「古都の紅」「古都の紫陽花」「色重ね」「甘くて純情」(剛しいら)

 21,2009 23:28
剛しいらさんのWEBサイト「剛しいら組」に掲載されている「07'剛しいら作品 湘南・鎌倉特集」の続きです。

鎌倉は湘南なのか、考えるとどんどんわからなくなって調べてみたのだけど。

ま、湘南の海沿いなので湘南なんじゃない? とか、タウンページの「湘南版」には鎌倉が含まれているよ、などとあったので、まあ、湘南といっていいんでしょう、きっと。

それはさておき、鎌倉というと、どうしても、「寺社仏閣の多い歴史のある町」というイメージが先立つ。ではそんなイメージに照らし合わせて、最も“鎌倉”な雰囲気が感じられる気がする作品はどれだろうと考え――かなり迷い――「歴史ある古い町並み」「和」「しっとりとした空気感(※イメージ)」という要素がより強いと思われたのが、この作品。

長くなったので折りたたみます。
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鎌倉南署の管轄でヤクザが日本刀で斬り殺される事件が発生した。現場に残された一本の刀を頼りに、犯行に使われた刀を追うことになった刑事の京介は、若く繊細な美貌の刀鍛冶・博雪に辿り着く。そして博雪から二本の刀は、因縁つきの対の剣で、殺人に使用された方は抜くと人斬りを誘うと聞かされた。信じられずに残った刀を抜いてしまった京介だが、妖しい夢に導かれ、博雪を犯してしまい―。

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鎌倉南署の刑事・大門京介と美貌の刀鍛冶・当麻博雪は一対の妖刀を巡る事件で出逢い、結ばれた。今は眠る刀を守りながら愛を深めている。そんな時、中年男性が刺殺される事件が発生し、京介は捜査で忙しくなる。一方、博雪は不思議な美少女につきまとわれて…。少女に優しく接する博雪に苛立つ京介。だが殺人事件は次の犠牲者を出してしまい、しかも現場に落ちていた凶器は博雪の守り刀で―。

なにしろ、受けは刀鍛治ですからね。ついでにいうと、攻めの京介は霊感を持つ刑事。古い歴史ある町って、ちょっとオカルティックな雰囲気があるじゃありませんか。

以前、ちょこっと触れたことがあるのだけど、「古都の紅」で事件に関係ある2本の刀「紅」と「白」にまつわるエピソードが、男と男が強く堅くやや色めいた絆で結ばれた男色な感じ。そしてそんなイメージが、主人公2人に重なって、いかにも歴史ある古い町に漂うしっとりとした雰囲気を盛り上げる

いや、もしかしたら、舞台が鎌倉だからこそ、キャラたちのたたずまいがしっとりしているように思えるのかも。

「古都の紫陽花」でも、幽霊と刀はもちろん重要な役割を果たす。果たすどころか、前作よりもホラー色が強くて、読みながら怖くてゾーッとしていた。ホ、ホラーは苦手なの……!

事件が起こるたび、京介と博雪の関係は深まるのだが、京介の同僚で相棒の小橋が、どうにか娘と京介をひっつけようと策を弄し、博雪を邪険にする様子が微笑ましい。

結局娘さんは、スリランカ人と婚約しちゃうんだけどね。でも、BLでこういう“世話焼きおばさん”みたいなおじさんが登場すると、ちょっと人情モノみたいな雰囲気が出て面白い。

さて、“鎌倉”らしい雰囲気で、「古都の…」シリーズとさんざん迷った作品が、これ。

色重ね (キャラ文庫)色重ね (キャラ文庫)
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「この世に存在しない浮世絵が欲しい」。若き天才贋作師・京司のもとを訪れたのは、画商の黒崎。一流の鑑定眼を持つ黒崎の依頼は、なんと贋作の男色図!! 潔癖な京司に、男同士の悦楽を体で学ばせようと黒崎はある晩、嫌がる京司を縛り上げ、「しっかり見ろ」と鏡の前で無理やり犯してしまう!確実に快楽を引きだす黒崎の愛撫に責められて、京司は春画の着想を得ていくが…。

こちらは画商×日本画家。日本画家でも、天才的な浮世絵の贋作師って設定と、画商の不敵さ(得意なのは相手の弱点の把握)がなにやらキナ臭くて、ストーリーの展開にワクワクさせられてしまう。攻めの名前が黒崎、受けの名前が赤間という、名前のイメージの対比もいい。

しかも、これ、軽くSMってのが、また……! またもや超個人的な印象で恐縮ですが、古くて日本的な町並みには、SMが似合う気がしませんか? 肌脱ぎの着物とか白い綱とか赤いろうそくとか。わたしだけかしら? わたしだけですね……。

京司は黒崎の望みどおり、有名浮世絵師の足立東斎(葛飾北斎がモデルと思われる)風な男色図を仕上げるのだが、絵の構図のヒントに、と黒崎が連れてきたゲイカップル・ジュンの、水っぽいオネエ言葉に唸ってしまった。コイツは絶対、中に女を飼ってるぜ。

祖父を入院させ、心細くなった京司が黒崎を必死で追おうとするところがかなり切なく、享楽的なジュンたちの姿が、やけに虚しく見えてしまった。

浮世絵の贋作制作(しかも男色図!)、SM、昭和のゲイ映画に出てきそうなキャラ(※イメージ)――こういった要素を、「鎌倉」という舞台がさらにいっそう盛り上げている気がする。この作品は、わりと実在の地名がよく登場しているので、イメージも広がりやすいかも。

最後の一作は、和菓子屋に茶道と、やはり“和”ではあるし、鎌倉の町の雰囲気も感じられるのだけど、全体的にちょっとライト。というより、この作品がある意味一番、“BLっぽい”のかも。

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佐川幹は老舗和菓子店『緑風堂』の次男。家は継がずに茶道を教えていたが、諸々の事情で店の経営をすることに。そんな時、不動産会社の社員・西脇篤史が土地の売却を求めて訪ねて来た。幹に売却の意志は無かったが、西脇とは何度でも会いたいと思うようになっていた。自分が男しか愛せないと気付いて以来、人を好きになることから逃げていた幹にとって、それは初めての経験で―。

父が急死し、兄も家出をした後の、赤字に喘ぐ和菓子店をどうにか再建しようと、土地売却の話で知り合った西脇を心の支えに頑張る、幹の「細腕繁盛記」。タイトルに「純情」とあるだけに、幹、超オクテで純情です。しかも鈍感。鈍感だからオクテなのか……?

ともかく、茶道の家元(野心ギラギラのおっさん)に狙われていたのも気付かず、西脇に気持ちを見抜かれていたことにも気付かない。そこが可愛いし、頑固な菓子職人・春田を説得したり、店先でお茶を点てるサービスを考え出したりと、一生懸命に仕事に取り組む姿はけなげで素直ではある。

だけど、25歳なのにこんなにピュアで大丈夫なのかと、お姉さんはちょっと心配よ?

そんな幹とは裏腹に、兄の巌は何もかも気付いていて、ある日突然、春田の息子で、やはり菓子職人の有蔵を連れてきて、幹にあてがおうとする。

さあ、ここからドタバタの始まりだ!……と思ったら、「アテが外れた~!」とばかりに巌と有蔵がクダを巻いて酔いつぶれ、それを捨て置いて「お茶が飲みたいな」「お薄、点てますか?」と西脇と幹がイチャついておしまいなのだ。あ、あれ!?

この唐突な終わり方に呆然としてしまうけど、まあ、キャラたちの暮らしはこの先もずっと続いていくという暗示なんですかね……。


さてさて、こうしてみると3作品、どれも主人公の仕事が“和”的なものだけど、やっぱりそれは、鎌倉という町を意識されているからなんだろうなぁ、と思う。

湘南(剛さんのWEBサイトをみると、鵠沼など藤沢の海岸周辺)も鎌倉も、いろんな歌やドラマや映画などに使われているので、多くの人が何となく町のイメージを抱いていると思うのだが、そんな有名な町や地域を舞台にするということは、その場所自体が物語の登場人物の一つ、のようなものになるのかもしれない。例えばほかに当てはまる町としては、京都とか、横浜とか、札幌とかね。

そんな町や地域の描写が、イメージどおりだと読んでいてニンマリしてしまう。そして「07'剛しいら作品 湘南・鎌倉特集」の作品は、確かに湘南と鎌倉のイメージを壊さない、作品だったなぁ……と思うのだった。

#「パーフェクト・ラブ」シリーズを読んで、たけうちりうとさんと剛しいらさんは、作品の設定とか要素とかに共通点がある気がするなぁ、という気持ちが、グッと高まったのだが。

なんとたけうちさんと剛さん、かつて合同誌を出し、しかも、トークライブ(2000年)まで行われていたんですね。2000年以降は合同誌を出されてはいないようだけど、ちょっとその合同誌が気になる……!
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Tags: 剛しいら 石原理 高口里純 Mera 警検麻ヤ 複数レビュー

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