それはオトナの証?-「白雨」(真崎ひかる)、「水に眠る恋」(可南さらさ)

 07,2010 01:52
あれは2月のオフ会のこと。「アラフォー以上だからこそしみじみじんわりクるBL」として挙がった作品の一つが、「白雨」(真崎ひかる)だった。

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水沢那智の焼菓子店を、夜ひとり訪れる男の子。閉店間際にやってきては必ず「全部」買っていくその子の保護者として現れたのは、水沢のかつての恋人・加賀有隆だった。激しい雷雨にも似たあの日々、いとしさと不安をぶつけ合い、最後には水沢が裏切った恋人―八年前の面影を残しつつ穏やかに微笑む加賀の真意が見えず、心惑う水沢だったが…。

かつて恋人だった同級生同士の再会モノ。――と書くと、身も蓋もたもない感じだけど、確かに“年取った今だからこそ”、深く染み入るものがあった。


それは、高校時代の那智と有隆の焦燥感。これは私に限っていえば、高校時代が20年以上前の昔になって徐々に、「そういうものかもね……」とうなずけるようになった感情だと思う。


それまでは、うなずきつつもどこかで鬱陶しさを感じたり、「甘すぎなんじゃないの? ケッ!」と反感を感じたりしていた部分があったもの。


逆にいえば、自分が高校生の頃の生々しい記憶が薄れきり、若さがまぶしく、かつ懐かしく感じられるようになった=年取ったという証拠なのかもしれないですね。


しかし、家柄違いの恋、幸薄い家庭環境、肉親の反対、成人してからの再会と関係復活――って、いやぁ、メロドラマやねぇ……徹底してるわぁ……と感心していたら。


なんと「白雨」読了後ほどなくして、よく似た設定の作品を偶然にも手にしてしまったのだ。それは、「水に眠る恋」(可南さらさ)

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仕事で大学病院を訪れた上原尚哉は、高校時代の同級生で外科医になっていた久住廉との再会に狼狽する。なぜなら、かつて心を通わせながらも、ある事情で尚哉が裏切り、別れた相手だったからだ。久住は屈託なく接してきたが、二人きりになると態度を豹変させ、脅すように「償い」を求める。身体を差し出せ、と ―。別れてからも久住を想い続けていた尚哉は、心を痛ませながら応じるが…。甘苦しいセクシャルラブ、全編書き下ろしで登場。

かつて想い合っていた同級生同志の偶然の再会&復活愛――って、流れは「白雨」とよく似ている。


読んでいるうちにどうしても比較してみたくて、思わず唸った共通点をピックアップしてみました。ここから折りたたみます。


念のためにお断りしておきますが、共通点を挙げてどっちがどっちのパクリだとかコピーだとか言いたいわけでは、決してありません(コピーやパクリだと思ったら、ヤバさを感じてこんな風に取り上げられない)。共通点がある!と興奮して比較したくなった、管理人の超自己満足比較なので、くれぐれも誤解なさらないようにお願いいたします。
★攻めのキャラクターとそのバックグラウンド★
■白雨…加賀有隆。有名電子機器メーカー・加賀電機の跡取り息子。

しかし父親には外に愛人が何人もあり、自分の母親も、父親の正妻ではないらしい。そんな父と家に反発していたが、成人後は後を継いでいる模様。

■水に…久住廉。町で一番大きな総合病院の跡取り息子。しかし両親は不仲で、母親からはプライドと体面を保つためいろいろ抑圧されていた様子。

そんな母親や家に反発していたが、成人後は医師に。でも実家は継ぐ気はないみたい。

⇒どっちもお家は裕福なんだけど、ちょっと家庭が寂しい感じ。親に反発し、同級生の中にあっては近寄りがたい雰囲気、というのも似ている。


★受けのキャラクターとそのバックグラウンド★
■白雨…水沢那智。父親不明。いつまでも若く男が途切れない、ホステスをしている母親は、育児放棄の果てに男とトンズラ。食べていくためにアルバイトをせねばならないほど貧乏。

高校中退し、成人後は焼き菓子店を経営。

■水に…上原尚哉。父親は家族を捨てて工場の金を持ち逃げした挙げ句借金を残し、若い女とトンズラ。病身の母親と幼い妹を抱え、家計のためにアルバイトをしなければならないほど貧乏。

高校を中退し、成人後は空調設備会社に勤務。

⇒こちらもどこか逸脱している家族がいるんだけど、尚哉の方は、仲の良い母と妹がいるのが救い? 裏返せばそれゆえに束縛されることもあるけれども。


★二人が出会った時期
■白雨…高校3年の7月
■水に…高校3年の6月

⇒どっちも高3かぁ……。


★二人が別れた時期★
■白雨…高校3年の夏休みが終わる2週間前
■水に…高校3年の夏休みが終わりかけた頃

⇒ひと夏の恋ですね、ある意味。


★二人の仲を裂こうとした人たち★
■白雨…有隆の父親。那智の母親に、手切れ金を支払う代わりに息子同士を別れさせることを持ちかけた。那智母はその金を受け取り、あろうことかそれを持って男と行方をくらませた。

■水に…久住の母親。尚哉に500万を支払う代わりに、姿を消してほしいと持ちかけた。

⇒「白雨」は父親、「水…」は母親。この違いも興味深いような。


★二人が別れた経緯とシチュ★
■白雨…母に捨てられた那智と、自分の無力さに打ちひしがれていた有隆は、一緒に死のうと話し合うが、正気に戻った那智が有隆の将来を考え、黙って身を引いた。

死に場所を得るために、待ち合わせていた駅に那智は行かず、有隆は待ちぼうけ。

■水に…久住母が鬼気迫る顔で「息子を殺すしかない」と言ったため、久住を死なせたくない尚哉は、黙って身を引いた。

久住の叔父が経営している牧場に行こうと待ち合わせていた駅に尚哉が行かず、久住は待ちぼうけ。

⇒受けちゃんはとってもけなげなのよね。でも“裏切る”のはどちらも受けの方。そして待ちぼうけをくらった攻め様たちは、どちらも激怒しております。久住なんて、再会した時まで怒っていたものねぇ……なんて粘着質な


★二人が再会した年★
■白雨…8年後。ってことは26歳?
■水に…9年後。ってことは27歳?

⇒ちょっとこの年齢が、やや不満。もう少し、せめて30代だったらもっと萌えたのに~!<ただの個人的萌え


★再会後の復縁のきっかけ★
■白雨…有隆が那智を誘い、強引に口説いた
■水に…久住が尚哉を誘い、強引に関係した

⇒そりゃ、攻めから働きかけてこそのメロドラマでしょう。


――興味深いわぁ……<自己満足の極地。流れはよく似ていると思っていたけど、ディテールもちょこちょこ似ていて、だから余計に比較してみたくなったのだと思う。

だけど何度も比較読みしているうちに、逆に今度は両作品の違いの面白さに、なるほどねぇ……と感心したのだ。


「白雨」はどちらかというと、高校時代の那智と有隆の激しい恋がメイン。でも再会した後は、穏やかな関係を築いていく。


しかし「水に眠る恋」は、確かに尚哉と久住の関係は高校時代に始まるものの、メインは大人になって再会してから。高校時代の関係は淡く、再会後はひたすら激しく濃い。


高校時代の、「白雨」のような激しい恋と焦燥感も「そうねぇ……」とうなずけるし、「水に…」のような淡い恋心も「わかるわぁ……」と共感できる。


どっちにしても、すごくドラマチックな恋が展開されているというのに、“ウットリ”よりは“しんみり”してしまう感じ。「あの頃は、若かったからさー」的な感慨に耽るといいましょうか。


おまけに、「水に…」の尚哉と久住がようやくお互いの誤解を解いて穏やかに幸せになるのかと思いきや、今度は尚哉の母親と妹が、尚哉の恋に大反対。家族の間柄が悪くないからこそふりほどけない束縛感や、振り切ったらたちまち襲ってきそうな後ろめたさが、これまた身に覚えがありすぎてため息とともにしみじみしてしまうのだ。


――もう完全におばちゃんモードに入ってるよね。それも“枯れてる”おばちゃんモード。こんなことでいいのかしら……と、BLを読んでわが身を省みるわたし。


そうそう、両作品の表紙絵は、どっちも「後ろから抱っこ」なんだけど、「白雨」は攻めの有隆が受けの那智を抱き、まるで有隆の執着を表しているような。


しかし「水の…」は受けの尚哉が攻めの久住を抱いていて、なんだか尚哉が久住を優しく思いやっているようにも見える。


「攻め」と「受け」のイメージにとらわれているから、こんな風に見えるのかしら……と思わなくもない、リバ好きなはずのわたし。うーむ……?


――ともかくどちらの作品も、読んでしんみりしてしまったら、ひょっとしてオトナの証なのかもよ?
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Tags: 真崎ひかる 可南さらさ 陵クミコ 円陣闇丸 2作品比較 複数レビュー

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