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「丸角屋の嫁とり」「王子と小鳥」(山中ヒコ)

 05,2009 23:57
先週はメイ&オイがあれこれと体調を崩し、週末はとうとう、看病やら世話やらの助っ人に行っていたため、ブログどころか、PCにも近づけなかった。

しかしなんで子どもって、あんなに元気なんだろうねぇ……。逆にグッタリしていたら、一刻の猶予も許されない緊急事態なんだろうけども。

そんなこんなで疲れたわたしを癒してくれた作品が、「丸角屋の嫁とり」(山中ヒコ)。

最高にすばらしかった! 「嫁とり~?」と斜に構えて購入を保留にしなくてよかった!

ネタバレを含むので折りたたみます。
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武家の庶子である鈴は、本妻の目を恐れ男の身で女として育てられた。美しく成長した鈴はある日、町でならず者に絡まれたところを町人の新三郎に助けられる。以来、男というものへの憧れを育て始める鈴。だが父から借財のカタに嫁入りを命じられ……? 表題シリーズほか、年下攻リーマンシリーズ「新しい武器」を収録。

この作品は、もうわたしの心の弱いところや痛みを真正面から刺激する要素に満ち満ちている。“わたしの心の弱いところ”にはどんな“痛み”がうずくまっているのかというと、一言で説明できず、ちょっとまだるっこしい表現だけれど、

肉親なんだけど、一方の、あるいはお互いの気持ちや願いが伝わらないもどかしさ

みたいな気持ち。本当は親に甘えたいのに、甘えられずにけなげに我慢している子どもなんか見せられた日には、たまらず涙が出そうになる。というか、全然ラブロマンスに関係なくて、すまぬ。

多分、わたしの中には、親に自分の気持ちをわかってもらえないという度し難い屈折が居座っていて、もうそれは、よほどのことがない限り、居座り続けるものなんだと思う。理性では、親の思いやりをわかっているんだけど、感情や本能では納得していないのだろう。

この本、「丸角屋の嫁とり」と「新しい武器」の、2作品が収録されているのだけど、どちらにも、その弱点と痛みを突いてくる箇所がある。しかもそれが、山中さんの独特の、くだくだしい説明は一切なしで、簡潔な言葉と絵で表現されているものだから、さらなる余韻を感じてしまう。

「丸角屋の嫁とり」は、訳あって娘として育てられた旗本の庶子・鈴が、男にも関わらず、借金のカタに札差の丸角屋への嫁入りを父親に命じられる。父親は、鈴の母親が亡くなってからは鈴を放置したままで、優しい言葉をかけてやったこともない。

だが鈴は、「もし男だとバレたら自害せよ」と父親が差し出した短刀を受け取り、

ただやさしい言葉一つ(が欲しかった←この部分はわたしの想像

とモノローグでつぶやくのだ。

涙涙涙涙涙。

「新しい武器」では、仕事はできるけど人付き合いをしない先輩・神田に懐いた染谷の、子ども時代の「やや大きめの穴が開いた」事件が淡々と説明されていて、もうここを読んだだけで涙と鼻水が出そうになった。

鈴も染谷も、わかってくれない親を責めるわけじゃない。だからこそ、気丈にふるまう彼らの姿がズシリと胸を直撃するのだ。

どちらの物語も、最終的にはハッピーな雰囲気が漂っているのも、よりいっそう良い。ハッピーだと見届けることで、わたし自身がカタルシスを感じているのかもしれない。

――別に「子どもの気持ちが親に伝わらないもどかしさ」が描かれているのなら、BLじゃなくってもいいんじゃない? と思われるかもしれない。わたしも一瞬、そう考えた。

でも、これがBLで描かれているからこそ、余計に感情を刺激される部分があるのでは――と思うのだ。

鈴が新三郎に、自らの足で立ち新三郎を助けられる働きができると認めてほしい、とひたむきに努力する様子や、年上だけど不器用で放っておけない神田のことを追いかける染谷の気持ちに、「これはBLならではだよ!」と感じ入ってしまう。

うまく説明できないけれど、BLだから伝わってくる、「受けと攻めの対等感」や、「血はつながっていないけど固い結びつき」に共感している、といいましょうか。

うーむ……親に本当の気持ちが伝わらないもどかしさを解放してほしいわ、キャラたちの対等な関係性や結びつきに満足させてほしいわ、誠に読者というものはわがままなものですね。

「丸角屋…」は、鈴の幼なじみ・荘太の、鈴への一途な思いやりにも、涙腺を刺激された。そういえば、荘太の祖母で鈴のばあやが亡くなった時のエピソードにも、涙が出そうになったのだった。

涙を流しまくりだな!

山中ヒコさんのコミックは、これの前作「王子と小鳥」が初読みだったんだけど、この作品もよかった。これも、選び抜かれたわずかな言葉から想像させられるアレコレが、後からジンワリと余韻となった感じ。

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貧乏美大生・鈴木圭一が目覚めると、そこは砂漠の国のオークション会場だった。借金のカタに奴隷として出品された彼が、強欲な第一王子の手に落ちようとしたその時、その弟であるハーリド第二王子によって買い上げられる。ハーリドの奴隷となった鈴木は日々逃亡を企てるが、王子の優しさに少しずつ惹かれはじめ…。表題作他、心の欠けた大人と、彼に買われた少年の恋を描く「淋しさの値段」を収録。苦悩しながらも真実の愛を手に入れる恋人たちのドラマチックコミックス!! 王子と鈴木の後日談描き下ろし付き

まさかのアラブもの。受けの圭一の亡き祖父への思いと、ハーリドの子ども時代の「トラック」のエピソードが、これまたわたしの弱いところをぐいぐいと刺激してきた――と正直に告白しておきます。

この作品、表紙も“いかにもBL”ではなく、スタイリッシュですごくステキ。

山中ヒコさんはいい!――と、「丸角屋…」「王子…」連動のペーパーを眺めながら「江戸とアラブと、アラブと江戸と……」とつぶやいて悦に入ったのだった。

あら、「江戸とアラブと、アラブと江戸と」って、なんだか都都逸の出だしみたいだわね。
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Tags: 山中ヒコ

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