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同系列 他ジャンルの風味

lucinda

官能小説・コミックス。BL作品は、大きく分けられれば、一応ここに入るものだと思う。だが官能小説にもいろんなジャンルがある。男×女でも男性向けと女性向けでは違うし、それぞれSMとかフェティズムとかの嗜好が絡むと、これまたいろいろ分けられるだろう。BLとゲイ小説が違うなら、百合とレズ小説も違うといわれているし。

先日、「KYOUHAN」シリーズは男性向け官能小説を思わせる――とアップしたが、その後、「KYOUHAN」シリーズの姉妹作品「愛とバクダン」シリーズを読んでみた。果たして、著者の中原一也は、ここでも徹底的な攻め視点で、スポーツ新聞の官能小説的表現を満載しているのか――?

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大学時代の悪友・深見に頼まれて、その弟・謙二朗を助手に雇った、元刑事の探偵・竜崎。謙二朗の美しさと強気な性格に、竜崎は惹かれていくのだが……。

結論からいえば、「愛とバクダン」シリーズは、たしかに基本的には、攻めの竜崎視点で書かれているけれど、受けの謙二朗の視点から書かれている部分もあり、かつ、謙二朗のやんちゃぶりが目立っていて、「KYOUHAN」シリーズほど、「なにがなんでも攻め視点」な感じではなかった。だけど――。やはり、攻め視点のオヤジっぽいエロっぷりはここでも健在。一体、何がこうまで、スポーツ新聞系官能小説を連想させるのか、考えてみた。

■攻めが年上だからなのか?
■攻めが色恋沙汰に慣れている風なのに対して、受けがウブいからか?
■攻めが、けっこう強引・強気で、やたらと言葉で責めるからか?
■受けは、別にマグロではないのだが、わりと攻めのなすがままだからか?
■受けが「無意識のうちに色っぽく攻めを煽る」設定だからか?
■受けが、攻めの名前を呼び捨てにするなどもってのほかといった感じで、上下関係というか強弱関係というかがはっきりしているからか?
■「たまらない」「純情」「劣情」「男を悦ばせる」というような言葉が連発されているからか?

ともかく、このスポーツ新聞系官能小説風味は、攻めのオッサンくささを際立たせるのには効果絶大で、わたしからすれば、

――36歳ぐらいはオヤジとかオッサンというには微妙なところだなぁ……しかも主人公たちが美丈夫で腹も出ていないという設定なだけに――

と思うけれど、作品の中の主人公たちは、見事に「イヤらしい中年」というオーラが出まくっている。恐るべし、スポーツ新聞系官能小説風味。これが本当にスポーツ新聞に掲載されている小説なら、エアブラシを使った、あの艶やかな裸体の挿絵がつくんだろうなぁ……。「KYOUHAN」と「愛とバクダン」、両シリーズのエロシーンに、あのエアブラシ系挿絵がついていても、さほど違和感はない気がする。ついてたら、ひくか笑うかのどっちかしらね。

そしてもうひとつ。「窮鼠はチーズの夢を見る」。「レディコミにジャンル分けされているけど、がっつりBL」という、紹介して下さったもとさんの言葉どおり、本当に中身は男×男の正真正銘BL。でも作者コメントでは「初のレディコミ作品」と紹介されている。

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不倫を繰り返していた恭一の前に、妻から浮気調査を依頼されて現れたのは、大学時代の後輩・今ヶ瀬。今ヶ瀬は、不倫の事実を妻に報告しない代償に、恭一に関係を迫る。

作家が、BLコミックスからレディコミへ、あるいはその逆へ、作品を発表するということは、そう珍しいことではないようだけど――男×女で女性向けコミックス=レディコミというのは、単純すぎる認識なんだろうか? レディコミ、ほとんど読んだことがないのだが、「窮鼠は…」のどのあたりがレディコミ風味なのか、これも考えてみた。

■今ヶ瀬が情念たっぷりに恭一を想い続け、口説くところか?
■恭一が「いけない」と思いながらも、次第に今ヶ瀬に惹かれていく過程が細かく描かれているところか?
■今ヶ瀬と恭一が、互いに、相手の恋人に激しく嫉妬するところか?
■恭一の学生時代の恋人・夏生と今ヶ瀬、今ヶ瀬の昔の恋人と恭一、がそれぞれ、丁々発止のやり取りをする修羅場シーンがあるところか?
■今ヶ瀬×恭一だけじゃなく、女性キャラとのベッドシーンもわりとしっかり描かれているところか?
■今ヶ瀬も恭一も、作品中、働いているシーンよりも、ずーっと暗く重く恋に思い悩んでいるシーンが多いところか?

……ちょっとこじつけっぽいかしら。一番最後の項目だけど、わたし自身は今のところ、あまりコミックスを数多く読んでいないうえに、読んだなかでいいなぁと思うものには、大抵、主人公たちの仕事風景が入っていて、「恋に悩んではいるけど、仕事がんばってます」みたいな雰囲気が感じられていたような気がしたので、入れてみた。まあ、この「わたしが感じたレディコミ風味」は、わたしが抱いているレディコミのイメージ(情念たっぷり)に大きく左右されていると思うので、作者やレディコミファンから見た「レディコミポイント」とは、相当ズレている可能性が高いだろう。

しかし、まあ、こうして同じBL作品といえども、他ジャンルの表現手法や設定などを取り入れている(ように思える)ものがあるのは、面白い。それをみつけるのも、ちょっと楽しい。

それはさておき、「窮鼠…」、わたしはかなり好きです。今ヶ瀬のセリフがいちいち切なく、いじらしい。それは、恭一へのセリフであると同時に、読み手に、人を好きになる苦しさややりきれなさを突き付ける感じ。ラストで、今ヶ瀬がかつて恭一に求めたことをなぞるように、恭一が自分の奥底に隠し持っていた情熱や欲望をむき出しにするところは、作者、上手いなぁ……と感心したのだった。

これ、続編とか出そうな気がするけど、どうでしょうね。

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Comments 3

There are no comments yet.
もと

「窮鼠・・・」おもしろかったですか? えへへ、よかった。
レディコミといわなければ、全然わからない出来ですよね。まぁ、私があえて言うなら、女がリアルすぎるかな(笑) やらしく嫌な所が出てて目を背けたくなりますね(^^;
ラスト辺りの「え!男と女だよ!選べないの!そっちの方がショック」とかって感じのセリフ、あれ、えげつな~!でも女の立場ならあえて言いそうと思っちゃいました(^^;
そういう意味では、キャラに対して容赦ないなぁと、ホントギリギリまでやってるなぁと感じました。
カバー裏の「ちょっといい話は描かなくていいんです」っていう編集長の弁は実にいいなと思いました。ほんと、ちょっといい話じゃ、この味は死にますね。
そういえば、先月発刊の雑誌に、この続きが載ってたらしいんですよ!! すんげ~~くやしぃ~~~!!!
私は、実はもう続きはないんじゃないかと思ってたんで、更になにしてくれるの?って余計に思って、非常に読みたかったですよ。
あ~、コミックスになるんだろうか? なったとしても当分先だな・・・(;´Д`)

lucinda

いやぁ、いい作品を教えてくださってありがとうございます!
ちなみに「叫んでやるぜ」も、現在手に入ったものを読書中です。

そうそう、「男と女なのに選べないのか?」というセリフも、けっこうスゴいですよね。たしかにぐっさりくるセリフ。あのラストを含めた、最後の章は、めちゃくちゃドラマチックでおもしろいと思います。

>そういえば、先月発刊の雑誌に、この続きが載ってたらしいんですよ!!
えーーー!? 購入前に読んだレビューを見て、なんとなく、続きの要望が多いんじゃないかなぁ…と思っていたけど、ほんとに続きが…! 「窮鼠…」のように、何回かに分けて作品を発表してまとめられるんでしょうか。そうするとやはり先になりそうですよね。待ち遠しい……。

  • 2006/10/24 (Tue) 13:08
  • REPLY
lucinda
拍手コメントRES

11/26 21:12 Kさま

コメントありがとうございます! うれしいお言葉、ありがとうございます。「俎上…」はぜひ。ってもう読まれたでしょうか? 「俎上…」を読まないと、あの世界をまるごと楽しめないような気がします。
twitterもやってらっしゃるんですねー。
遠慮せず、からんでやってください~!
これからもよろしくお願いいたします。

  • 2010/11/29 (Mon) 23:47
  • REPLY