君を抱いて昼夜に恋す(久我有加)

 01,2009 16:09
わたしが歴史/時代モノ好きなのは、ここに来て下さる皆さんは十分ご存知だと思うのだけど、今回また、「いいじゃ~ん!」と思う時代小説系BLを読んだ。

君を抱いて昼夜に恋す (新書館ディアプラス文庫 226)君を抱いて昼夜に恋す (新書館ディアプラス文庫 226)
麻々原 絵里依

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彫師の八束は、付近を預かる博徒の口利きで男をひとり預かることになる。最初の晩、男、源太は唐突に夜這いをかけてくる。その手に熱を上げつつも「抱くなら彫らんぞ」と告げると源太は引き下がったが、実のところ八束の心にこそ彫りたいという欲が生まれていた。だが美しいが情がないと亡き師に評された己の彫り物では、源太の野性に喰われてしまう。葛藤する八束は……? 博打打ち×彫師の大正任侠ロマンス。

博徒、彫師ってところが、ちょっとロマンを感じさせて“大正時代”という設定にピッタリ。そしてもう一つグッときたのが、“古い”大阪弁。

久我さんの作品の大阪弁は、そこで生活している人の息遣いが聞こえてきそうですごく好きなんだけど、この作品の中でキャラたちがしゃべる大阪弁は、息遣いプラス、作品背景が大正時代なんだ、現代じゃないんだ、ということを感じさせてくれる効果もあったと思う。

こういう方言のこだわり、いいなぁ……。

源太の不遜なまでの肝の据わり方はいかにも博打打ちらしく、それが攻め攻めしくていい。八束のツンデレな気の強さと色っぽさは、久我作品ではおなじみかも。

でもね――この二人もいいんだけど、それよりも惹かれたのが、源太が所属する織間屋の若頭・与助と、やくざの親分・忠五郎なのだ!

与助は過去、人を殺した罪で刑務所に入っていたのだが、どうやらそれは、忠五郎をかばっての所業だったらしく、忠五郎は与助のその刑期が明けるころ、八束の師匠に彫り物をしてもらいながら、与助を待っていたという。

「~という」って書いたのは、これが忠五郎と与助の会話と、八束や源太の想像でのみ描かれていて、読者はそこから想像するしかないから。

忠五郎は与助を大事に思っていて、府議選に出馬する前に、与助を手に入れたいと迎えにきたのだが、結局、与助は織間屋に残り、忠五郎に別れを告げる。「博徒とやくざの喧嘩に、政治家先生が首を突っ込むな」と突き放して。

忠五郎は40目前で、整った顔立ちではないけれど、馴染みのお茶屋のおかみに「色悪」と評されていた、“山を思わせる”男。

対して与助は30半ばで、ガッチリした体格で貫禄たっぷりの、異形の者が棲む底知れない“海を思わせる”男。

――うわー、なんかこう、オヤジ&ガチムチな感じなのもいいじゃん!<アホ全開 もう、めちゃくちゃ妄想を刺激されるんですけど!? イラストでは、与助、華奢だったのが残念だったなぁ……。

こういうわけで、主役二人はそっちのけで、おっさんたちに激萌えしていたのだった。そうそう、郭で支払いができない客の金策に同行する「附馬(つきうま)」を生業とする鉄次郎も、気になるキャラだ。ま、どっちにしても脇キャラだけど。

博徒ややくざの成り立ちや、孤児の八束を取り巻いていた環境、彫師の仕事ぶりなど、久我さんはかなりいろいろ資料を当たられたんだろうなぁ……と思う。

物語の滑り出しは、ちょっと硬さを感じたけれど、魅力的な脇キャラもたくさん登場して、「アウトローたちの大正時代」の雰囲気を存分に味わえる感じ。

続きでもいいし、スピンオフでもいいから、何かまたこの素材で書いていただきたいなぁと、心の底から渇望してしまったのだった。

もちろん、忠五郎と与助が主役の話だったら諸手を挙げて大歓迎だけどさ。
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Tags: 久我有加 麻々原絵里依 歴史/時代BL 警検麻ヤ

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