「愛され過ぎて孤独」「愛し過ぎた至福」「愛を食べても」(剛しいら)

 20,2009 23:47
たけうちりうとさんの「パーフェクト・ラブ」「エクセレント・ラブ」は「湘南にほど近い辺り」(多分横浜寄りじゃなくて小田原寄りだよね。“西湘”って言葉や“箱根七曲がり”が出てくるし)を舞台にした作品だけど、湘南といえば、剛しいらさんのいくつかの作品なんじゃなかろうか。

――なんてことをいうのも、剛さんのWEBサイト「剛しいら組」に掲載されていた「07'剛しいら作品 湘南・鎌倉特集」が記憶に焼きついているゆえの連想なんですけどね。

実は、この特集に該当する作品は制覇しちゃったので、どこにも行けないまま過ぎていく夏を惜しみながら、「07'剛しいら作品 湘南・鎌倉特集」を追っかけてレビューすることにします。

ちなみに、「07'剛しいら作品 湘南・鎌倉特集」に登場する作品は、登場順に、以下の7作品。

『古都の紅』『古都の紫陽花』(雄飛 アイノベルズ)
『愛を食べても』(プランタン出版 プラチナ文庫)
『愛され過ぎて孤独』『愛し過ぎた至福』(大洋図書 SHYノベルズ)
『甘くて純情』(フロンティアワークス ダリア文庫)
『色重ね』(徳間書店 キャラ文庫)

超長くなったので折りたたみます。
でも、追っかけレビューとはいっても、ただただ特集に登場する順番にレビューするのもつまんないなぁ……と思い、超個人的に“湘南”および“鎌倉”な雰囲気が、より一層感じられる作品を中心にレビューしてみることにする。

というわけで、まず、最も“湘南”な雰囲気が感じられるような気がするのは、これ。

愛され過ぎて孤独 (SHYノベルズ)愛され過ぎて孤独 (SHYノベルズ)

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歯医者を目指す大学生・深海は海辺の家でプロサーファーの次男・千尋、複雑な事情を持つ高校生の三男・涼と暮らしていた。家族の中心であった母親を亡くして以来、危うい均衝を保っていたある日、千尋が涼をそそのかした。深海を抱きたいなら抱いちまえ、と。

愛し過ぎた至福 (SHYノベルス)愛し過ぎた至福 (SHYノベルス)

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海のそばの大空歯科医院の次男・千尋が子供の頃から片恋していた相手・大樹と恋人関係になって数ケ月。ふたりの関係は微妙なものに…、体の関係もこのところ途絶えている。大樹がオレの気持ちに応えてくれたのは、恋からじゃないのかも…熱い男たちのディープラブ!!

「サーファーが登場するから湘南だと思ってんじゃないのー?」と言われても否定できません……。いえ、湘南辺りには仕事でしか行っていないんだけど、本当に住民の方は、サーフィンやボディボードに慣れ親しんでいるんだなぁ……と感心したんだもの。

「わたしは波に乗るより潜る方(ダイビング)なの」と言う人もいたけど、どっちにしても海遊びが身近であることは変わりない。あらまあ、こういうとこもあるのねぇ……“湘南で~波乗りで~”って、ポーズじゃないんだなぁ……と感じ入った次第。

この作品、歯科医院の3兄弟(深海、千尋、涼)+そこに勤務する兄弟たちの兄的存在の歯科医(大樹)が主人公なんだけど、プロサーファーである次男の千尋はもちろん、ほかの3人もみんなサーフィンをやる。大体、兄弟たちの母親“マー”も、評判の歯科医かつサーファーだったのだから。

3兄弟たちはちょっと複雑な事情を抱えていて、深海と千尋の父親は同じだけど、それが誰なのかは知らされていない。涼は、戸籍の上では“マー”と深海たちの父親との息子ということになっているが、生物学上の父親は刑務所に入っており、母親はフィリピン人で母国に帰っている。おまけに涼が大空家にやって来たのは、中学生の時で“マー”の死の直後。

さらに深海と千尋の父親は、現在女性として生きているらしく、幼い息子に暴力を振るっていた涼の父親から涼を守っていたのは、女性となった父親だった――って、もうややこしすぎ!

こんないろいろワケアリな3人+歯科医の大樹(鎌倉の老舗和菓子屋「鳩森製菓」の息子らしい)の関係を軸に、涼の実父の登場、その変死、千尋のオーストラリア行きといった事件がポツポツと起き、それで悩んだり迷ったりするたびに、彼らは海に出かけて波に乗る。

煮詰まったら海へ――なんて、ありきたりの青春ドラマみたいな気もするが、いやいや、舞台は海が目の前の湘南・鵠沼海岸だもの。彼らが海を目指すのはいかにも自然で、そしてそんな彼らの、若さゆえの危うさや一途さ、真っ直ぐさがうっとうしくないのは、実に舞台が湘南だからじゃないかと思ってしまう

つまり、それくらいこのキャラたちとストーリーが、「湘南」というロケーションに似つかわしく思えるのだ。このグルーブ感、このリズム感がたまらなく好きだ。

湘南のイメージに合った物語のムード、オフビート感という点では、たけうちさんの「パーフェクト・ラブ」シリーズと似ていると思う。さらにいえば、セクシュアリティ的にちょっと複雑な人間関係が展開されている点も似ているような。

「愛され…」「愛し…」のキャラはみんな魅力的だけど、わたしが強く惹かれたのは、“マー”。後に女性になった夫(恐らくトランスジェンダー)とどういう経緯があったのかはわからないが、息子たちを愛し、死後も彼らを見守っている、愛情深い女性。

千尋によると「海の魔女」ということなのだが、深海は、彼女はレズビアンだったのかも……と密かに推測していて、わたしとしても、“マー”が心の広いカッコイイレズビアンだったらいいなぁと、読みながら思った。

さて、こちらも舞台は湘南だけど、「愛され過ぎて孤独」シリーズに比べたら、それほどロケーション重視じゃない感じ。

愛を食べても (プラチナ文庫)愛を食べても (プラチナ文庫)

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「いい体してるね。おいしそう」特別交通機動隊一の美貌を誇り、男喰いの異名をとる輝。彼の相棒で、一応恋人でもある強靱な肉体の良識男・光司郎は、隙あらば誘惑してくるその節操のなさに苛立ってばかりだった。そんなある日、パトカーに不審な飛行物体が墜落、爆発! 九死に一生を得るが、それから輝の様子が激変した。いつもの憎まれ口はどこへやら、健気な態度と可愛い声で甘え、ベッドでも乱れて恥じらい、まさに理想の恋人―。だけどそんな輝は、まるで別人みたいで。

輝の体に、なんと謎の宇宙の知的生命体が入り込むという設定。剛さん、本当にいろんなシチュエーションをお考えで……。

淫乱で襲い受けだった輝が、生命体に入り込まれたその日から、リセットされたみたいに可愛く素直になってしまう。特に口をついて出る「ミュ」とか「ヤミヤミ」とかいう言葉が、キュート! そして「おかず」や「鯵」について、真面目にかみ合わない返答を返す様子も、キュートすぎて倒れそう

輝はどうなってしまうのか、輝に入り込んだ生命体はどうなるのか――って、まあ、なんとなく予測できる方向にストーリーは無事収束していくのだけど。

本来の自分を取り戻し始めた輝が、生命体の存在が大きい頃の自分に対しては光司郎が優しかったことについて、

愛妻弁当を毎日作ってくれちゃって、ベッドでは恥ずかしそうにしながら、やがて大胆に体を開いていく、可愛い新妻(が光司郎の理想だったんだな?)

と詰め寄るシーンに、思わず笑ってしまった。ああ、いかにも男性の望むドリームって感じだなぁと思って。

この作品で「湘南」が感じられるとしたら、やはり海の近さと、どこか明るさを感じる物語の雰囲気かしら。藤沢とか、国道134号線とか、具体的な地名も出てはいるけれど。

「これは、ぜひ同人誌も読んでみてくださいね」と黒ニコさんに教えていただいたのだが、たしかに、同人誌(「愛を食べすぎても」)とあわせて読むと、物語の印象がちょっと違ってくる。切なさが勝って、明るさに濃い影が射すような感じなのだった。

しかし、「舞台は湘南」と思っているせいか、なんだか「愛されすぎて孤独」シリーズも「愛を食べても」も、海辺のちょっとのんびりとした明るさを感じるのは、わたしの先入観が強すぎるってもんでしょうか。

――あら、どっちの作品にも、タイトルに「愛」がついていますね。偶然?

「鎌倉」は次にします。
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Tags: 剛しいら 新田祐克 ひたき 警検麻ヤ MtoF 複数レビュー

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