「野ばら」「窓辺の君」(雲田はるこ)

 22,2010 01:20
わたしはマンガは好きだけど、書店にズラッと並んでいるマンガに対して、「これイケるかも」「面白そうかも」という第六感があんまり働かない方だ。


小説は自分のカンを信じて買うことも多いのに、マンガは圧倒的に少ない。思えば「何があっても手元に残しておきたいマンガ」は、ほとんど全部、誰かからオススメされたのがきっかけで読んだものだった――<遠い目


でもBLに関しては、わりと直感のまま買うことがままあって、0.5%くらいの確率で“マイ・ヒット作”を引き当てることがある。


最近、引き当てた作品はこれ。

野ばら (MARBLE COMICS)野ばら (MARBLE COMICS)
雲田 はるこ

ソフトライン 東京漫画社 2010-06-20
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両親を亡くし、若くして洋食カジワラの店主を務める梶原武は、そこに勤める離婚寸前の子持ち・神田惣一郎が気になって仕方がない。ある日武は神田不在中に離婚届を私に店を訪れた妻の冬子により、神田が元々ゲイであることを知る。
今までの自分への態度や反応から、神田が自分のことを好きなのではと思い当たるのだが…。小さくても華やかに、棘が刺されば痛いけど、それでも愛しい野ばらのような二人の人生がそこにあります。
二人のその後をラブエピソード描き下ろしに加え、他2編のシリーズを収録した大ボリュームの一冊です!

子持ちモノにヨロメキがちなわたしなので、表紙絵を見て、表紙裏を読んで、即レジに持って行ったわたしの直感は外れてなかった。というか、直感以上だった。


ちょっと70年代っぽい少女マンガ風な、メルヘンチックでレトロな感じの絵と表現(キラキラ目とかハートっぽい口とか)にビックリしたものの、ストーリーは骨太な感じで、そのギャップにやられた。


“骨太な感じ”というのは――ストーリーがちゃちくない、途中で尻すぼみになったり破綻したりしていないという意味もある。


でもそれ以上にわたしが感じ入ったのが、“同性愛”を丁寧に描いている感じがしたところ。「BLだからファンタジーだしぃ」みたいな逃げやいい加減さがないような気がして、心の底から「いいなぁ」と思ってしまったのだった。


かといって、別にリアルなゲイを描いているわけではない(と思う)んだよなぁ……なんというかなぁ……「こういう恋愛、いいなぁ」みたいな気持ちを、すんなりと持てる感じというかなぁ……。でも決して、「これ、男×男じゃなくてもいいよね? 男×女でもいいんじゃない?」という風にも思わないし……。


――なかなかうまく言い表せない。精進します。


表題作が一番ボリュームがあり、子持ちの神田と武の関係が穏やかに進んでいくのを見守るのはなかなか楽しかったのだけど、わたしが好きなのは「みみクンシリーズ」。


女の子になりたくて、2丁目でバイトしながら手術代を貯めている“みみ”ことみつおが好きになったのは、“女”の姿も色も匂いもダメな薫。薫もみみのことが好きなのに、女の姿のみみをどうしても受け入れられないと知ったみみは、薫を失いたくなくて男の子のままでいることに決め、ネコなのにタチまでやって大奮闘。


これだけだと、「みみってけなげね」で終わりなのだが、みみが働くお店のママ・じゅんママに「あんたたちの関係はフェアじゃない」と指摘されてからの展開がとても良い。結論を言えばリバなんだがそれだけじゃなく、みみが女嫌いの薫に受け入れられたこと、薫が女の子っぽいみみを受け入れようとする姿に、ジーンとしてしまうのだ。


――ま、あんたどこまでおネエ攻めがスキなのか、って突っ込まれそうですけどね。つか、みみをおネエといっていいのかどうか、ちょっと自信ないんだけど。


もう一つの収録作品、「Lullaby of Bird land」も佳作。とにかくこの本、もう何度読み返しているかわからないよ!


雲田はるこさんはいいなぁ……と思っていて、ふと、「雲田はるこさんの『窓辺の君』もおネエ攻めが多いかも」と以前拍手コメントをいただいていたことを思い出した。


もちろん、「窓辺の君」も読んだとも!

窓辺の君 (MARBLE COMICS)窓辺の君 (MARBLE COMICS)
雲田 はるこ

ソフトライン 東京漫画社 2009-04-10
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美しい君に恋をした。「俺 せんせーに興味あって」…見ているだけで楽しくて、私の恋はそれで充分だった…はずなのに。「してやるから、もう喋るな」…30代半ば、ゲイであることを卑下している内向的な大学助手が明るくおバカで遊び慣れた大学生に片想い。ずっと憧れだった彼が突然目の前に現れ、外見と中身のギャップに愕然とした上に想像もつかなかった交流がはじまってしまった。「職業」「リーマン」「はじめて」「身分違い」などカタログ掲載の7編を収録。描き下ろしを含む待望のファーストコミックス。


なるほど……言葉遣いの柔らかい攻めが出てくるなぁ……。うーん、率直に申し上げて、残念ながら彼らはわたしの中では「おネエ」ではないの。が、この短編集も悪くない。


「野ばら」に比べたら、こちらの方がBLっぽい感じがするのはなぜなのかわからないのだけど、設定がいろいろ凝っていてめまぐるしく展開するからなのかしら。どうかしら。


この中では、最後の「だいだい色に溶けあう」が一番好き。これまで「聞こえない声」(京山あつき)や「同級生」(中村明日美子)で「青春、な感じがうまーく出てるなぁ!」と感動したけど、この作品は、同じ青春でも、ちょっと大人になった、大学卒業間際の学生の青春(細かい)


主人公たちの焦燥感やストーリーの切ない感じがたまらず、ちょっと泣きそうになった。「青春な感じがうまく出てる」ったって、その「青春」は、年を取った今、勝手にイメージしている「青春」ではあるけども。


雲田はるこさんはホントにいいなぁ!いいなぁ!と思いながら、ネットを徘徊していたら、ちょくちょくのぞいている行き付けのブログはもちろん、あちこちのブログでも取り上げられていて、


――みなさん、目利きというか早耳というか……。アンテナが鋭いなぁ……――


と改めて思わずに入られなかった。行き付けブログのレビューを見逃しているばかりか、今ごろ雲田作品を見つけて浮かれているわたしって……やっぱりわたしのマンガへの直感はまだまだみたい……。
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Tags: 雲田はるこ 複数レビュー

Comment 1

2011.03.17
Thu
00:30

lucinda #-

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拍手コメントRES

>02/23 14:24 Kさま

拍手コメント、いつもありがとうございます。
そして、超遅レスで申し訳ないです…

>ちゃんと同性愛の葛藤や焦燥をちゃらくなく描いてくれている感じがして
そうなんですよね。モヤッとしないんです。読後感もいいし。
切ないけど、幸せな気持ちになれる作品を描かれる方だなーと思います。

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