“エロ&笑い”はバランスが難しそう―「僕の先輩」(羽生山へび子 )、「フレキシブルな恋愛 」(月夜野亮)

 14,2010 23:14
かつて、コンピュータ系オタクだけど人付き合いに如才のない友人・Jくんは、「エロでかつ笑えるって、難しい」とのたもうた。

その理由は、エロに傾きすぎて笑いがハンパだったり、笑いに傾きすぎてエロさが薄まったり、バランスが難しい……というようなことだったと思う。


古くから艶笑譚は世界のあちこちにあるし、落語にも艶笑小咄はあるけど、その辺りはどうなんでしょうねぇ……。でも確かに、ガッツリ濃厚なエロと笑いを組み合わせると、エロはふざけているみたいに見えたり、笑いは気まずい雰囲気が漂ったり――という一面はあるかもしれない。バランスを取るのは難しそうだ。


そんなことをぼんやり思ったのが、書店のPOPに背中を押されて買ったこの作品。

僕の先輩 (ミリオンコミックス  CRAFT SERIES 40)僕の先輩 (ミリオンコミックス CRAFT SERIES 40)
羽生山 へび子

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自称・愛のハゲタカこと飴宮はじめは、学校中から恐れられている先輩、二宮三郎に猛烈アタック中。ハイエナよろしくつきまとうはじめに ウンザリ顔の三郎だったが一途で真っすぐな体当たりの告白に気持ちはガッチリ仕留められた!? 笑って、ヘコんで、ご飯食べて、一緒に過ごした今日はとっても幸せだ! 羽生山へび子(「はぶやまへびこ」と読みます)初のコミックス登場!!


POPの言葉どおり、コメディだった。読んでいる間、ずっと笑っていた。だけど改めて考えてみると、エロは薄い。主人公二人がふとんに倒れ込んで暗転――みたいな感じ。


でもそれでいいの! 物足らなさを感じないの! あらすじに書かれているように、「笑って、ヘコんで、ご飯食べて、一緒に過ごした今日はとっても幸せだ!」という日常生活のキラキラ感が、ギャグとともにまぶしいの!

そのくせ、最後のあたりで、きちんとキュンとくる切なさが用意されているのが心憎い。ま、その最後も、「ああら~?」というオチ付きなんだけれども、その抜かりのなさも含めて、とても愛しい作品だ。


はじめの打たれ強さもカワイイが、私が気に入っているのは「土建界のショパン」かなぁ……。あとがきのところの「お色気担当s」のイラストにフキました。


POPでは、絵の上手さも絶賛されていたのだけど、確かに細かい描き込みが多いし、背景描写も丁寧だと思う。でもこの絵柄で、まさかBLとは思わない人も多かろうよ。BLの幅も広がっているよなぁ……と感慨深い。


羽生山へび子さんの作品は、要チェックリストに仲間入りだ!


そして、こちらも読みながら、かなり笑った作品。でもこちらは、エロと笑い、どちらもガッツリ目だった!

フレキシブルな恋愛 (アクア文庫)フレキシブルな恋愛 (アクア文庫)
月夜野 亮 松崎 司

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灰島悟は、世界的医療機器メーカー『グローバルエレクトリック』に入社。その後すぐに静岡にある日本工場に配属され、明るくて脳天気な悟は一躍おばちゃん達の人気者に。そんな悟が唯一苦手なのが工場長のマクラウド。なのに、ご褒美にと連れて行ってもらったふたりきりの食事の席で、うきうきした気分になってしまったのだ。その気持ちがなんなのか、答えを出せないまま、今度はマクラウドの自宅に招待されて。


巡回先のブログで紹介されていて、ずっと読みたかった作品の一つ。「仕事シーンがきっちり描かれている」というレビューに惹かれたのだけど、もう、予想外に笑った笑った!


初めの内はチャラく見える悟だが、やがて仕事にのめり込んで奮闘していく姿に、読んでいて可愛気を感じるようになる。この気持ち、多分ボスのマクラウドの悟への気持ちとシンクロしてるね。


そんな悟の奮闘と可愛気の中に、マクラウドや先輩の竹芝、須田、シェリルとのコミカルな会話が含まれているのだが、これがわたしの笑いのツボにドンピシャにハマること、ハマること。


なんというか……アメリカのテレビドラマのシチュエーションコメディみたいな、丁々発止の立て板に水みたいなやりとり。


オレ以外立ち入り禁止っ!」の時も、アメドラのような軽快な会話に大爆笑した記憶があるので、作者の月夜野亮さんは、そういうコメディのセンスをお持ちなんだろうなぁ……と想像。


月夜野作品はそれほどたくさんは読んでいないけど、コメディではない作品もあったので、“天然トンチキ”というより、“計画的コメディ”タイプなのかなぁ……。あの軽快なセリフまわしは、小林典雅さんと同じニオイがするような……。


もちろん、仕事シーンの細かい描写も、“労働BL”好きとしては非常に満足。松崎司さんのイラストも、地に足をつけて働いている雰囲気を割り増しさせていたと思う。


そして繰り返しになるけれど、この作品、コメディながら、エロもしっかり描かれていることに感心。この作品だけでなく、「オレ以外…」も結構そのシーンは濃い目じゃなかろうか。典雅作品よりも、より“BL的”にいやらしい感じ、と言うか……。


わたしの脳内で月夜野さんは、“濃い目エロと大笑い”のバランス調整が上手い作家さん”としてすっかり刷り込み済みですよ!


――マンガでも、“濃い目エロと大笑い”のバランス調整が上手い作家さん、いるんでしょうけどね。
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Tags: 羽生山へび子 月夜野亮 松崎司 複数レビュー

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