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「主治医の采配」(水無月さらら)

 11,2009 23:29
アラブものにはどうも食指が動かないけれど、好きな作家が書いたとか、ちょっと捻りが効いているみたいだとか、付加価値的なものが感じられると、読んでみようかなと気持ちがムクムクと湧いてくる。

この作品は、「捻りが効いているみたい」だと思われた作品。あちこちのブログで紹介されていて、めちゃくちゃ興味を持っていたのだ。

ネタバレを含むのでおりたたみます。
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小山田あみ

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新婚旅行中に、突然砂漠の王に拉致され性奴隷にされた3年間。生還はしたけれど、将来を嘱望されていた有能な弁護士・夏目礼一郎は、下半身の自由を奪われ生きる気力さえ失っていた。その主治医についたのは、高校時代の同級生・上條晴隆だ。心は性欲を認めないのに、診察されるだけで反応する体と折り合いがつかない礼一郎。そんな自ら治療を拒む患者を、内心持て余す晴隆だったが…。

たしかにこれは、そこら辺で見かける“お気楽アラブ”とはかなり毛色が違う。何しろ、夏目は砂漠の王に可愛がられていたものの、王に心を許せず、自分が同性愛者であることを認められず、心に深い傷を負って日本に帰ってくるのだ。まあねぇ、

いきなり拉致→オークションで競り落とし→むりやり男の愛人

なんて展開、そう簡単には受け入れられないよなぁ……現実的には。そりゃあ、髪はすべて白髪になっちゃうのも無理はないなぁ、と納得してしまう。

そう考えながら、似たような経路をたどっても王とラブラブな関係になってしまうその他大勢のアラブものストーリーを改めて眺めると、能天気さが目に沁みてイタい。

こういう捻りのあるプロットはいいなぁと思うのだけど、しかしこの作品、読み進むにつれて突っ込みどころがいたるところに埋まっていて、心の中で何度、「おい!」とか「あちゃー!」とか叫んだことか。

作品の詳しい説明や素晴らしいレビューは、ほかのブログにすでにアップされているので、ワタクシ、内心大いにツッコんだ箇所をピックアップしていきたいと思います。

あ、もちろん、「拉致されてオークションにかけられて性奴隷にされて貞操帯をつけられていた」ってシチュエーションもツッコミどころ満載だけど、それ以外、ということで。

1.夏目が香港のホテルのエレベーターで拉致されるシーン
⇒犯人は確定されていないが、怪しいのはインド人の混血のベルボーイ。出たな、怪しいインド人

2.夏目が砂漠の王国の内乱により、王妃から逃がされるシーン
⇒塔が崩壊するとか、爆音が聞こえるとか、かなり大変。これだけ規模が大きかったら世界的なニュースになるだろうに、なんだかお伽噺の絵空事みたいな雰囲気。

大体、砂漠の王の宗教については「ホモ・セクシュアルを禁忌とする宗教」とぼかされているのに、王国の描写に「モスク」が登場しているのも、あれ~?という感じ。宗教名は、バレバレでもボカすもんなんでしょうか、アラブものとしては?

3.看護士の沢田が夏目のことを、白髪のせいで老人だと思っているらしいシーン
⇒コラ、いくら若くてペーペーだからって、担当する患者の基本的なデータが頭に入っていないのか、沢田!

4.イギリス人・ハウプトンが中国人の鍼灸医・ラウを伴って病室を訪れるシーン
⇒このラウは香港の九龍に住んでいて、人間業とは思えない鍼の使い手という設定。拉致された夏目の体に鍼を仕込んで、夏目の両足の膝下に力が入らないようにしたという。またしても出たな、謎の中国人! もーう、そういうフシギ設定に「中国四千年」を持ってくるところ、お約束よね!

でも、夏目がエレベーター内で拉致され、オークションにかけられるまでの間に鍼は仕込まれたようなのだけど、一体夏目は、拉致からオークションまでどのくらい意識を失っていたんだ?

5.ハウプトンのコスい取引がきっかけで、夏目が左足から鍼を抜くことを拒否するシーン
⇒「僕は少し不自由なところがあって、ちょうどいい人間なのかもしれない」って、その言葉を口にした背景はわかるけどさ……。でも治せるものを治さずにいるその姿に、かすかに傲慢さやナルシシズムを感じちゃうんですけど? ハウプトンも反省したわけだし、鍼を取ってもらった方がいいじゃん?

大ツッコミ、以上。うーん、こうしてみると、

“どこか不思議なエキゾチックな国や地域のイメージ”としての“アラブ”
“まるで嘘みたいな技術や伝統を持っている民族のイメージ”としての“中国人”と“インド人”

が登場しているんだよなぁ。夏目の傷ついている描写が嘘っぽくなかったために途中まで気づかなかったけど、ストーリーにどこかお伽話めいたムードが漂うのは、こんなお約束のイメージがてんこ盛りだからなのかも。

うまく説明できないので上記の「ツッコミのまとめ」には入れなかったけど、イギリス人・ハウプトンや、夏目が立ち直った後の夏目と上條の描写も妙だ。でも、

「たとえどんなことがあろうとも、朝が来て日が昇り、日が沈み夜がくることの繰り返しは変わらないんだよ」

という、夏目を砂漠から救ったドクター・キングの言葉や、欠落感を抱えていた夏目と上條がやがて他人と心を通わせようとする――という展開など、感心するところもちらほらあるので、この作品、まったくダメダメではないのだ、個人的には。


ところで、先日、rrrさんと会って話していた中で、

「アラブもの」が好きな人はどこに魅力を感じているんだろう?

という話題が出た。わたしはもちろん、rrrさんもアラブものは読まないらしいので、その辺りがまったく謎。ついでにいえば、ハーレクインやレディコミにもあるアラブもののファンにも、その辺り、聞いてみたいところだ。

ファンタジックなところ? エキゾチシズム?

そしてこれらのアラブものと現実のアラブの違いを検証してみるのも面白いかもなぁ……と、「主治医の采配」を読みながらぼんやり思った。4daさんのブログの、素晴らしい考察記事みたいにさ。

まあ、「イスラム教は同性愛を禁止しているか?」を確かめるのにえらく時間がかかったので、なかなか実現は難しそうだけどね。
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Tags: 水無月さらら 小山田あみ アラブ

Comment - 3

2009.10.12
Mon
05:37

もと #4pDgvQA2

URL

あーこの方の小説、過去に一度読んで、その突っ込みどころの多さに違う意味で楽しんだ覚えがありますw
御多分にもれず床上手らしい攻めのテクが全然上手く感じられなかったのが致命的だったなー┐(´ー`)┌
今回はアラブ混じりなのですか・・・気にはなるけど・・・なんか怖いですねw

アラブの魅力・・・私は衣装かしら?と思ったりします。あの独特の民族衣装が好きなんですよ。
更になんでそれが好きなのか?って考えたら、「エイリアン通り」に行きつきました。
あのマンガのおかげでアラブハードルはかなり下がってる気がします。
アラブ物はガッツリ1作、チョイ出1作程度しか読んだ記憶がないんですけど、ガッツリはまんまアラビアンナイトの世界で、世界観はとても好きでしたね。
ありえないシチュとして、宝の山の宝石の上でえっちというのがありましたが、夢はあるけど痛そうだなオイと思ったw 実は私も衣装は好きだけどさほどアラブ物に魅力は感じませんね。
何となく好き勝手してムチャしても「アラブの権力者だし」で済ませるいい設定になってるだけな気もしますね。

編集 | 返信 | 
2009.10.12
Mon
20:03

4da #5Qkd.16Y

URL

ホント、どこに魅力を感じているんでしょうねー?
と、逆に皆さんに質問したいくらいです(笑)
簡単に思いつく魅力ポイントとしては、「同じ素材でいかに違った料理が出てくるか」という部分ですかね。「美味しい」かどうかは別ですが・・・

他にもたくさんの魅力があるような気がしますが、すぐには思いつきません。あと100冊ほど読んでみれば「人生…かな?」という答えが見つかるかもしれませんので、暫しお待ちくださいませ。

編集 | 返信 | 
2009.10.13
Tue
21:46

lucinda #-

URL

>もとさん
アラブ混じりだけど、一応メーンは、アラブから帰還した夏目の復活、なんですけどね。
衣装かぁ…。衣装って、カンドーラとかですかね? それとも、「シンドバッドの冒険」みたいな身軽そうな衣装でしょうか。「エイリアン通り」は読んでないんですよねぇ…サイファは読んでたんだけど…。

ありえないシチュとか好き勝手なシチュも、「アラブなら」でOKってのは、やっぱりイメージの力の強さを感じますね。

>4daさん
すみません、リンクのご報告をしないままで…!
なるほど、「同じ素材でいかに違った料理が出てくるか」ですか。むーん、「アラブ」ってキーワードやテーマで、これほど作品が出ているってことは、そういうことなんですね。

100冊…100冊って…! でもお待ちしております。固唾を呑んで…!

みなさまコメントをありがとうございました!

編集 | 返信 | 

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