「千―長夜の契」(岡田屋鉄蔵)

 21,2010 02:31
岡田屋鉄蔵さんが、「花丸」で時代モノを描かれているのは知っていた。でも、なるべく雑誌は買わないようにしているので(部屋の収拾がつかなくなるから)、きっと単行本になるはず……!と信じて待っていた。

――そうして、念願の単行本となった「千―長夜の契」をそそくさと手に入れ、読み終わって頭に思い浮かんだ言葉は、「満足」の二文字なのだった。

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岡田屋 鉄蔵

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人の願いを叶える代償にその者の魂を喰らう謎の座頭・千載。彼と旅をする剣豪の浪人・草薙主悦。美形の若侍、神の如く舞う女形、天狗の一族……愛を貫く者たちの必死の祈りを受け二人は起つ!


岡田屋さんの作品は、あんまりBL臭がしないと思う。もっといえば、ゲイコミという感じもしないような気がする。


主人公は男同士だし、エロシーンはむしろ結構ガッツリ目なんだけど、ただヤッてるだけの話ではないし、かといって相手への気持ちがぐるぐるしい恋愛メインの話というわけでもない。


しかし読み終わると決まってじんわりと浸ってしまうのは、“ドラマ”がしっかりと存在しているからだと思うのだ。物語の世界観にブレがない。キャラクターたちの関係や気持ちが濃やかに描かれ、巧みにストーリーに導かれる――。


というわけで、岡田屋作品を読むたびに、「“THE☆BL”って感じじゃないなぁ」と思いつつも充足感を感じるんだと思う。


ちなみに、もしかして絵柄が少女マンガっぽいきらびやかな絵柄だったら印象が違うかと想像してみたけど、あまり影響はないんじゃないかと思った。えーっと、個人的に良い意味で“THE☆BL”という印象の鹿乃しうこさんや門地かおりさんの絵柄を、岡田屋作品のキャラに脳内で置き換えてみたのだけど、キャラの印象が変わって楽しくなっただけなのだった。


そしてこの「千―長夜の契」、もう“BL”の枠を超えちゃったか、BLの新機軸を打ち出した作品じゃないかと思う


何しろ、主人公の主悦と千載の関係が、お互いのことばかり考えていて……といようなスイートな関係ではまったくない。でもお互いを意識して張り合っているわけではなく、主悦が千載の傍にいて、千載が何者なのかを二人で探るために共に旅をしているという、なんだか、“宝の在り処を目指して冒険に出かける気の合う同志”という感じ。


これって、やおい妄想を発動したくなる少年マンガのキャラクターたちのようだなぁ……と思った。少年マンガのキャラ同士は、オリジナルストーリー上では色っぽい関係に陥らないけれど、ここではそんな関係も持っちゃった、みたいな。


しかも、主悦と千載の関係は恋愛的なスイートさはないけれど、この作品で描かれているのは「愛だよ、愛!」と気がついて、三たびしみじみと感じ入ってしまうのだ。


――まあ、その「愛」は、二人が旅で関わる人たちにまつわる物語なんだけども。でも、千載に魂を喰らわれる人は、「己の欲望の為」に喰らわれるのではなく、「手前の魂を喰われてでも叶えたい望み / それは大抵自分以外の誰かの為」に喰らわれるのだ。そこに愛がなければ何があるというのだ!


愛する主君を守ろうとして謀殺された侍、神に使える少年と愛し合って神罰を与えられた役者、強欲な権力者から山を守ろうとする天狗……と、魂を喰らわれる設定もまた、ドラマチック。時代モノだけど、伝奇ロマン的でもあるのもいい。あ、最後の天狗編は、ちょっと捻ってあって、天狗は喰らわれません。


この物語、まだまだ続くようで、これから少しずつ、千載自身がどうして人の魂を喰らうようになったのか、一体どういう出自なのかも、描かれる可能性もあるようで、すごく楽しみ。


そして物語が進むにつれ、ますます“THE☆BL”から離れていくのかどうかも楽しみなのだった。あ、もちろん良い意味でですから!
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Tags: 岡田屋鉄蔵 歴史/時代BL

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