歴女っつっても院政期ですが、何か?

 11,2009 23:16
世は戦国ブーム。メディアによると、“歴女”とよばれるお嬢さんたちが、戦国武将に萌えを見出しているらしいけれど。

わたしが今、興味津々なのは“中世初期”、つまり平安末期ごろ、いわゆる院政期なのだった。

だって、もうすごい爛れようなんですよ! 人間関係が入り組みすぎていて、ちょっとやそっとじゃ理解できないくらい。

院政期に興味を持つようになったきっかけは、ずっと前に読んだ「BL新日本史」。保元の乱や平治の乱など、院政期の政治的動乱に同性愛関係が絡んでいたと知って、目からウロコだったなぁ……。

そして同時に、かつて読んだ

ロマン・コミック「人物日本の女性史」(全30巻・世界文化社)

の中の

「美福門院」(12巻。仲村計)

を思い出した。この本の画像がどうしても見つからないんだけど、仲村計さんの絵はこんな感じ。

仲村
妖艶……!

この絵柄で、男女のエロシーンがかなりしっかり描かれていたのだ。いや、エロシーンがしっかり描かれていたゆえに、「院政期って……爛れてる……!」という印象を、子ども心に強く持ったとしか思えない。あれが中学の図書館にあったというのが、今思えばすごい。

さらに追い討ちをかけたのが、最近、氷室冴子さんのエッセイ「ホンの楽しみ」の影響でじっくり読んだ、「日本の歴史をよみなおす」(網野善彦)。何しろ13世紀頃は、日本史上の“大激変期”だったようで――。

院政期の12世紀頃は“大激変期”のちょっと手前で、「日本の歴史を…」ではあまり触れられていないのだけど――でも、あの激変の時代の幕開けがあの入り組んだ人間模様かと思うと、ちょっと感慨深い。

とにかく、男女関係および男男関係がハンパなく複雑なため、「BL新日本史」やWEBサイトを読んでもすんなり頭に入らない。頭を整理するためにどうにも人間関係の系図を描いてみたくなり、がんばった結果がこれ。

長くなったので折りたたみます。
院政
クリックで拡大します。

ちょっくら描いてみようかと思い立ったのが運の尽き。えらく手間取りましたとも。途中で、「わたし、何やってんのかしら?」と疑問に思わないでもなかったけど、まあそれはいつものことよね。ハハハ<泣笑

それにしても、込み入りすぎな人間関係を目で確認すると、改めて思う。何なの、この爛れた関係……! 複雑すぎるにもホドがあるだろ。「いやぁ、お盛んですなぁ……」という言葉も、お愛想では収まりそうにない。

これでも、「保元の乱」「平治の乱」にあまり関係ない人物や、早世などによって人間関係にあまり影響のなかった人物はカットしていると、お断りしておきます。

えー、赤い線は同性愛関係を表しています。ピンクの二重線は男女の関係を表現。元ネタが「BL新日本史」とゲイ関係のWEBサイトとはいえ――同性愛関係の濃さといったら!

この系図でキーになる人物は、藤原頼長、藤原成親、後白河院、でしょう。頼長は保元の乱の、成親は平治の乱の首謀者で、後白河院はそのどちらにも関わって勝利している。さすが“日本一の大天狗”(源頼朝談)。ちなみに、保元、平治の両乱の勝者には☆がついています。

この頃の男色関係は、政治的かつ力関係の誇示的な意味合いも強かったらしい。

そのため、頼長が宿敵の藤原家成の息子3人および娘婿と関係したのは、政敵の息子たちと寝ることで、鳥羽院の院近臣である家成側の切り崩しと、家成への復讐を果たしたという意味合いがある、という。また、鳥羽院の寵愛を受けていた藤原為道とは、鳥羽院とのつながりを持ちたくて関係したみたい。

あと、この頃の公家たちは、表では姻戚関係、裏では男色関係という二重の絆を政略的に結ぶことで、自分と一門の安泰を図っていたとか。

そうしてみると、頼長と藤原公能、源成雅は婚姻関係と男色関係をしっかり結んでいる。源成雅なんて、頼長の父親とも関係しているんですよ? 父と息子で同じ男と寝るなんて……どこのBLかゲイポルノかっての。

藤原成親と平重盛の関係も、婚姻関係と男色関係でガッチリ結ばれている典型だ。ここに藤原信頼が加わると――もう、ややこしくて仕方ない。あんまりややこしくて上の図にはうまく反映できなかったので、別の図にしてみたのがこれ。

院政2
クリックで拡大します。姉妹を巻き込んでミッチリ絡み付いてるなぁ…!

成親、信頼、重盛は、全員後白河院の寵愛を受けていたということで、ややこしさはさらにアップ。成親と信頼はとても仲が良かったらしいので、もしかして二人はそういう関係だったんじゃないかと密かに邪推。

成親は平治の乱、および「鹿ケ谷の謀議」の首謀者だったのに、関係のあった重盛の口ぞえで、減刑されたという。とはいえ、「鹿ケ谷の謀議」で配流された先で、殺されたらしいけれど。

「芙蓉の若殿上人」と称されていた成親は(芙蓉は不要にも掛けられていたらしいけど)、とても華やかな美男子だったらしい。この頃は一般的に、身分の高い方が“攻め”だったらしいので、この系図上では、成親は受けてばかりだったのかも。“魔性の受け”とは成親のことだな。

――いやぁ、濃ゆい。濃ゆいよ、院政期!

とはいえ、平安時代、同性愛関係は普通だったというので、男女関係、男男関係、そして多分、女女関係も、院政期前でもあちこちで繰り広げられていたと思う。しかし院政期は、貴族から武士へと権力が移行する端境期。つまり時代の流れが変わる動乱の時代だったため、セックス込みの人間関係が、よりいっそうパワーゲームに深く結びついていたんじゃなかろうか。

そして、今日ここまで貴族たちの関係が明確になっているのは、頼長が残した日記「台記(たいき)」のおかげ。ここにいちいち、関係した男たちのことを頼長が記録していたため、当時の人間模様が窺えるといってもいいと思う。グッジョブ、頼長! 「悪左府」とあだ名されるぐらい、性格が悪かったらしいけどな!

頼長、成親、後白河法皇のハデな男男関係に目がいってしまうけれど、個人的にクセモノだと思うのは、白河院。後白河院の曽祖父。院政期のしょっぱなを飾る法王。

この人は、イケメン武士集団の「北面武士」を創設し、その中からのお気に入りを侍らせて可愛がっていたらしいけど、女関係も始末が悪い。

後に孫の鳥羽院の后になった待賢門院に手を付けて、「崇徳はオレの子じゃなく、白河院と待賢門院の子だ」と、鳥羽院に疑惑を抱かせるし(これが後の保元の乱に細ーくつながる)

身分の低い女を、その間にできた息子ごとお気に入りの北面武士・平忠盛にくれてやるし(この子どもが清盛といわれている。清盛に白河院御落胤説があるのはこのため)

後世に禍根を残しやがって……! と思わずにはいられない。

同時に、自分が寵愛した女性を、可愛がっている目下の者に譲るということが、当時としてはそれほどおかしなことではなかったのかなぁ……と想像してしまう。女性だけでなく、男性だって父と子で寵愛している例もあるし――頼長と父の忠実に愛された源成雅とか。

この系図で見ると、逆に権力者に対しては、親子や兄弟で仕えて寵を得ているので(後白河院>平重盛、資盛)セックスによって地位や名誉や保身のための結びつきを強めようという風潮が強かったのかもしれない

何か、生きるための“つながり”への要求がストレートに伝わってくるような。

どうです、院政期? この系図を見たら、戦国時代の「殿と小姓」みたいな関係なんて、屁のカッパみたいに思えるね<意味不明

戦国時代の主役は武士だけど、院政期はまだ貴族ががんばっているので、武士の衆道関係に比べたら、どうも貴族のそれは退廃的なイメージが強いのだけど。

いやいや、戦国時代だって、今に伝わっている以上に、いろいろ複雑で奔放な人間関係が結ばれていた可能性はあると思う。ただ、それが伝わっていないだけで――そう考えてみると、細かく日記に記録した藤原頼長、やっぱり良い仕事をしたとしか言いようがないな。保元の乱を企てちゃったけど。

まったく、中学生の時、教科書の院政期についての記述がどうにも要領を得なかったのは、当時の人間関係にあまり触れられていなかったせいじゃないかと思ってしまうよ。そろそろ、重要な同性愛関係には触れておいた方がいいんじゃないのか、日本史は。

あるいは、大河ドラマでこのドロドロの人間関係を描いてくれるとかね。ホモ協会と言われるあの放送局なら、できるはず……!

ただ、もう大河じゃなくて、ただの昼メロになっちゃうかもしれないけどさ。

■参考WEBサイト
昔の日本人―院政期の日本人 1~5 (ジャックの談話室)
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Tags: 歴史 同性愛 男色 院政期

Comment 2

2009.09.13
Sun
22:55

葛城 #vlWmi.z6

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こんにちは

こんにちは、コメント失礼します。
院政期と聞いて、昔、私もその辺りに萌えていた過去を持つもので、ついコメントしてしまいました。
系図がとても分かりやすくて、本当に凄いことになっているのが一目了然でした…(笑)。
そういえば教員をしている友人に、昔の同性愛関係の話を生徒に話せれば分かりやすいのに、先輩の先生からNGが出る、と聞いたことがあります。
その方が面白いんですけどねえ…

編集 | 返信 | 
2009.09.14
Mon
22:30

lucinda #-

URL

葛城さんも院政期に萌えてらしたことがあるんですね。複雑なのでかえってのめりこんでしまう部分がありますよね<わたしだけ?

>そういえば教員をしている友人に、昔の同性愛関係の話を
全然OK!となったら、そのころは同性愛を巡る雰囲気も変わってるのかもしれませんよね。つか、どういう方向でNGなんだろうなぁ…とふと思ったり。

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