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たまには百合を―「オトダマ 2巻」(新田祐克)、「光の海」(小玉ユキ)、「曲がり角のボクら」(中村明日美子)、「日曜日に生まれた子供」(紺野キタ)

 09,2009 23:04
土曜日にたまたま見たNHKのドラマ「リミット-刑事の現場」に出演していたARATAを見て、「あ、この人、『李歐』で一彰役をやった人だよねー」と思っていたのだけど、一彰役を演じたのはRIKIYAだったと、たった今判明し、がく然としているlucindaです。

――名前が3文字&アルファベット、ってことしか覚えてないんかい!

おまけにドラマを見ながら、「ARATAも悪くないけど、主演の森山未来が、なんとなく一彰のイメージに合っている気がするなぁ……」などとのんきに思っていたと、この際白状しておく。我が身のちゃらんぽらんさが目に沁みる……。

さてさて、新田祐克新作「オトダマ」2巻を読みながら、心の中でムムム……!と唸っていた。だって、まさかの百合ネタですよ? しかもさすがの、息もつかせぬストーリー展開。

この春以降、百合(ガールズ・ラブって言葉よりは、百合の方が一般的なんだよね?)、というか、女×女の短編マンガをたまたま読むことがちょこちょこあり、これを機会に、今回、レビューをまとめてみた。

ネタバレを含むのと、タイトルばかりか本文まで超長いので折りたたみます。
オトダマ ~音霊~ (2) (WINGS COMICS)オトダマ ~音霊~ (2) (WINGS COMICS)

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雨が降るたび思い出す、要とヒデの悲しい記憶――。要の姉・結はストーカーに悩んでいた。要に導かれ結と出会ったヒデは彼女に惹かれてゆくが……!? 70ページ以上描き下ろし! 待望の第二弾!

ヒデと要の出会いが描かれた今作。百合というのは、要の姉でバイオリニストの結と、彼女に憧れ執着する千秋、そして結の親友でピアニストの真理子の関係。

美人で優しく、バイオリニストとしての才能も持ち合わせている結。それとは対照的に、千秋と真理子はそれぞれ、自分に度しがたいコンプレックスを抱えている。千秋は恐らく、自分の容姿や音楽の才能の無さ、そして同性である結に本気で恋してしまったことに。真理子は女性としては高い身長など男っぽい外見に。

千秋ははっきりと結への恋愛感情を自覚しているが、真理子は恋愛感情というよりは、いかにも“女らしい”魅力にあふれる結への憧れと羨みが入り混じった、複雑な気持ちが勝っている感じ。

――なんて書いているけれど、こんな2人の結への気持ちがわかるのは、ストーリー終盤なのだ。それまでは何がどうなるか予測がつかないサスペンスフルな展開で、とにかく固唾をのんでページをめくらずにはいられない。

この展開の巧みさ。このプロットのスキのなさ。待ってたぜ、新田祐克!――と、心の底から思ったよ!

これまであまり“百合”作品を読んでいるわけではないので偉そうなことはいえないのだが、一方が一方に抱く“憧れ”や“崇拝”の気持ちの強さが描かれていると、「百合だなぁ」と思ってしまう。「わたしもあんな女性なりたい」という“目標としての存在”より、「わたしなんてあの人の足元にも及ばない。ただもう見ているだけで、そばにいられるだけでシ・ア・ワ・セ」という“特別な、おかしがたい存在”として描かれているといえばいいかしら。あくまでも個人的な感覚なのだけど。

そんなわたしの“百合”だと感じる要素が、ストーリーにしっかりと組み込まれていることにも感嘆してしまう。1巻では、限りなく男たちの関係が匂う感じだったけれど、もう、そんな匂いは吹っ飛びそうなほど、強烈で印象的な女たちのエピソード。新田さんの、並々ならぬストーリーテラーとしての実力を感じたのだった。

でもさ――「オトダマ」が復帰作なのはよしとして、まさかこれからBLから離れていくなんてことは、ないよね……? これまでと同じじゃなくていいから、BLも描いていってほしいなぁ……。あ、でも、次の「オトダマ」では、唯敷さんの活躍も見せてくださいね、センセイ――と、誠に勝手なことばかり願うファン心理。

ところで「オトダマ」のほかに、偶然にも行き当たった百合作品は3作ほど。

これは、2月のチャットで教えてもらった作品。
光の海 (フラワーコミックス)光の海 (フラワーコミックス)

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小玉ユキ デビューコミックス。先輩、人魚はじめてですか? 海や川に人魚が住む、わくわくするような日常。そこに生きる人間たちの、ごまかしのない姿を、しなやかな感性と細やかな視点で描き出した珠玉のオムニバス。とある海辺の町、寺の坊主・秀胤(しゅういん)は、住職の孫・光胤(こういん)の言動が何かと気に食わない。明るく奔放で人気があり、住職の血を引く光胤には、かわいい恋人までいる。いい加減なあいつばかりが、なぜ?…悶々(もんもん)とする秀胤だったが!?

人魚が登場する短編集。その中で「波の上の月」に、女同士の、そして人魚の少年同士の淡く苦い恋が、印象深く描かれている。

若い人魚が集まる故郷の島で教師をする京子を訪ねる、元ルームメイトのさき。さきは密かに、ずっと京子のことを想っているのだが、教職に励みながら新たな生活の基盤を築きつつある京子は、さきの気持ちに気付くはずもない。おまけに、京子が地元の漁師とつきあっていて結婚まで考えていることを、さきは漁師たちから聞いて知るのだ。

さき、ショックだっただろうなぁ……と読みながら痛いほど共感してしまった。「失恋」という悲しみもあるけど、自分の想いを隠して友情を選んださきにとっては、友達なのに京子が何にも自分に話してくれない寂しさも感じたはずだ。

そんなさきの悲しみと並行して、人魚の少年の、仲間の少年への叶わぬ想いが描かれているのがみごとだ。

人魚の少年たちはメスに出会う繁殖期に備えて、オス同士で交尾の練習をする――って、この設定はBLチックなんだけど、少年らしく元気いっぱいに明るく交尾の練習をする人魚たちと、「練習」じゃない気持ちをひっそりと胸に抱いている一人(一匹? 一頭?)の少年人魚のコントラストが、同性を好きになったさきと少年人魚の切なさと孤独感を浮き立たせる。

この作品、女×女ではあるけど、個人的には“百合”って感じはしないんだよなぁ……。つまりは、わたしが“百合”だと感じるポイントが埋め込まれているわけではないということなのか、それとも京子とさきが社会人だからなのか……。かといって、京子かさきのどちらかが男でも成り立つような、そんな底の浅い描かれ方でもない。うーん……?

でもとても好きな作品であることは間違いない。

曲がり角のボクら (花とゆめCOMICSスペシャル)曲がり角のボクら (花とゆめCOMICSスペシャル)

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カーブでは落とせスピード落とすなこの恋。男女4人の青春ゆらゆら群像な表題作ほか、未発表作含め6作品収録のアスミコ少女漫画待望の第二弾!描きおろし番外編つき。

「さくらふぶきに咲く背中」が、百合作品。幼稚園の時にキスした……かもしれない、高校生の真理と葉子の再会からストーリーが始まるのだが、明日美子先生は単純な百合なんて描かれません。真理は葉子が気になっているという点では百合だけど、葉子は、実は結婚の決まった兄に恋をしているのだ。

「フツーにフツーの男と女じゃなきゃずっと一緒なんてほとんどムリだよね」

という、葉子の言葉に胸を突かれる。同時に、10代らしい周りの見えてなさ加減や余裕のなさぶりが、中年のわたしには微笑ましくもまぶしい。「同級生」もそうだったけど、明日美子さんは10代のみずみずしくちょっとモロい雰囲気を描くのがすごく上手だと思う。まるですぐそこに、キャラたちが実際にいるような気になってしまう。

葉子は結婚しちゃう兄ちゃんじゃなくて、真理と幸せになっちゃいな!――と、読み終わって思った。

日曜日に生まれた子供 (ミリオンコミックス 37 CRAFT SERIES 27)日曜日に生まれた子供 (ミリオンコミックス 37 CRAFT SERIES 27)

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君は拒めない 私は主人だから。ダーラム家の主ローランドの恋人は、父の跡を継いだ若き執事エリックだ。けれど、ふたりの間には騒然たる身分の差異が存在しており……。階上と階下、主と執事の恋を描いた表題作を始め、厳しい自然に暮らす森の住人、かつての教師と先生の秘密、そして少女たちの密やかな時間を綴った紺野キタの珠玉の作品集。

「いずこともなく」「昼下がりの…」が、全寮制(?)の女子校を舞台にした少女同士のお話。

恋愛手前という感じの、恋を予感するようなやりとりで話は終わっているのだけど、ああ、なんだか百合百合してるなぁ……!という感じ。まさか、高校生が主人公だからじゃないよね? ちょっと掴みどころのない、小悪魔的な魅力のある守谷さんというキャラのせいかしら? そういえば「さくらふぶきに咲く背中」の葉子も、小悪魔的なキャラだったなぁ。

守谷さんに翻弄されている真面目な優等生タイプの三輪さんが、とても可愛い。欲をいえば、2人の関係の進展をもうちょっと見たかったけど――これはこれで、“その後”をあれこれ想像させる余韻があっていいのかもしれない。

――そうしてみると、「オトダマ」の結、千秋、真理子の関係性は、超私的“百合”ポイントは入っているけど、案外BL的なのかもしれない……と思った。何がBL的なのか――キャラの関係性の緊張感とか、それを描くスタンスとか、かなぁ……?

話がソレちゃったけど、「日曜日に生まれた子供」のあとがき4コママンガで、「守谷さんが襲い受け」と書かれていたのは、大いに納得だ。

今回取り上げた作品は、どれもわたしにとっては佳作以上。いや、密林やほかのブログなどのレビューを読んでも、結構評価が高いものばかりだ。

そのおかげか、以前ほど、物足りなさや未消化感を感じなかった。こうしてたまに、百合を読むのも悪くない――まあ、今のところ、自分好みの“百合”作品の傾向を、今ひとつ把握できていないのが難なんだけどね。
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Tags: 新田祐克 小玉ユキ 中村明日美子 紺野キタ 百合 同性愛 複数レビュー

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