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最果ての空 (英田サキ)

 29,2009 13:35
思えば、わたしが初めて手にした商業BL作品は「エス」だった。

あれを読んだ衝撃と驚きは、今でも覚えている。誤解を恐れずに言うと、「BLなのに、こんな面白いの!?」という感じで――もしも、最初に読んだ作品が「エス」じゃなかったら、ここまでBL本を買っていなかったかもしれないし、BL本にハマる時期はズレたかもしれない。

その「エス」が完結し、シリーズ作品の「デコイ」も堪能し、しかし、どこか幸せから遠くて気になっていた登場人物――義兄の篠塚が主人公の作品だと聞けば、これが期待せずにいられようか?

※レビューには、ネタバレも含みますのでご注意ください。


最果ての空 (shyノベルズ)最果ての空 (shyノベルズ)
奈良 千春

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警視庁公安部外事第一課第四係の刑事であり、ウラに属する江波郁彦は、ある日、秘匿追尾していた男に尾行を見破られるという失敗をおかしてしまう。そしてその日、上司に呼び出された江波は、そこで警視正、篠塚英之からある事件の班員に指名される。篠塚は若くして公安部部長に次ぐ地位にあり、一見穏和だが常に冷静で、なにを考えているのかわからない男だ。江波はある事実から篠塚に反抗にも似た感情を持っており…!?事件にはできない事件を追う、男たちの静かな闘いの物語。

あとがきにも書かれていたけど、篠塚はまさに「失い続ける男」なんだよね。

妻子を失い、義弟を宗近に持っていかれ、部下の泰原も火野に持っていかれ――彼が大切にしているものは、すべて遠ざかってしまう。

気の毒な……と思いつつも、でも義兄はあんまり男に堕ちそうにないよなぁ……というか、色恋沙汰に足を捕われない雰囲気だと感じていた。しかし“BL”だから、そんな清廉居士こを色欲にまみれさせられちゃうのかしら――と思っていたのだが。

――なるほど、そうきたか……。と読み終わって、心から深く納得したのだった。英田さんは、自分が生み出したキャラたちを、キャラ自身が願う方向へ動かしているんだなぁ、と感心させられたといいましょうか。

今回、篠塚の近くにいて、共に事件を追うのは江波。ゲイで、知らない間に、追っていたロシアの大物スパイ・バラニコフの身内だった井澤とつきあっていた。

井澤がバラニコフの身内であり、協力者かもしれないと気づいたのは、篠塚。それも、バラニコフを追っていた江波たち捜査官の前に井澤が通りかかったという報告を受けただけで、「もしかして……」と気づいたなんてね。さすが、有能な人は違います。

さらに篠塚は、江波に井澤から離れることを求めるけれど、江波がゲイであることは、まったく頓着しない。そりゃ、愛する義弟が男とひっついてるもんねぇ……と、読んでいるこっちは思うけれど、江波にしてみれば、警察というガチガチの組織の中で、篠塚のような振る舞いが新鮮に思えたのは、無理はないと思う。

江波は急速に篠塚に惹かれていくが、篠塚はやんわりと拒絶する。

「ひとりで生きていくのは寂しいでしょう?」という江波の問いかけに、「寂しくない人生など果たしてあるのだろうか」と、心の中で問い書ける篠塚

追いすがる江波に、「寂しいと思いながらも、ひとりで生きていくことを選んでいる」と答える篠塚

――ううう、義兄は、篠塚は、やっぱりそういう人だよね! 自己完結している風ではあるけれど、苦悩を表に出さず、傍目には高潔に生きていく人よ……!

同時に、篠塚が妻子を失ってからのキャリアが明かされているので、ますますます! 篠塚の孤高の歩みに説得力があった気がする。

とはいえ、篠塚は江波の気持ちを、きわどいところで受け入れなかった感じ。最後のキスシーンは、本当に切なく、でもこれほど「あ、このあとエッチはないね」と思わせるキスシーンはなかったと思う。

さて、江波の切ない恋情は綴られているものの、篠塚はテクテクと一人で歩いて愛欲にまみれないおかげで、ストーリーは、バラニコフを追う公安警察官たちや、警察組織で上を目指そうとする男たちの描写の比重が重い。「働く男好き」にはたまらない構成。

バラニコフを取り巻く背景や、バラニコフを捕らえる瞬間の緊張感も捨てがたいけど、江波の兄で篠塚の同期でもある神津が失脚し、警察を去るラストは、組織の無情さが感じられて、しんみりとしてしまった。

なんだかこう、仕事に生きる男たちの、物思いを抱えた日常の断片を堪能させていただきました――という感じの一冊、かな。派手さや過激なエロシーンはないので、BLじゃないという批判もむべなるかな、と思わないでもない。

それでも、江波の篠塚への切なさいっぱいの気持ち、そして、神津の篠塚への微妙な気持ち――これがしっかり描かれているという点では、“BL的”といえるんじゃないかな……って、それは甘すぎますか。

そうそう、数少ないエッチシーンでは、江波と井澤のリバシーンがサラリと描かれているのに感動した! 小説ではこのくらいが限度なんでしょうか……リバ好きとしては、もっと書いてほしいんだけども。

これで「エス」シリーズは完結か……一ファンとしても、感無量だ。まあ、椎葉や宗近も元気そうではあるし、寂しいけど、ここで見送るしかないよね――って、何だか篠塚が乗り移ったような気持ちで、何度も作品を読み返すわたしなのだった。<しつこい。全然篠塚じゃない

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Tags: 英田サキ 奈良千春 警検麻ヤ

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