よろめいた表紙絵を並べてみれば―「月夜の子守唄」(清白ミユキ)、「凍える月影」(いとう由貴)

 07,2010 23:43
BLにハマりたての頃はいざ知らず、お気に入りの作家が複数できてからは買い物も手堅くなってきて、作家買いでほぼ満足するようになってきた。


とはいえ結構な本が出されるので、ある意味、好きな作家を追いかけるだけでも買い物の金額にそれほど変化はないのだけど。


しかし時に、まるで雷に打たれたように表紙絵に魅入られて、フラフラとレジに持ち込んでしまう作品がある。まさに“表紙買い”。


そんな、久々の表紙買い作品がこれ。

月夜の子守歌 (リンクスロマンス)月夜の子守歌 (リンクスロマンス)
清白 ミユキ 朝南 かつみ

幻冬舎コミックス 2010-07
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幼少時に伝説ともいわれる盗賊に両親を殺された、元武家の子である葉山市之介は、仇を討つため、その盗賊を追っていた。久しぶりに江戸に戻ってきた市之介だったが、町で火事に遭遇してしまう。不審な火事が、追っている盗賊の仕業ではないかと疑いを持った市之介は、翌日現場で盗賊の痕跡を発見する。しかし、そこで鉢合わせた将軍直轄の若き長・後藤直之に疑われ、拘束されてしまい…。

この抑えた色味の渋さ! 交わされるまなざしの涼しさ! しかも時代モノっぽい様子に、10秒くらい迷って購入を決めた。ま、ほぼ即決ってことですね。


時代は江戸――と思っていたら、「機動衆」などという架空の組織が出てきたりして、どうやら“なんちゃって江戸時代”みたい。


両親の仇を討つため、盗賊・又吉を追い続ける市之介。その市之介と運命的に出会うのが、(なんちゃって)江戸の精鋭部隊の長・後藤数馬(なんだか裏表紙のあらすじでは、名前が「直之」となっているのはどうしたことかしらね。当初は直之だったのかな)


最初はお互いに敵意と不信感が剥き出しだったのが、少しずつ相手を認めて距離を縮め――というのはお約束。それはいいのだけど、市之介の逡巡を語る部分が丹念すぎてもどかしく、ちょっとイライラ。


逆に数馬が、市之介と打ち解けた辺りから急速に市之介に懐いていっちゃって、カワイイんだけど他愛なさすぎて物足りないような。


もうちょっと一揺れ欲しかったなぁ……と思いつつも、市之介と数馬の、機動衆の詰め所でのエロティックなシーンは、二人の切羽詰った切ない感じが出ていて印象的だった。


しかし、個人的にとても残念だったのが、物語途中に出てきた「アジト」という言葉。いやぁ、“なんちゃって江戸時代”だし、「アジト」って言葉はいかにも組織の隠れ家っぽいイメージだし、わかりやすいし――わかるんだけどさぁ……。


それでも読んでいて、頭の中の江戸の風景がガラガラと崩れてしまうような台無し感をかみしめた。うーん、どうして、どうして「アジト」をOKにしちゃったんだーッ!?


――という心の叫びを慰めてくれたのは、朝南かつみさんの美々しいイラストなのだった。口絵の、茶屋らしき店先での風景も、市之介と数馬の二人の関係性が窺えて微笑ましい。


全体的には「あともう少し」感が強かったのだけど、満足感はあったなぁ……と思いながら、ハッと気がついた。


――そういえば、以前買った表紙買いの作品も、朝南かつみさんで、時代モノじゃなかったっけ!?――


その作品とはこれ。

凍える月影 (プラチナ文庫)凍える月影 (プラチナ文庫)
いとう由貴 朝南かつみ

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縹国に使いとしてやってきた僧侶の月永は、世俗を離れた身でありながら、その美貌ゆえ国主・義康の寵愛を受けるようになる。だがそれこそが月永の謀略であった。月永は家族の仇を討つため、何も知らずに正道を歩む異母兄―義康を穢そうと身体を開いたのだ。義康を禁忌の関係に堕とし、国を滅するべく罠を仕掛けていく月永。だがそれは義康の中に眠る獣を目覚めさせてしまい…。

いやぁ……表紙裏のあらすじを読んで、「兄弟モノかぁ……」とかなり迷ったんだけども……。<近親相姦モノ苦手


表紙絵のドラマチックさには抗い難く、「でももしかしたら都合よく『実は兄弟じゃありませんでしたー!!』という展開になるかもしれない」などと淡い期待を胸に、読んでみたら――


――ガッツリ兄弟モノでした……。いや、“ガッツリ”という言葉は嘘でも誇張でもない。もう逃げ場がないほど、愛憎絡んだ兄弟モノだった


こちらも僧侶・月永が、無残に殺された母や祖父母の仇を討たんと、異母兄・義康に近づく。


途中、自分が義康に異母弟だと知られてからも、そのことを絶えず意識させるかのように、コトの最中に義康を「兄上」と呼び続ける月永の執念深さが怖い。


しかし最後、「異母弟を愛して何が悪い」とばかりに開き直った義康の胆の据わりっぷりも恐ろしかった。ああ、二人はそうして二人だけの世界に閉じこもり堕ちていくのね……。


月永の策略、月永や義康の周りの人間関係の丁寧な描写など、ストーリーは結構ツボだったのだけど、いかんせん、月永の「兄上」が目に入るたびに萎えるのは致し方なかったのが残念。自分の“萎え”を再確認。


月永の美しさが神秘的で、禁忌で耽美なムードのストーリーを、イラストがさらに盛り上げていたと思う。うーん、月永はまさに「傾国の美女」。縹国は傾かなかったけどさ。月永は男だけどさ。


そして「月夜の子守唄」でも思ったのだが、朝南さんの描くちょんまげや月代(さかやき)は、色気がある。これで月永が「兄上」を連呼しなければなぁ……<しつこい


朝南かつみさん、現代モノのイラストももちろん大好きなんだけど、時代モノだと、よりいっそうわたしの心は揺さぶられるみたい。これは、奈良絵のヤクザモノ以来のハマり方の予感。


朝南かつみさんの時代モノイラスト、見つけたら片っ端から買っていきそうだなぁ……。

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Tags: 朝南かつみ 清白ミユキ いとう由貴 歴史/時代BL 複数レビュー

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