器用すぎ?な鳩村さん―「御曹司の口説き方」、「恋する男はいつも傲慢」、「伊達オトコな真田さん!」

 17,2010 00:27
なんだかこのごろ、鳩村衣杏さんの新刊が続けざまに出ていているような気がする。8月~9月にかけて、3冊……って、結構ハイペースじゃなかろうか。


鳩村さんは、新刊をチェックしている作家さんの一人ゆえ、書店で見かけたら大抵買っているのだけど――最新刊を読み終わって、「鳩村さんて、器用だなぁ……!」としみじみ感心してしまった。なんというか、物語の出来は一定の高さをキープしつつ、レーベルの特色もほんのり出しているというか。


あまりに感心したので、一気にレビューをアップすることにした。


まず、この新刊ラッシュで一番気に入っているのがこれ。

御曹司の口説き方 (ビーボーイノベルズ)御曹司の口説き方 (ビーボーイノベルズ)
鳩村 衣杏 高階 佑

リブレ出版 2010-08
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由緒正しい家柄の御曹司・千里は、幼なじみで、世界的大企業の跡取り・虎之介と犬猿の仲。そして昔から勇美という男を巡って争う恋のライバル!!ある日勇美が結婚すると聞き、二人は紳士協定を結び『結婚阻止計画』を立てることに…。そのため、なぜか虎之介に強引に同居を決められ、渋々同意した千里。だが、虎之介と一緒に過ごすうちに、まっすぐで大らかで愛情深い彼のことが一番気になり始めて!?傲慢な御曹司×クール美人御曹司の恋。


この作品、主人公の受け攻めの性格はもちろん、名前や家柄など、いろいろなことが対照的に設定されているのがすごく興味深い


そこそこ金持ちのようだが、それよりも元武家で元華族の名高い家名を受け継ぐ御曹司・千里と、どえらい金持ちで世界的企業を受け継ぐ御曹司・虎之介。金か名誉か、ってところですかね。


千里はストイックで生真面目だけど、虎之介は快楽主義的で大胆な感じ。どちらも「長男」ではあるものの、千里には姉が3人いる末っ子で、虎之介は弟が2人いる第一子。


名前に当てられている漢字、藪(千里の苗字)と之介も、「漢」(おとこ)をイメージさせる字面というか、男子がイキがって背中に背負ってみたがったり、学ランの裏に忍ばせたがる絵柄というか(古いか…)。大体、千里の名前も「虎千里を走る」にかけているのかと思うとちょっとニクい。


ともかく、あれこれが対照的に設定されていて、なおかつ、千里と虎之介の「とことん対等! ライバル上等!」な丁々発止のやりとりが、まあ、わたしのツボにハマることハマること!


こういう、お互いにギリギリと綱の両端を引っ張り合っている緊張感がありながら、テンポよく軽快に進んでいく物語は、モロにわたしの好みなんだよなぁ……。


それに、ゲイであることを家族に打ち明けられず、人知れず悩んでいた千里をやさしく励ますお祖母様とのやりとりも、じんわりと温かい気持ちにさせられた。


「御曹司」といっても、特に働かずとも贅沢に暮らしているBL的「御曹司」とは違い、仕事の一端がうかがわせられるところも、鳩村さんだからこそでしょう。いやぁー、鳩村センセイ、ええもん読ませてもらいました!……という気持ちでいっぱいなわたしなのだった。


この、BLのある意味王道なストーリー展開、そして「御曹司」ゆえかちょっと華やかな感じは、「リブレ」「BBN」って感じじゃなかろうか。高階佑さんの端正なイラストも、すごく作品に合っていると思う!


同じ「御曹司」でも、まったく雰囲気が違うのはこれ。

恋する男はいつも傲慢 (角川ルビー文庫)恋する男はいつも傲慢 (角川ルビー文庫)
鳩村 衣杏 高座 朗

角川書店(角川グループパブリッシング) 2010-09-01
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大手企業社長子息の隼人は、父親の命令で広告代理店でアルバイトをすることに。しかしその会社の社長は、痴漢に間違われた隼人をゲイの振りをしてキスして助けてくれた(!?)美形リーマンの友定だった!何の因果か彼の家に住み込みすることになった隼人だが、家事オンチで甘ったれな行動を、厳格な友定に叱られてばかり。おまけに指への刺激に弱いという最大の弱点を友定に知られ、そこを意地悪に責められてしまって…!?傲慢社長×御曹司のいけないラブ・レッスン。


はい、苦労したことのないボンボンが、傲慢だけど仕事のできる年上の男によって、仕事でも恋でも成長するという、こちらも王道なストーリー展開。


でも、「御曹司の口説き方」に比べて甘めで、ややエロ濃い目。年上のお兄さんに手取り足取りだもんなぁ……。その甘さや濃さが「ルビー」らしいという気がした


実はこの作品、裏表紙のあらすじを読んだときはピンと来ず、あまり期待していなかったのだけど、物語が進むにつれて引き込まれていった。それは、隼人がどんどん、成長していく姿に惹きつけられ、共感したということかもしれない。


ただ、物語前半の友定の言動や態度は、「こんなヤツが近くにいたらヤだなぁ……」と思ったけど。傲慢というか、意地が悪いのよ。


ところで、鳩村作品はキャラたちが生活のためにちゃんと仕事をしていることが多いし、細かな仕事シーンが挟まれることも多い。そこが、リーマン好き、日常的なシーン好きとしてはたまらない。


そしてストーリーが進むうちに、本当に受け、あるいは攻めが“仕事で成長している感”が読み取れるのがすごいと思うのだが、この作品も、例に漏れず。

伊達オトコな真田さん! (もえぎ文庫)伊達オトコな真田さん! (もえぎ文庫)
鳩村衣杏 kuren

学習研究社 2010-09-14
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就職氷河期の中なんとか就職した会社、(株)カタクラで営業部に配属された清正。上司は営業成績No.1の「真田さん」だと聞き、名前通り歴史好きな清正は「真田幸村みたいな、優しい人だといいな」と思っていた。しかし「真田さん」は華やかで自由(傍若無人ともいう)な、イメージ的には伊達政宗な男で…!?勝手に「小虎」と愛称をつけられつつ、必死で真田についていく清正だったが、ある日、なぜか強引にキスをされてしまい―。


「もえぎ」で鳩村さん!?――と、ちょっと意外だったのだけど、いやぁ……戦国武将の名前(とそのキャラ特性)をうまく絡めたリーマンものでした。しかも戦国武将の色づけをしたのも、担当編集者が「歴史物の編集部にいた」と聞いたからだそうで……(最初は、あの有名なゲームをモチーフにしたのかと思っていた)


「もえぎ」というレーベルに特にコレという印象はないのだけど、レーベルよりも、出版社「学研」の“お勉強”なイメージが強いのだけど、そのイメージがうっすらと、本当にかすかに、背後に漂っているような気がした


戦国武将をモチーフにしてはいても、攻めの「真田」の性格は伊達政宗っぽく、真田の同僚「伊達」は真田幸村っぽく――と捻ってあるところが良い。そして、「清正」という名前ゆえに、「小虎」とあだ名された清正が、型破りな真田に翻弄され、鍛えられ、やがて恋心に気付く――という展開は、もちろん悪くなかった。でもわたし、脇キャラたちの関係の方に妄想が働いてしまって――。


真田と伊達の関係を、過去に何かあったんじゃないかと勘ぐり(本当にただの下種の勘ぐりだったけど)、明らかに石田に興味津々の左近と石田の関係に想像を膨らませ、申し訳ないが、真田×小虎よりもこちらの方に萌えてしまったのだった。


それにしても――毎度感心してしまうのだが、鳩村さんは、いろんな業界のネタをお持ちだなぁ……。「御曹司…」はちらっとホテル業界、「恋する…」は広告代理店、「伊達オトコ…」はラーメンチェーン店と、どれも全然職種が違う。


自分がよく知る業界や職種が取り上げられていたら、「こんなのありえないー!」と思うこともあるのかもしれないが、今のところそういうことがないせいなのか、違和感なく読める。


しかも、「センセイ、今不調なのかなぁ……」と思わせるような大きなブレや波を感じさせないように、手堅く作品がまとめられているし、今回、立て続けに読んでレーベルの違いまで感じさせられたし。レーベルの違いは、編集者の手腕によるところかもしれないけど、どのレーベルでも同じ、という作家もいることを考えると、そこはやっぱり作家の実力も関係しているのではなかろうか。


「伊達オトコな真田さん!」のタイトルもじりじゃないけど、「器用すぎな鳩村さん!」(全然もじられてないし!)と、感慨に耽ってしまった。「器用」というか、職人的な感じがするんだよなぁ……。

新刊が出るたび、いつもどんな業界が登場するのかちょっと楽しみにしているのだけど、これから、レーベルの違いにも注目してみようかしら。
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Tags: 鳩村衣杏 高階佑 高座朗 kuren 複数レビュー

Comment 1

2010.09.27
Mon
23:44

lucinda #-

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09/21 21:57のAさま

おおー、Aさんは「恋する男…」がお気に入りなんですねぇ。そして確かに、鳩村さん、器用すぎるあまり無難…という印象はあるかもしれませんね。まあ、そんな中で、個人的ヒットは「御曹司…」でした。

凪良さんは、ブラック系とコメディ系できっちり分かれるところがすごいですよね。

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