(蒼一×陸)の最中には、弟・昇の存在がにおわされる。陸の昇への、昇の陸への、蒼一の昇への、昇の蒼一への、それぞれの思いに触れられる形で。技アリだ。


あとがきの中で沙野さんは、「リバが苦手な人でもOKなリバ」を目指したと書かれているので、それならエロシーンがねっとりしていないのも当然なのかもしれない。やっぱり、本を出すからには買ってもらわないといけないものね。


でも、そのうちにはもうちょっとねっとりエロいリバものが読みたいなぁ……と、贅沢なことを思うのだった。なんだかんだと、こうしてリバものが1冊、世に出たことだし。


「リバーシブルスカイ」はクライマーものでもあったが、この作品もクライマーもの。


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登山が趣味の会社員・佐和は、あこがれの登山愛好家・小田切に出向先で出会った。思い切って山に誘うが、小田切の心の傷になっている、亡き有名登山家の叔父・叶の話を持ち出したせいで、冷たく断られてしまう。ある日、一人でクライミングに来た佐和は、偶然同じ場所に来ていた小田切が原因の落石でケガをする。彼の罪悪感に半ばつけこむように、登山の約束を交わすが…?孤独な心に寄り添う、天上の恋。


今気が付いたのだけど、こちらでも攻めの登山パートナーだった「有名登山家」が山で亡くなってますね。ただこちらでは、受けがそのパートナーに代わって一緒に山に登るようになるのだけど。


結構クライミングのシーンが登場するのが嬉しいし、佐和と小田切が少しずつ関係を縮めていく様子が丁寧に描かれているので、ドキドキしながらも安心して読めた。夕映月子さんは新人のようだけど、危なげないストーリー展開に、今後も期待大。


でもねぇ……なぜかこの作品でも、エッチの時にクライミングの過程が引き合いに出されるんだよねぇ……。「まだ五合目だ」とかさ。


いや、いいんですよ。いいんですけど――何か、読んでいてこっ恥ずかしくなっちゃうのはなぜなんだ? まさかクライマーもののお約束、なんかじゃないよね!? クライマーものらしさを演出するためには欠かせない、のかしら?


クライマーや山岳警備隊など、山を舞台にしたBL作品はいくつか読んだけど、じゃあ海を舞台にした作品って、何があるだろう……とふと思った。


ここからとりとめもない連想なので折りたたみます。
マグロ漁船? うーん、確かに「海」だけど、クライマーや山岳警備隊のようなストイックな感じがないよなぁ……。サーファーが登場する作品もあったけど、サーフィンやボディボードって、バディを組んでやる、というイメージではない。


山系(勝手に命名)は、登攀のためにパーティーを組んだり、「リバーシブルスカイ」や「天国に手が届く」でも描かれたクライマーとビレイヤーの役割など、“信頼によって築かれている関係”を描きやすい=腐的妄想しやすい、のかしらね。


海系で“信頼によって築かれている関係”が強く影響している感があるのはなんだろう? ヨット? ……やたらとブルジョアっぽいなぁ。なんだか、受けに強引に迫る鼻持ちならないボンボンがやっている感じ。あ、都知事の小説のイメージに影響されすぎですね。


ボート(これは川だけど)ならアリかもしれないなぁ。地味すぎる? ダイビングにもバディシステムがあるらしいので、ダイビングなら、海中深くを目指すことが、高くそびえる山頂を目指すクライミングと相対する感じがしないかしら。 「グラン・ブルー」も男二人の競争を描いていたしさ。


――というわけで、求む★ダイビングorボートorヨット(一応入れとくか)その他、ウォータースポーツ系がふんだんに盛り込まれたBL作品
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Tags: 沙野風結子 夕映月子 和鐵屋匠 木下けい子 リバ 複数レビュー

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