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花に舞う鬼(東芙美子)

 04,2010 01:04
一体、どこのBLよ!? ――という感想に惹かれて手に取った本。昭和後期の歌舞伎の世界が舞台。内容紹介に、

美貌にも才能にも恵まれた4人が繰り広げる愛憎物語

とあって、これが期待せずにいられようか!(いや、いられない<反語

花に舞う鬼花に舞う鬼

文藝春秋 2005-03
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歌舞伎の名門に生まれた年子の兄弟ふたりと、女形として大成することを宿命づけられた美少年、天才肌の風雲児。美貌にも才能にも恵まれた4人が繰り広げる愛憎物語。美男の血したたる名門三代にわたる歌舞伎グランド・ロマン!

主要キャラは4人。癇が強くて傲慢な、しかし天才肌の歌舞伎役者(立役)・凱史(やすふみ)。日舞の風間流宗家の跡取り・蛍一郎と、その弟で人気歌舞伎役者(女形から立役へ)の京二郎。そして、大女形の名跡・藤村蘭寿郎を継ぐ、女形・瑛(あきら)。いずれも水も滴る美男。

――ここらへん、美形ばかりが登場するというのがBLっぽいといえばいえるし、「名門」とか「歌舞伎役者」とか「金持ち」とかいう華々しいお膳立ても、BLの十分条件を満たしているともいえる。

でも――読んでいてちょっと混乱してしまった、というか気が散ってしまったのが残念。最初は、いきなり蘭寿郎の部屋子にさせられ、まるで「ガラスの仮面」ばりに、蛍一郎によって女形への猛特訓を重ねる瑛がメインキャラなのかと思っていたのだが、そうでもなく――

蘭寿郎の芸養子となった京二郎の屈折と、瑛への嫉妬がメインになるかと思えば、それもかわされ――

どうやら、凱史と蛍一郎の愛憎絡まる関係がメインらしいと気づいたのは、物語がだいぶ進んだころ。そして、凱史の、蛍一郎へのなみなみならぬ執着の理由が明かされるのが最後の最後。凱史5歳のみぎり、赤ん坊の蛍一郎を「こいつこそが俺の相手役」と見初めたのが、二人の因縁の始まりだったらしい。

――もしかしたらこの告白と回想の場面、ものすごく感じ入るところだったのかもしれないけれど、正直に打ち明けると、呆れちまってなんだかなぁ……と思ってしまった。

そんな子どもの頃の強い思い込みゆえに蛍一郎を抱き続け、妻の清香と蛍一郎を“共有”し、蛍一郎の恋人を追い払ったのかよ……と思ったり思わなかったり。

まあ、それこそが著者のいう「役者の地獄」なのかもしれないし、とどのつまり、凱史の強い思い込みと無念さに、わたしは最後まで共感できなかったということなんだと思う。

物語の中で、凱史と蛍一郎の爛れ気味な関係、瑛の蛍一郎への切ない恋慕、京二郎の蛍一郎への特別な思い、凱史と彼の幼なじみで悪友の神崎との関係と、いくつもの“ちょっと深い男同士の関係”(※肉体関係の有無を含まず)が描かれていて、その意味では、“BL的”だといえると思う。

でも、“BL的”というには、女性キャラを巻き込んであまりにドロドロしている感じが、“レディコミ的”のような気がしないでもない。女性キャラの扱いがちょっとぞんざいではあるけども。

ただし、「ああ、そういう人間の業って、わかるわぁ……」という共感を感じられなかったという点では、“BL的”であろうと“レディコミ的”であろうと、“現実感の薄いファンタジー”という感じではあった。

いや、地味な庶民のわたしだからこそ現実感が薄いだけで、役者の世界を知っている人には、多少なりともリアリティを感じられるものなのかもしれないけれどね。

ところで、この作品を読み終わった後、まっさきに思ったのは、

――蛍一郎、ジルベールじゃない!?――

ということだった。そう、「風と木の詩」のヒロイン(?)、ジルベールですよ!

感性に優れ、感受性が豊かで、美しく、ひたすら愛される人。凱史はもちろん、弟子の瑛にからも、弟の京二郎からも恋い慕われる存在。BL的にいえば“魔性の受け”に決定。

そうなると、凱史は傲慢な“俺様な攻め”ですね。個人的には、こういうキャラこそ受けであってほしいんだけど……ま、いいや。

瑛は、“芯の強い、けなげな受け”。個人的には、こういうキャラは攻めでもいい。それはさておき、瑛を主人公にしたら、きっとガラカメみたいな物語になっていただろうと密かに確信。

京二郎はどっちでもイケそうだけど、何となく、“屈折した受け”かな。というかさ、“恋愛も芸の肥やし”とか言いながら、本当の恋をしたことがない“名優”京二郎って、気になるキャラだ。脳内で完結してるタイプなのかしら?

全体的に、悪くはないけど、どこか物足りないような、釈然としないような読後感――これ、遠野春日さんとか、和泉桂さんとかが書いていたらどうなんだろう? BL的けれんみが増して、また全然違う読後感になるだろうなぁ……と、内心、思わずにはいられないのだった。
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Tags: 東芙美子

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