やっぱり読んでおくか―非実在青少年◆読本&非実在青少年〈規制反対〉読本
29,2010 02:02
非実在青少年規制問題を取り上げたこんな本が出版されている。
出版されることは知っていたのだけど、出版時期が頭からすっかり抜け落ちていて、先日慌てて購入したわたし。本当にオマエはこの問題に関心があるのかって感じですね――ありますあります、ホントに!
どちらも同時期に出版されたムック本だから……というわけじゃないけど、ボリュームも値段もそっくり。そして執筆陣も一部かぶっている。でもまあ、その人たちはこの問題についてメディアで積極的に発言した人や、以前から根気よく都議会に働きかけていた人たちなので、これはある意味仕方ないというべきでしょうかね。
そしてどちらも、アンケートや一言コメントのような形で、マンガ家やアニメーター、作家、ゲームクリエイターといった多数のクリエイターたちが、「規制反対」を表明している。
ただ、方向性はちょっと違っていて、「非実在青少年読本」の方は、非実在青少年規制問題の概要やその問題点がさまざまな方向から説明され、マンガやアニメのあり方や、クリエイターのスタンスといったことが、クリエイター自身によって語られている。全般的に、この規制についてざっくり把握できそうな感じ。
対して「非実在青少年<規制反対>読本」は、この問題に対するクリエイターたちが大勢登場していて、それぞれの思いや、都議会や議員に陳情したレポートなどが中心になっている。喩えは悪いかもしれないが、規制反対決起集会の文集的雰囲気。
BL作家も多数登場しているのだけど、水戸泉さんや義月粧子さん、天城れのさん執筆の記事が2~8ページにも渡って収録されている「規制反対読本」の方が、BL作家の存在感が感じられるかも。
ところでこの問題については、ネットで関連記事を読んだり、Twitterを追ったりしてはいたけど、ずっと張り付いてウォッチしているわけではないので、取りこぼしていることがたくさんある。
それにどうやらわたしは、じっくり考えながら読んだり、注意深く読まなければいけない時は、ネットよりも“紙”の方が数倍頭に入りやすいタイプ。なので、この2冊を読んで、あらためて「なるほどねぇ」と唸ったことが多々あった。
特にビックリしたのは、この条例について都が2009年11月26日~12月10日まで募集したパブリックコメントが、開示請求されてもなかなか公開されなかったということ。
どうにかこうにか、5月になってようよう公開され、しかも公開されてみれば、1581通のうち、“部分的に賛成”の意見は60件ほどで、“完全に賛成”の意見は16件という、ほとんどが“規制反対”の意見だったというのだ
!
それなのにどうして条例を通そうとしていたのか? 大体、パブリックコメントを募集しておきながら開示請求にのらりくらりと応じないというのも――イミガワカラナイ!
そしてもう一つショックだったのが、この条例案が、都が直接表現を規制するのではなく、問題視されている性表現が描かれていないかどうかを、“自主規制”と“都民の監視”によってコントロールしようとしている、ということ。いざとなれば都は、「だってそれって、事業者や市民が自主的に決めたことですから~」と、逃れられるというわけ。
なんという狡猾さ! 例えば「チ●コが描かれてたらダメ」「抱き合っているシーンで乳首が描かれるのはアウト」などと都が決めたとしたら、それに対する疑問や反対の声に、都はいちいち答えくてはならないだろう。
だけど今回の条例案が施行されたとして、ある都民グループなどが「チ●コが描かれるのはけしからん!」と抗議活動したことで、その表現がNGになった場合、これに対して疑問や反対を唱えても、「んー、でもそれってあのグループがダメって決めたから、ウチらはそれを支援しただけなんですよね(ウチらがダメって決めたわけじゃないし)」と、都は言いぬけられるということなのかしら!?
なんだか、規制派と規制反対派のデスマッチで最終的に屍累々となった様子を、都がシレッと他人事のように眺めている――みたいな、うすら寒い光景をイメージしちゃった。それこそ、戦闘系のアニメやマンガによく出てくるようなシーン。具体的な作品名がとっさに出ないところは、わたしのオタク度のなまぬるい所以。
Twitterをはじめ、ネットで条例案についての情報を読んだ時もヤバい条例だと感じていたけど、この2冊を読んで、さらに・いっそう・ますます、ヤバいと思ったのだった。
わたしはこれまで政治的な活動全般に対しては、アレルギー的とでもいうべき拒絶反応を起こしていたのだけど、それでも浮き世で揉まれながら年を取って振り返ってみると、政治は数、数は力なんだと思い知らされることが多々あった。
「政治」と書いたけど、政治家センセイたちが奔走なさっている消費税アップや医療福祉問題のような行政に関わるものだけじゃなく、それこそ家庭や仕事といった日常生活を左右する、ささやかな決まりごとや力関係の意味も含めて、「数の力」を考えさせられるといいましょうか。
現在、Twitterでも、ひと頃よりも非実在青少年についてのポストは見かけなくなった。でも、常に少しでも頭に留めておいて、ここぞという時は行動しなくては……と思っている。大勢の人が行動したからこそ、とりあえず条例案は「否決」されたわけだしね。
腐にハマって、政治的な物思いに囚われるとはね。これこそ、まさかの事態だ、まったく。
出版されることは知っていたのだけど、出版時期が頭からすっかり抜け落ちていて、先日慌てて購入したわたし。本当にオマエはこの問題に関心があるのかって感じですね――ありますあります、ホントに!
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そしてどちらも、アンケートや一言コメントのような形で、マンガ家やアニメーター、作家、ゲームクリエイターといった多数のクリエイターたちが、「規制反対」を表明している。
ただ、方向性はちょっと違っていて、「非実在青少年読本」の方は、非実在青少年規制問題の概要やその問題点がさまざまな方向から説明され、マンガやアニメのあり方や、クリエイターのスタンスといったことが、クリエイター自身によって語られている。全般的に、この規制についてざっくり把握できそうな感じ。
対して「非実在青少年<規制反対>読本」は、この問題に対するクリエイターたちが大勢登場していて、それぞれの思いや、都議会や議員に陳情したレポートなどが中心になっている。喩えは悪いかもしれないが、規制反対決起集会の文集的雰囲気。
BL作家も多数登場しているのだけど、水戸泉さんや義月粧子さん、天城れのさん執筆の記事が2~8ページにも渡って収録されている「規制反対読本」の方が、BL作家の存在感が感じられるかも。
ところでこの問題については、ネットで関連記事を読んだり、Twitterを追ったりしてはいたけど、ずっと張り付いてウォッチしているわけではないので、取りこぼしていることがたくさんある。
それにどうやらわたしは、じっくり考えながら読んだり、注意深く読まなければいけない時は、ネットよりも“紙”の方が数倍頭に入りやすいタイプ。なので、この2冊を読んで、あらためて「なるほどねぇ」と唸ったことが多々あった。
特にビックリしたのは、この条例について都が2009年11月26日~12月10日まで募集したパブリックコメントが、開示請求されてもなかなか公開されなかったということ。
どうにかこうにか、5月になってようよう公開され、しかも公開されてみれば、1581通のうち、“部分的に賛成”の意見は60件ほどで、“完全に賛成”の意見は16件という、ほとんどが“規制反対”の意見だったというのだ
!
それなのにどうして条例を通そうとしていたのか? 大体、パブリックコメントを募集しておきながら開示請求にのらりくらりと応じないというのも――イミガワカラナイ!
そしてもう一つショックだったのが、この条例案が、都が直接表現を規制するのではなく、問題視されている性表現が描かれていないかどうかを、“自主規制”と“都民の監視”によってコントロールしようとしている、ということ。いざとなれば都は、「だってそれって、事業者や市民が自主的に決めたことですから~」と、逃れられるというわけ。
なんという狡猾さ! 例えば「チ●コが描かれてたらダメ」「抱き合っているシーンで乳首が描かれるのはアウト」などと都が決めたとしたら、それに対する疑問や反対の声に、都はいちいち答えくてはならないだろう。
だけど今回の条例案が施行されたとして、ある都民グループなどが「チ●コが描かれるのはけしからん!」と抗議活動したことで、その表現がNGになった場合、これに対して疑問や反対を唱えても、「んー、でもそれってあのグループがダメって決めたから、ウチらはそれを支援しただけなんですよね(ウチらがダメって決めたわけじゃないし)」と、都は言いぬけられるということなのかしら!?
なんだか、規制派と規制反対派のデスマッチで最終的に屍累々となった様子を、都がシレッと他人事のように眺めている――みたいな、うすら寒い光景をイメージしちゃった。それこそ、戦闘系のアニメやマンガによく出てくるようなシーン。具体的な作品名がとっさに出ないところは、わたしのオタク度のなまぬるい所以。
Twitterをはじめ、ネットで条例案についての情報を読んだ時もヤバい条例だと感じていたけど、この2冊を読んで、さらに・いっそう・ますます、ヤバいと思ったのだった。
わたしはこれまで政治的な活動全般に対しては、アレルギー的とでもいうべき拒絶反応を起こしていたのだけど、それでも浮き世で揉まれながら年を取って振り返ってみると、政治は数、数は力なんだと思い知らされることが多々あった。
「政治」と書いたけど、政治家センセイたちが奔走なさっている消費税アップや医療福祉問題のような行政に関わるものだけじゃなく、それこそ家庭や仕事といった日常生活を左右する、ささやかな決まりごとや力関係の意味も含めて、「数の力」を考えさせられるといいましょうか。
現在、Twitterでも、ひと頃よりも非実在青少年についてのポストは見かけなくなった。でも、常に少しでも頭に留めておいて、ここぞという時は行動しなくては……と思っている。大勢の人が行動したからこそ、とりあえず条例案は「否決」されたわけだしね。
腐にハマって、政治的な物思いに囚われるとはね。これこそ、まさかの事態だ、まったく。
