嘘と誤解は恋のせい(小林典雅)

 25,2009 23:25
心の底から、待ち焦がれていた小林典雅さんの新作「嘘と誤解は恋のせい」。勝手に盛り上がって、事前に企画(これこれ)までブチ上げちゃいましたからね。期待は否が応でも高まるというもの。

そして発売日当日、書店で見つけて真っ先に思ったことは、これ。

――ちょっと……表紙、めちゃくちゃキュートじゃん……!

最初に本棚をざらっと眺めたたときに、まさか典雅さんの本だと思わず(<失礼)見逃しちゃったぐらいだもの。

そして裏表紙の内容紹介を読んで、笑いを堪えるのに苦労した。

問)琴線に触れるBLをお探しのあなたに伺います。
a.恋のきっかけは突拍子もないものに限る
b.恋愛成就効果のあるアンケートを体感したい
c.『泥酔襲い受』もしくは『洞窟羞恥プレイ』というワードにちょっとピンときた
d.つい、味のある脇役に愛と萌えを感じてしまう
e.片想い時と両想い時、それぞれを楽しみたい
f.小林典雅または小椋ムクと聞くと胸がトキめく
――以上、どれか一つでも当てはまったあなたは同志です。(勇気を持って)お買い求めください(ハート)

――いいねぇ! このノリ、すごく好き! 花丸担当者、ノリノリだな。なんだか典雅さんと編集者の関係がすごく良いように思えて、嬉しくなる。

もちろんわたしは上記のうち、一つどころかa以外は全て当てはまるので、堂々とレジに持っていきましたとも。

ネタバレを含むので折りたたみます。
嘘と誤解は恋のせい (白泉社花丸文庫 こ 6-2)嘘と誤解は恋のせい (白泉社花丸文庫 こ 6-2)

白泉社 2009-08-20
売り上げランキング : 562
おすすめ平均

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

大学生の結哉は隣のエリートサラリーマンにこっそりひっそり片想い☆ ある日お節介な先輩に「これでお近づきになれ」と、奇天烈な偽アンケートを手渡され、拒むすべもなく挑むことになるけれど…!?

この内容紹介は、花丸HPのもの。うーむ、裏表紙の内容紹介と異なるって、珍しくないのかな。「裏表紙も販促の場」というストレートな熱心さに花丸の意欲を感じてしまうのは、わたしだけでしょうか。

アマゾンはまだ表紙画像がないみたいなので、画像もアップ。
tenga1.gif
ベリーラブリー!

さてこの作品、シャレード掲載時に読んでいたものだったので(そして作品ページは切り取って保管している)、実を言うと、オチは知っていた。でも知っていても、やっぱり読むとフキ出してしまうんだよなぁ……。

もちろん、アンケートそのものもおかしい。いくらインチキアンケとはいえ、いくら結哉が憧れの和久井を知って近づくための手段とはいえ、「そんな質問、よく考えるよなぁ!」と思うもののオンパレード。

でもそれよりもおかしくて、膝を叩き腹を抱えて笑い転げたくなるのは、そのトンチキなアンケの質問と和久井の回答が伏線のようになって、後に和久井の行動や思考に生かされる(?)ところなのである。

例えば、

目の前にとても綺麗な人がいて、一カ所なら触ってもいいと言われたらどこを選びますか?
a.髪 b.鎖骨 c.乳首 d.手首または足首 e.尻 f.太ももまたはふくらはぎ g.泣きボクロまたはエクボ h.その他

という質問を結哉から聞いたとき、和久井は、

迂闊に本音を言ったら、このつぶらな瞳に(なんだかんだ言って結構スケベなんですね…)という目で見られそうで、それもなんだか気恥ずかしい。

と逡巡して、「a.髪」と答えるのだが、翌日に残りのアンケに答えるために結哉の部屋を訪れた和久井は、むせる結哉の背中をさすっている時に、

さすりながらふと上から小さな頭を見下ろすと、髪が細くてつやつやしていて、思わず『一カ所触ってもいいと言われたら…』という設問を思い出す

のだ。突拍子もないアンケの質問と自分の回答を、図らずものちほどことごとく思い返して狼狽したり困惑したりする和久井が、書き下ろしの「ラヴァーズ・ブートキャンプ」(舞台は無人島ときた! これももちろんアンケが伏線)では、少しずつ変人っぽくなっていくのが、もう笑えること笑えること。

いや、笑えるのは和久井だけじゃない。小動物みたいに可愛いくておとなしい、かなり内気な結哉も、和久井が口をつけたタンブラーを洗わずに取っておこうとするなど、マニアックすぎなコレクター魂を見せつけて先輩の騎一を呆れさせるし、騎一も、フリーダムな発言で結哉と和久井を焚きつけまくる反面、鋭い洞察力を見せ付ける。

仕込んだネタをきちんと巧みに回収する緻密さ。登場人物は3人だけど、物足りなくないどころか、むしろこれで必要十分! キャラクターたちに意外なウラというかオチというかがあるのがすごく魅力的――と思わせる表現力。典雅さんの筆力とストーリーテラーとしての才能に、心底感嘆してしまった。

この作品は、これまでの典雅作品の中で、一番“BLらしい”作品だと思う。エロシーンも充実しているし、何よりも結哉と和久井、2人の恋がしっかり描かれているもの。前作「美男の達人」とは180度くらい違うんじゃないかな。

奇しくもバーチャル対談で、「主カプ同士が魅かれあっていく過程をもっと盛りこんだらいいんじゃないの!?」という意見が叶っているような。担当編集者の、「描き下ろしはちゃんと主役をくっつけましょう」という指摘は的を得ていたんだなぁと思った。

そして小椋ムクさんのイラストが、これまた作品にピッタリのほんわかした可愛さで、このイラストが“BLらしさ”をより一層強めているような気がしてならない。

ああ、楽しかった! 花丸の担当編集者の本気と熱意も感じられるし、もうこのまま、これまで雑誌掲載された作品の単行本化でも新作書き下ろしでもいいから、1年に1冊だけでもいいから、また「読後に幸せになれるような」本を出してほしい……!と思う。

この気持ちを、今回こそは必ずや付属のハガキに綴って編集部に出すんだ!――と息巻いていたのに、どういうわけか、ハガキが差し込まれていないという悲劇がわたしを待っていた。なんてこと!

本を引っくり返し、一緒に買ったマンガも3往復くらいめくり、本が入っていた袋も裏返してみたのだが、ハガキは影も形も見当たらない。ああ、この大感動かつ大満足の思いをぶつけようと思っていたのに!

でも諦めないわ。何らかの形で思いはぶつけるつもりなんだから! だって、これからも典雅作品を読みたいもの。ねぇ?

#作中のアンケート質問に、今回もフェミニズム的な見地からの質問っぽいものがあって、ここでもニヤリとした。シャレードの2冊にはそんな雰囲気は感じなかったけれど、しかし、そういうフェミ的なニュアンスが入っている花丸の典雅作品は、心なしか、シャレードよりものびのびして見えるような気がする。心なしかね。
関連記事

Tags: 小林典雅 小椋ムク フェミ?

Comment 0

Latest Posts