“逃亡”が印象的―「ディヴィジョン」(西田東)、「手錠」(剛しいら)

 12,2010 01:31
西田東さんの新刊。あー、なんていいんだろ。もう何度読み直したか分からない。

ディヴィジョン (ディアプラス・コミックス)ディヴィジョン (ディアプラス・コミックス)
西田 東

新書館 2010-09-30
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新米弁護士の浅野は仕事でフィリピンを訪れるが、薬の運び屋の疑いをかけられて警察に捕まってしまう。刑務所へ搬送される車の中で一緒だった男・田中となりゆきで脱走することになった浅野。二人で逃亡生活をするうち、危険だが魅力的な田中からいつしか目が離せなくなり……。
アダルトでスリリングなハードボイルドロマンス。


まったく身に覚えがないのに逮捕されてしまった真面目な弁護士・浅野に逃亡を促したのは、元ヤクザの田中。


この田中という男、一見チャラくてちゃらんぽらんそうなのだが、いざという時に浅野を庇ったり助けたりと優しさを垣間見せる。


しかも田中、浅野の視線や態度でいち早く浅野がゲイだと気づいたとたん、口説いてみたり挑発してみたりして浅野を翻弄するのだ。


一見ちゃらんぽらんなのに、ふとした時に優しくしたり、熱心に口説いてきたりって――タチの悪そうな女(男)タラシそのものじゃありませんか! 真面目で恋愛におくてそうな浅野がどんどん深みにハマるのも無理もない。読んでるわたしも、田中の魅力にシビれたもの。


初めの頃の逃亡生活は、浅野と田中はお互いにどこか身構えて、相手の出方を伺っていたような感じ。


ところがある時点で、浅野の冤罪が晴れたことを浅野には黙ったまま、田中は浅野と逃亡を続けようとする。それは、二人が初めて寝たあとのこと。


それ以来、田中の浅野への甘やかしっぷりがまぶしいのなんの! 浅野も田中に縋りついていて、誰ですか、このカワイイ人!? と内心ツッコんだ。


現実世界から逃げるように二人で暮らしているものの、「この先どうなる?」という不安感と、「このままこうしていたい」という刹那的な欲望が、コマやページの端々からジワジワ滲み出てくる。浅野が田中に夢中になって縋っていたのはもちろんだけど、田中も同じように、浅野に夢中になって縋っていたんだろうなぁ…と読むたびに切なくなるのだ。えーっと、134ページぐらいからですよ!


田中の魅力ばかり書いてしまったけど、浅野も結構好きなキャラだ。弁護士という堅い職業に就き、ゲイであることを知られないように用心深く生きている男。臆病なようで大胆。優等生タイプのツンデレ。


浅野と田中の再会で「こうして逃亡生活は終わった」と物語にエンドマークがつく。このオチも最高だ!


「逃亡」でもう一つ印象深かったのが、この作品。

手錠 (プラチナ文庫)手錠 (プラチナ文庫)
剛しいら 小路龍流

フランス書院 2010-10-08
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救急外科医の松浦は、突然男に攫われる。その男・祐司に連れて行かれた廃ビルの一室には、彼が忠誠を誓う兄貴分の毛利が撃たれて横たわっていた。脅されるままに処置を施した松浦だったが、解放されず、祐司と手錠で繋がれてしまう。繋がれたまま食事をし、風呂に入って眠る―やがて、常に繋がれたその異常な関係を異常と思わない、奇妙な熱がふたりの間に生まれてきて…。


……「逃亡」より、「監禁」ではあるのだが、敵かから逃げ隠れているヤクザが外科医を攫うという物語の始まりと、主人公たちが、ヤクザの兄貴から逃げ出す物語の終盤が印象的ゆえ、「逃亡」というキーワードで引っ掛かってしまうのだと思います。はい。


これねぇ……すごく面白い設定だと思うのだ。攫われた外科医・松浦(受け)。瀕死の兄貴に忠実な下っ端ヤクザ・祐司(攻め)。この二人が閉じこもっているうちにお互い惹かれあうようになり、祐司は自分らしさを取り戻していく。しかし祐司は、自分に多大な影響を与えた兄貴分・毛利の存在を振り払えない。


心理的な三角関係がスリリング……になるはずだったのに、なりかけて終わったように思われて惜しい。ページの制限なんでしょうか――なにがブレーキをかけたのかは分からないけど、ドキドキするようなサスペンスになる可能性があったと思うんだよなぁ……。


剛さんの、「男」に憧れ誇りを持っている男たちの物語を読みたいですよ……新刊で。
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Tags: 西田東 剛しいら 小路龍流 警検麻ヤ 複数レビュー

Comment 1

2010.11.25
Thu
01:34

lucinda #-

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拍手コメントRES

10/28 17:17 mさま

レスが…非常に遅くなりまして本当に申し訳ございません。いつもコメントをありがとうございます!
同感、うれしいです…!

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