スラムドッグ$ミリオネア (※やおい脳的斜めレビュー注意)

 08,2009 23:03
アカデミー賞8部門受賞!と、華々しい評価がまぶしい「スラムドッグ$ミリオネア」。日本でも大ヒットしたらしいけれど、このたび、ようやく見てきた。近くの映画館で。

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運じゃなく、運命だった。アジア最大のスラム街・ムンバイで育った少年ジャマールは、世界的人気番組「クイズ$ミリオネア」にて一問を残して全問正解、一夜にして億万長者のチャンスを掴む。だが、無学な彼は不正の疑いをかけられ、番組の差し金で警察に連行され、尋問を受けることになってしまう。彼は一体どうやって全ての答えを知りえたのか?そして、彼がミリオネアに挑戦した本当の理由とは―?

すでにDVDになっているんですね。早いなぁ。

前評判どおり、素晴らしい作品だったと思う。スラム街を駆け抜けるあの疾走感と躍動感、そしてスラム街やムンバイを徐々に俯瞰していくカメラアングルと、ハウスっぽくアレンジされたインド音楽がドンピシャにハマっていて爽快だった。

貧しく親のいない子どもたちを利用し搾取し尽くす大人がうごめく社会が、あまりにも残酷で苛烈で、スクリーンを見ているだけで、何度心が折れそうになったことか。わたしだったら絶対、彼らのようにあそこで生きられないに違いないと、確信している。

そんな社会を生き抜く子どもたちのたくましさとしたたかさを応援しながら作品に引き込まれ、ラスト、主人公がもぎ取る勝利に圧倒される。

どのレビューを見ても、「傑作!」「最高!」の文字が躍っている。確かに、傑作だと思う。

でも――途中からわたし、どうにもやおい脳が発動してしまって、実は見終わった時は、ちょっとやりきれなさまで感じてしまったんですよね……。

というわけで、ここでのレビューは、かなり斜めから見たものとなっています。「あの感動の傑作をやおいに連ねるなんて許さん!」という方は、大変申し訳ないのですが、お引取り願います……。
さて、わたしがやりきれなさを感じてしまった最大の原因は、ハッキリしている。それは、主人公・ジャマールの兄、サリームに思いっきり肩入れしちゃったせいなのだ。

ジャマールとサリームは、どうやらイスラム教徒の子どもらしいのだが、ある日、突然の宗教的迫害の結果、目の前で母親を失い孤児になってしまう。

さあ、ここからが二人の苦難の人生の始まりだ。それまでもかなり厳しかったのだが、幼い子どもが二人きりで生きなければならない厳しさの比ではない。ゴミを拾って生活し、ギャングの元を逃げ出し、列車強盗をし、タージ・マハル界隈でインチキガイドや泥棒をして日銭を稼ぎ――と、生きていくために、例えそれが悪事であろうと、できることは何でもやる。

サリームははしっこくて無鉄砲で、時には意地悪もするけれど、危ないことがあれば、常に弟のジャマールを助け守る。ギャングに目を潰されそうになったジャマールを助けたのもサリームだし、ギャングを殺して自分たちの逃げ道を作ったのもサリーム。優しい言葉をかけるわけじゃないけど、とても弟思いの兄ちゃんなのだ。
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失明の危機から間一髪で逃れ、列車で町を離れる兄弟。ちなみに奥がサリーム。

ところがジャマールの心は、常に一人の少女・ラティカを探し出すことに囚われている。彼女は彼らと同じように孤児になり、ギャングに連れ去られたのだが、ジャマールたちがギャングの元から逃げる時に生き別れになっていた。

このジャマールという少年が、「一念岩をも通す」の、典型みたいな少年でねぇ――こうと決めたら決して諦めない。粘り強い、つか味執念深い。まだ母親が生きていた頃、近くにやって来た大好きな映画スターにどうしても会いたくて、閉じ込められたトイレから肥溜めに飛び込んで駆けつけたほどだもの。

こう言っちゃ何だが、ジャマールのラティカへの執着のせいで、ジャマールとサリームは様々な危機に直面したようなものだ。

サリームにとってみれば、命からがら逃げ出したムンバイから遠く離れた町で、ジャマールと二人で暮らしていければいいや、と思っていたと思う。この世で頼りになるのは互いに兄弟二人きり、というか。

しかし、ジャマールはいつまでも真っ直ぐに(しつこく)ラティカを探し続ける。サリームはそんな弟に苛立ちつつも、ジャマールと一緒にラティカを探してやる。内心、サリームはジャマールの行動を「仕方ない」と思いつつ、自分からジャマールを引き離すラティカに、嫉妬を感じていたんじゃなかろうか――。

と、そんなことを、

1.ギャングの元から逃げ出して列車に飛び乗ったサリームが、ラティカの手を離した時
2.売春宿からラティカを救出後、ジャマールとラティカの会話を耳にしたサリームが一人部屋を出て行く時

思ったのだった。やおい脳、フル稼働

まあ、ジャマールの心を掴み、常に兄弟のケンカの火種になっているラティカは、確かに「運命の女」ということなんでしょうけど。

だから結局最後に、自分のボスの元からラティカをジャマールのところに逃がし、責任を負うサリームが哀れで、それなのにジャマールとラティカは何やら幸せそうで、その対比があまりに哀しく切なくなったのだ。これもクイズのように、自分が選んだ結果と言われれば、それまでなんだけど。

サリームのあの最期は、金に執着し、人を殺し、ギャングとなって数々の悪事に手を染めたことの報いというのだろうか? でも彼はいつも弟を守ったじゃないか! それにラティカを逃がす時だって、ジャマールのことを思い、ラティカに許しを請うていた。

ストーリーの途中でサリームが、「罪を犯しました……」と一心に神に懺悔しながら祈るシーンが目に焼きついていて、そんな彼をこそ、神様には救ってほしかったと思ってしまう。

そんなサリームとは対照的に、ジャマールは誠実で真っ直ぐな少年として描かれているわけだけど、そのジャマールがクイズを勝ち上がり、恋を実らせるという華やかなエンディングを見ながら、これも一種の“勧善懲悪”なのかと、一瞬、さらに深読みしてしまった。
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「ミリオネア」の司会者って、何だか雰囲気が似ているもんなんだなぁ……。

ジャマール、もっとサリームのことを考えてやれ! アンタ、兄ちゃんがいなかったらどうなってたと思うの!? ラスト、ラティカと再会できて浮かれてるんじゃない! と、わたしはスクリーンの中のジャマールに向かって抗議したい気持ちでいっぱいだったよ、本当に。もう完全に、サリームに感情移入してしまってます。

――いえ、きっとサリームに肩入れしなければ、気持ちよくカタルシスを感じられる作品なんだと思う。でもねぇ、生来の脇キャラ好きで、おまけに兄の報われない思いが琴線に触れたのがいけなかった。今でもわたしの頭の中には、ジャマールよりもサリームの登場するシーンが駆け巡っているもんね。
dog2.jpg
札に埋もれて全てを終えるサリーム。ちょっと千●ジュニアに似ているけどアンタはステキだったよ!

以上、超偏った「スラムドッグ$ミリオネア」レビューでした。それにしてもやおい脳、どこで発動するか、わからんないもんだなぁ……。
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Tags: 腐女子

Comment 2

2014.01.27
Mon
20:27

zebra #ngCqAwRo

URL

ジャマールの生きる力はたくましい!

これもDVDで先日見ました。

主人公のジャマール 育った環境が大変でした。
ミリオネアに出演したのも ラティカと一緒になりたいと想ったのも "生きるため"だった。

 過酷な生活環境がきっかけで のちにミリオネアで出てくる問題を解く答えを知ってゆくジャマール・・・
カンニング疑惑で拷問されても インチキはしてないと訴え続け・・・苦難を乗り越え ラティカと一緒になれたたジャマールの雑草根性は筋金入りです。

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2014.01.30
Thu
02:53

lucinda #-

URL

コメントありがとうございます

>zebraさん
ジャマールの雑草根性…確かに“雑草根性”ですね~。
エントリー内容のとおり、私自身はジャマールの兄に感情を持って行かれましたが、ともかく、ジャマール兄弟を取り巻く環境は、映画を観ていて辛かったです。
それがまったくの想像の産物ではないところが、また重くのしかかってくる感じがします…。

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