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わたしの愛するスパイ小説―「東方美人」(かわい有美子)、他

 04,2009 23:30
ここここれは……なんて上質なスパイ小説なんだろう……!

――と、読みながら興奮が収まらなかった、かわい有美子さんの「東方美人」1&2巻。ここのところわたし、かわいさんの作品を読んで興奮していることが多いですね。

この作品、わたしが好きなスパイ小説の条件をしっかり満たしてもいて、それだからこそ、余計にわたしのツボが刺激されたのかもしれない。

興奮冷めやらないので、ちょっと予定を変更してこの作品のレビューを先にアップする! わたしの暑苦しい興奮におつきあいいただける方は、「read more」をクリックしてくださーい!
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198×年。KGBの若き情報員“ヴァレンタイン”ことアレクセイ・ヴァシーリヴィチ・レスコフは西ベルリンへの検問所を英国人のパスポートで通過した。アレクセイの最初の任務は同じくコードネーム“伯爵”という男に会うことだ。そして出会った“伯爵”ことエーリク・サエキは驚くほど鋭利で美しい男だった。アレクセイは西ベルリンでこのサエキと共に任務を果たさなければならなかったが、アレクセイには彼に言えない極秘任務があった…。旧体制時代のドイツを舞台にストイックかつ情熱的な想いが溢れるドラマティック・ロマンス。

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KGBの情報員アレクセイと上官のサエキは、西ベルリンで共同生活をおくり、任務を遂行していた。裏社会に生きる人間であることを感じさせないアレクセイと、完璧な美貌の下に、冷たく深い闇を抱くサエキ―。アレクセイはサエキに永遠の忠誠を誓い、サエキはエゴと知りつつも、自分の元からアレクセイを放せずにいた。そんな中、アレクセイに『濡れ事』の指令が下り、葛藤するアレクセイに、サエキはある決意をする。二人の愛は、さらなる局面へ―!旧体制時代のドイツを舞台にした壮大なドラマティック・ロマンス。待望の第二弾。

198×年の、それもベルリンという舞台設定が、もうドラマチックな予感全開。だって、ベルリンといえば東西冷戦の象徴である「ベルリンの壁」があった場所だし、そのベルリンの壁が崩壊したのが1989年、ソ連が崩壊したのが1991年だもの。

つまり、主人公のサエキとアレクセイは、共産主義体制の終末を予感させる雰囲気の中で生きているのだ。

スパイ小説といってもいろいろあると思うのだけど、わたしはどっちかというと、007みたいに華々しくカッコよく活躍しているものよりは、スパイという仕事に批判的で、スパイであることに疲れを感じながらも任務を遂行している、みたいなものの方が好き(007も好きだけどさ。というか、それほどスパイ小説を読んでいるわけじゃないんだけどさ)

当然、そんなスパイが登場するからには、作品がパァァッと明るいはずもなく――そこでわたしが好きなタイプのスパイ小説の共通点を考えてみた。

1.腹の探り合い、足の引っ張り合いをはじめ、ドラマチックな要素が絡んでるけれど、それは水面下でのこと。作品はあくまでも静かに進行する
2.硬質で重めの文章
3.閉塞感が感じられるも、どこか悲劇や破滅の予感を孕んでいるような雰囲気

こんな感じでしょうか。うーん、なんかこう、漢字が多くて黒々としているなぁ! でもスパイが活躍するんだもん。あんまりお気楽でノーテンキだと、説得力がないような気がするのよ。

ともかく、こういったわたしの好きな「スパイ小説の共通点」を、「東方美人」は完全に満たしている!――と思うのだ。

近寄りがたいほど感情を表に出さない、やたら攻撃的、むやみにフレンドリー、不気味なほど穏やか――サエキら、ベルリンにいるスパイたちは、周りを欺き、陥れ、裏切りもする任務から自分の心を守るため、自分なりの身の処し方を身に付けている。だからこそ、“仲間”といえども、どこかお互いに信頼できない不信感、猜疑心が引き立つ。

そんな中で、サエキのアレクセイに対する愛情は特別で、紛い物ではない真心が感じられる。アレクセイには自分の弱いところをさらけ出したいというサエキの願いと、アレクセイを守ろうとする思いが、読んでいて切ない。

二重スパイだった世界的ソプラノ歌手夫妻の殺害を巡る、アレクセイの葛藤。それを思いやるゆえのサエキの決断。夫妻の末路のくだりは、涙が出そうになった。

もちろん、アレクセイもまた、サエキを案じ守ろうとしていて、こういうところがBLの王道だなぁと思う。アレクセイ、読んでいてそのハンサムぶりがものすごくイメージがかきたてられるキャラで、ここなんて、読みながらゾクゾクした。

アレクセイの黒髪は濡れるとずいぶん官能的なものとなる。背は高いくせに、ずいぶん頭部は小さく形がいい。その頭の形が露になると、どちらかというとノーブルな印象のある顔立ちが一転して男性っぽさが強調され、深い湖のような藍色の瞳や彫りの深さなど、野性的な面が覗く。(東方美人2 P86)

――ね?<何が……

物語は198×年が舞台とされているけど、ブレジネフが死んで、ゴルバチョフが書記長に就任する前、恐らくアンドロポフかチェルネンコ政権の末期辺りなのかなぁ……と勝手に予測している。ゴルバチョフ登場、ソ連崩壊までもうすぐだよ!――とサエキとアレクセイにエールを送ってみる。

KGB、GRU、V局、MI6、BND、コードネーム――スパイものだー!と叫びたくなるような数々の言葉と、サエキたちスパイの行動(ターゲットを陥れるために関係を持って写真に撮る、さりげなくコンタクトをとるなど)が、いやがうえにも気分を盛り上げる。それにしてもかわいさんは、よく調べられているなぁと感心。

2巻の終わりで「3巻で完結」とあとがきに書かれているんだけど、どうも3巻は出ていないみたい。ギャー、お願いだから3巻を読ませて~! 続巻熱烈希望! ――と深夜に足をバタつかせたのだった。マジでお願いしますよ、続巻!


ところで、この作品を読み終わったあと、村薫の「リヴィエラを撃て」が頭に思い浮かんだ。
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全2巻。多分、MI6が出てきたからだと思う。「リヴィエラ…」もスパイは活躍していたけれど、やっぱりスパイというと、こっちの方が印象が強いかも。

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全2巻。もろにスパイ合戦。江口と島田の師弟関係は、「東方美人」でのサエキとアレクセイの関係のようなものなのかな。わたしとしては、島田には日野だろうと思っているんですが。

でも村作品、「李欧」もスパイが絡んでいるし、うーむ、スパイの登場頻度が高いのねぇ……<今さら。もちろん、どれもわたしの好きなスパイ小説の共通点をすべて満たしている。「李欧」は、例外的にちょっと明るめだけど。

そして村作品ではないけれど、やっぱり好きな共通点を満たしていて、個人的に「スパイが登場するといえば……」と思い出す率の高い小説はこれ。もちろん、「東方美人」を読み終わった後に、「リヴィエラを撃て」の次に思い浮かんだとも。

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これはもう、1958年の、ケネディ大統領就任直前のアメリカが舞台なので、CIAとKGBが暗躍しています。ここでも、主人公のウォルターを指導したスパイがチラッと登場する。スパイの師弟関係は、作家の創作意欲を掻き立てるんだろうか?

ついでにいえば、ここに挙げた4冊すべて、作中でゲイやバイセクシャルが登場し、重要な役割を果たすのも共通している。作家に同性愛者を登場させたくなる何かが、スパイものにはあるんだろうか? というか、同性愛が絡んでいるから、わたしにとってスパイ小説は印象深いのだろうか?

謎だ――。
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Tags: かわい有美子 小笠原宇紀 ライトグラフⅡ 村薫 ドン・ウィンズロウ 同性愛 複数レビュー

Comment - 3

2009.08.05
Wed
17:02

アラスカ #-

URL

私もこの「東方美人」が大好きで完結を待ち望んでいました。けれど、かなり前にブログか掲示板で、本の売れ行きがよくなかったので3巻は出せないという旨の事を語っているのを読みあきらめました。
あとはいつか同人誌で完結していただくのを待つだけです。

というか、「いのせんとわ~るど」(高村薫さんの合田刑事と加納がモデルではないかと思っています)も早く完結して欲しい!。

編集 | 返信 | 
2009.08.06
Thu
00:44

のんのん #-

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通りすがりですみません。
私もこの本、大好きなもので、つい。
3巻について、その後、ブログを拝見してたら、
多分、別の出版社から出るだろう…みたいなことを
書かれてましたよ。

順番的に今は行ってる仕事の合間で書かれるそうなので、
ちょっと時間がかかるそうですが…(^^;)

編集 | 返信 | 
2009.08.06
Thu
01:46

lucinda #-

URL

>アラスカさん
3巻は出ないのかー!それも売れ行きのせいで……!とガックリ膝をついていましたが、のんのんさんからのコメントを読むと、ちょっと希望が……!
しかし、「いのせんとわ~るど」、めっちゃ気になるじゃないですか! こちらは完結される見込みがあるんですかね?
かわいさんの作品、「闇滴る」もコミックで続いているけど小説では続きを読めず、なんかこう、「残念!」と唇をかむことに、ちょこちょこ遭遇するなぁ……と思います。いろいろあるんだろうなぁ……。

>のんのんさん
希望の持てる情報をありがとうございました!時間がかかっても、出るなら読みたいですねー。その日を指折り数えて待ちます……。

編集 | 返信 | 

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