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ウソくささのないニセモノ

 14,2006 23:32
乱菊さんのこの日のブログ「愛あればこそ」を読んでいて、塩野七生のエッセイの一節が、ぼんやりと思い出された。ずっと気になっていたものの、なかなか確認できないままでいたのだが、ようやく調べてみたら、こういうことだった。


ベスト・セラーにならなくてもよいが(なるにこしたことはないが)誰にも読まれないものを書いて満足しているほど私は傲慢ではない。というわけで、それならいっそのこと、ありもしない史料をでっちあげるか、となった。だが、実際にこの作業に取りかかってみるや、たちまち悲鳴をあげた。
 史料ではない。しかし、たとえ史料であったとしてもおかしくないほどの真実性をそなえた偽史料をつくることが、いかにむずかしいかを痛感したからである。あらゆる真史料を調べる必要があった。それらをもとにして偽作者を設定し、その人物が持つであろう偏見まで考え出さねばならないのだから、これならよほど、実際に存在する史料をそのまま翻訳したほうが楽だ、と思ったくらいである。
(塩野七生「サイレント・マイノリティ」より「偽物づくりの告白」新潮文庫P222~P223)


塩野七生が、上記のような苦労をした作品は、「神の代理人」(中公文庫)の中の「アレッサンドロ6世とサヴォナローラ」。アレッサンドロ6世(在位1492-1503)は、かの悪名高いボルジア家出身。法王就任後は重要ポストを親族で固めたとか、息子のチェーザレが暴君だったとか、娘のルクレツィアとは近親相姦の関係にあったとか、そもそも聖職者のくせに子どもや愛人がいるってどういうことよ?とか、いろいろいろいろ言われているが、非常に政治的能力の高い法皇だったようだ。その彼の才能が見事に発揮された事柄のひとつが、フィレンツェで神権政治を行った、修道士・サヴォナローラとの対決。歴史的な事実だけいえば、以下の通り。

――狂信的ともいえるサヴォナローラを、アレッサンドロ6世が破門し、その後、サヴォナローラはフィレンツェ市民によって火刑に処せられた――

だがこの過程を、「ルネサンスといえばレオナルド・ダ・ヴィンチやミケランジェロ、ラファエロ。あとはヴィーナスのボッティチェリか?」(全員美術家か…)ぐらいしか認識のない日本の読者に、「おもしれー!」と食いつかせるために――いえ、興味を持たせて読ませるために、考え出された手法が、法皇に仕える、架空の秘書官・フロリドの手記。上記の引用部分の苦労は、このフロリドの手記の信憑性を読者に信じ込ませるための苦労というわけだ。フロリドの視点は、すなわち塩野七生の視点なのだが、フロリドは15世紀末~16世紀初頭の人物。当時の時代背景はもちろんだが、生活習慣や風俗、法皇庁の様子も考慮しなくては、すぐにでっちあげだとバレてしまう。


実際は、真史料ばかり使っていた頃よりはよほど勉強しているのだが、偽史料づくりに費やす労力は、なんと言っても日陰者であるのは至極当然だからだ。(P225)

これこれ、この一節が、パロディ(二次創作作品)を作る苦労を連想させたのだった。

オリジナル作品の特徴や作風、読者が共通して持つ作品イメージを維持しつつ、それに違和感を感じさせることなく自分の妄想を発展・発達させていかないと、パロディにはならない。妄想は人の数だけあるので、パロディのはずなのに、まったく関係なさそうな作品になっているものもあるけど、そういう作品が支持されることは、そう多くないんじゃないかと思う。

たとえば「トッ●ュー!!」だと、たった今、急に考えてみたのだけど、

・何よりも「救助第一」な姿勢
・スペシャリストの中のスペシャリストを目指すストイシズム
・隊員同士の信頼感と結束力、そしてライバル意識

というような雰囲気やイメージが感じられる方が、パロディとして楽しめるんじゃなかろうか。

そして、そんな雰囲気を感じさせつつ、

・羽田基地や登場人物たちの自宅を拠点とした移動距離感
・作品舞台周辺の風景描写
・救助要請の際など、業界用語や専門用語とそのセリフまわし
・登場人物たちの好みや言いまわしのクセ
(これも急場でかんがえてみたんだけど、もうこれ以上思い浮かばない…すでにここで力不足)

といったような細かいところで、読者にウソくささを感じさせないようにしなければならないだろう。つまりは、オリジナル作品のイタコをやりつつ、自分の思いや気持ちを形にしないといけないわけで――ああ、考えただけで脳みそがケムリになりそう。

ホント、オリジナル作品への愛がないと、これはムリ。やっぱり、パロディを作るのは生半可なことじゃないよ、まったく。

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Tags: 二次創作 塩野七生

Comment - 2

2006.10.17
Tue
22:36

乱菊 #pMXl.iIs

URL

塩野七生さんと並べられると激しく気恥ずかしいのですが・・・まあ言いたいことは同じでしょうか。
扱っている内容に天地の差はありますが(;´Д`)

まあどこまで拘るかは書き手によるんだと思うのですが、あまりに書き込みが甘いと読んでてハラたちますからね(笑)
なら自分のオリジナルをかけよ!って。
だから「トッ●ュー!!」なんて大変ですよ。
原作自体がすごい取材を重ねた上で描かれているのに、それのパロは難しそう。
まあ絵と文じゃ多少事情は変わると思うのですが、どちらにしても大変ですよう。
でも楽しいのも事実なので、やはりしんどい作業でもやめられない人が多いんでしょうねぇ~。
すごーくすごーくその世界に浸れますからね☆

編集 | 返信 | 
2006.10.18
Wed
19:02

lucinda #-

URL

そうそう。パロディのハズじゃないのかよ!? と思うものって、ありますよね。パラレルとも違う、というような。
しかし、すごくよくできたパロディは、読む方も満足感が高い。
もう一度、オリジナルを読みたくなりますしね。
そういう作品を作れる人は、ほんとにすごいなぁと思います。

塩野七生の作品、モノによって、やおいの匂いがするものがありますよね(笑)。

編集 | 返信 | 

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