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【勝手に祭り】そのディテールが気になる―高塔望生祭り その1

 28,2009 23:21
高塔望生さんの新作「サテュロスの蹄」を読みながら、ムムム……とわたしは唸っていた。

――やっぱり高塔作品は、アイテムのディテールに凝っているというか、具体的なんだよなぁ――

例えば、キャラたちがつける香水。使っている車。あるいは料理。どんな銘柄なのか、どんな材料が使われているのかがはっきり書かれているばかりか、何らかのこだわりが感じられて、読んでいてもう、めちゃくちゃ気になって気になって!

以前も、香水に注目して取り上げたことがあったけど、これまでどんな香水や車が登場していたっけ……と思い返していたら、一挙に洗い出したくなり、深夜にも関わらず調査開始。

高塔作品、実はコンプしているため、新作を含めた11冊、付箋をつけながらチェックしているうちに、いつものごとくついうっかり読み直しちゃったりして、更新が滞ってしまったのだった。いかん。

P1010526.jpg
一体わたしは何をやっているのでしょう……と、時間が経つほどに頭を抱えたくなる調査の痕跡


そんなわけで、ここで久々に、“勝手に祭り”を開催します。祭りなんて、3年ぶりだよ!

例のごとく、長々しいのでご注意くださーい!!
さて、高塔作品に登場するアイテムで、個人的に印象的なのは香水と車と酒なのだが、そのほか、料理や服など、おお!と思ったものを発行年順に作品別にまとめてみた。

『灼熱のブラッディー・マリー』 (ビーボーイノベルズ、2003年)
灼熱のブラッディー・マリー (ビーボーイノベルズ)灼熱のブラッディー・マリー (ビーボーイノベルズ)
(2003/12/18)
高塔 望生

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大手電気メーカーの環境事業部本部長×産業情報部員。実は中学からの幼なじみ。

香水、車、いずれも発見できず。そういうこともあるのか……!
〔酒〕グレンモーレンジ 22年(ウィスキー)、カルヴァドス・コーヒー(カルヴァドス入りコーヒー)
グレンモーレンジ
これがグレンモーレンジ。22年ものかどうかは不明

高塔作品には珍しく、香水も車も特定の銘柄が出てこないデビュー作品。香水なんて影も形もないもんね。だけどそれがかえって、「メーカーに勤める堅気のサラリーマン」という雰囲気が出ているような。単にこの頃はまだ、アイテムに凝るというスタイルが確定していなかっただけかもしれないけど。


『モード・アムール』
(ビーボーイスラッシュノベルズ、2004年)
モード・アムール (ビーボーイスラッシュノベルズ)モード・アムール (ビーボーイスラッシュノベルズ)
(2004/04/15)
高塔 望生

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オーチクチュールブランド社長×マーケティングディレクター

〔香水〕シャネル「アンテウス」(攻め)
〔車〕ナシ
〔酒〕ニューヨーク(カクテル)、プザム・カレッサー(ブランデーベースのカクテル。「心に秘めた愛撫」という意味らしい)、エーデル・ピルス(ビール)
〔ファッション〕濃紺にブラウンストライプのスーツ、ドニゴールツイードのタイ(攻め)、「パウダーピンクのもみ紙とシルクシフォンのドレスに深紅のバラのプリザーブドフラワーの花飾り」など、和紙と布を組み合わせた舞台衣装

舞台がオートクチュールのアパレルメーカーでありますゆえ、ファッションにも注目。「ドニゴールツイード」って! 「舞台衣装」というのは、メーカーのデザイナーが手がけた、世界的に有名な演出家の舞台の舞台衣装。和紙と布の組み合わせの説明が、「うーん、何だか凝ってるなぁ!」と感じられて取り上げてみた。あ、「エーデル・ピルス」はあんまり新鮮味がないけれど、これを注いだときの「エンジェル・ミスト」ってウンチクに感心してしまったのだ。まったく、高塔さんはいろんなことをご存知だなぁ!

『烈日の残影』(ビーボーイスラッシュノベルズ、2004年)
烈日の残影 (ビーボーイスラッシュノベルズ)烈日の残影 (ビーボーイスラッシュノベルズ)
(2004/12/20)
高塔 望生

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元検事の弁護士×弁護士を目指す司法浪人生

香水、車、いずれも、またしても発見できず。
〔酒〕ヴェリー・オールド・セント・ニック 20年(バーボン)、シャトー・ラフィット(赤ワイン。フランス)
〔料理〕厚揚げの唐辛子煮込み、パキスタン風カレー

この作品でも香水と車はこれというものが登場していない。むむぅ……。しかし酒はしっかり登場している。そして料理は、どちらも材料や作る過程のワンシーンが書かれていて、読んでいて食べたくなった。「パキスタン風カレー」は、高塔さんのブログに作り方アリ。

『愛しうる限り愛せ』(ビーボーイスラッシュノベルズ、2005年)
愛しうる限り愛せ (ビーボーイスラッシュノベルズ)愛しうる限り愛せ (ビーボーイスラッシュノベルズ)
(2005/04/16)
高塔 望生

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財閥総帥×バーテンダー

〔香水〕ブルガリブラック(攻め)
〔車〕プジョー307CC(赤。攻めから受けへのプレゼント)、メルセデスSLK55AMG(イリジウムシルバー。攻め)、レンジローバー「ウェストミンスター」(黒。イギリス旅行で購入)
〔酒〕アブサン(リキュール)、ルイ・ロデレール クリスタル(シャンパン)、1959年のラフィット・ロートフィルト(赤ワイン。フランス)
〔料理〕ココナッツミルクのフレンチトースト、ラム酒入りバナナのカラメルがけ
〔音楽〕シューマン「クライスレリアーナ」、シューベルト「ピアノソナタ第21番」、リスト「愛の夢 第3番」、ショパン「プレリュード第7番」

バーテンダーは元ピアニストのため、ピアノ曲が多数登場。高塔さんはロマン派がお好きなようですね。もちろん、ピアノはスタインウェイですことよ。ワインの「ラフィット・ロートフィルト」は、「烈日の残影」にも登場したけれど、ここで登場した1959年のものは、楽天で14万9800円の値段がついておりました。知る人ぞ知る年代だったのかしら!? 車へのこだわりは、この作品ごろから出てきたのかも。

『水に燃える月』(ビーボーイスラッシュノベルズ、2005年)
水に燃える月 (ビーボーイスラッシュノベルズ)水に燃える月 (ビーボーイスラッシュノベルズ)
(2005/08/17)
高塔 望生

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ヤクザ×検事(その後どちらも辞職し、最終的にはバーテンダー×弁護士に)

〔香水〕ゲラン「エリタージュ」(攻め)
〔車〕ナシ
〔酒〕 ブラックソーンサイダー(りんごの酒)、グラッパ、バローロ(赤ワイン。イタリア)、エヴァンウィリアムズ(バーボン。22年もの)
〔ファッション〕一流のテーラーで生地から選んで仕立てたような灰褐色のダブルスーツ(攻め)、ジンターラのストレートチップ(ライトブラウン。攻め)、
〔料理〕プレーンオムレツ

この作品では酒が華やかな感じ。また、ヤクザの攻めもオシャレだ。ジンターラのストレートチップは、作中で10万近くすると説明されている。「オシャレは靴がポイント」とはいうけれど……! でもそんな攻めが、こだわりの車を所有していないのが残念。出所直後だし、すぐにヤクザをやめたからなの?

『狼は蒼い月を抱く』(アズ・ノベルズ、2007年)
狼は蒼い月を抱く (アズ・ノベルズ)狼は蒼い月を抱く (アズ・ノベルズ)
(2007/01)
高塔 望生

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元ヤクザの便利屋×外科医

〔香水〕甘さをおさえたスパイシーな香り(攻め)
〔車〕BMW(シルバーグレイ)
〔酒〕グラピヨン(赤。ジュース)、フィーヌ・シャンパーニュなどのオークションボトル

結構地味なイメージ。「闇治験」というヘヴィーな要素を絡めた医療サスペンスゆえなのかしら? でも、攻めがつけている香水が気になるなぁ……。きっと重めの、ヨーロッパ系のブランドのような気がする。

『真夜中に揺れる向日葵』(アズ・ノベルズ、2007年)
真夜中に揺れる向日葵 (アズ・ノベルズ)真夜中に揺れる向日葵 (アズ・ノベルズ)
(2007/10)
高塔 望生

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刑事×ヒヨコ弁護士

〔香水〕ダンヒル「エキセントリック」(攻め)
ダンヒル
トップノートはグレープフルーツの香りがするということで、爽やかな感じかしら

〔車〕フェラーリ642スカリエッティ(シルバーグレー)、マセラティ・クーペ(濃紺)
〔酒〕ダルウィニー(ウィスキー。15年もの)
〔料理〕鮭缶鍋

車はハデだけど、すべて被疑者である医師の車。つまり、受け攻めいずれかの車ではないのです。公務員である刑事はともかく、まだまだヒヨッコの弁護士が車を持っていないのは現実的でよろしくてよ。「鮭缶鍋」は、鮭缶を丸々使った鍋らしく、イラストレーターの高峰顕さんも気になっていた模様。これも、高塔さんのブログにレシピが掲載されています。

『殉情な愛人』(ビーボーイノベルズ、2008年)
殉情な愛人 (ビーボーイノベルズ)殉情な愛人 (ビーボーイノベルズ)
(2008/03)
高塔 望生

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国際会議運営会社社長×翻訳者。実は大学時代の恋人同士。

〔香水〕ダビドフ「クールウォーター」(攻め)、ラルフローレン「ロマンス フォーメン」(受け)
〔車〕マセラティ・クアトロポルテ(シルバーグレイ。攻め)
〔酒〕ラフロイグ(ウィスキー。30年もの)
〔ファッション〕ホワイトベースにグレイでハウンドトゥースを施したジャケットに、ダークグレイのスラックス。濃いめの臙脂のポケットチーフ(攻め)
〔料理〕トマトジュースにモッツァレラチーズを入れた「イタリアン雑煮」、アクア・コッタ、真鯛の昆布風味サラダ、アジの大葉ペースト和えをのせたカナッペ、

あ、アイテムがフルスロットルって感じですね。実をいうと、この作品を読んだのが、高塔さんのモノへのこだわりを感じた初めだったのでした。香水は、受けがつける香水が初めて登場ですね。料理はどれもおいしそう……。「アクア・コッタ」と「真鯛の昆布風味サラダ」は、高塔さんのブログにレシピありです。

『巡り逢いからもう一度』(B-PRINCE文庫、2008年)
巡り逢いからもう一度 (B‐PRINCE文庫)巡り逢いからもう一度 (B‐PRINCE文庫)
(2008/09/06)
高塔 望生

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古美術商×大学教授

〔香水〕アスプレイ「アスプレイ パープルウォーター」(攻め)
〔車〕ジャガー・デイムラー(黒・攻め)
〔酒〕アンリ・ジロー・フュ・ド・シェーヌ(シャンパン)、シャテルドン(ミネラルウォーター)、ロジェ・グルー・アンセストレール(カルファドス)、リモンチェッロ
〔ファッション〕ミッドナイトブルーのスーツにブルーブラックのソリッドタイ(攻め)
〔料理〕ザバイオーネ、丸麦と里芋のスープ

こちらもアイテムがフルスロットル。香水の「アスプレイ パープルウォーター」は、イギリス王室御用達ブランドの香水ということで、留学やら骨董品の見せ方やら、何かとイギリスと関連しているストーリーのディテールにピッタリじゃないでしょうか。車もイギリスブランドだしね。この作品は料理が充実しているのもポイント。「リモンチェッロ」「ザバイオーネ」、「丸麦と里芋のスープ」は、高塔さんのブログにレシピあり。ちなみに「丸麦と里芋のスープ」は何度も作りました。激ウマです。

『愛執に舞い堕ちる』(アズ・ノベルズ、2009年)
愛執に舞い堕ちる (アズ・ノベルズ)愛執に舞い堕ちる (アズ・ノベルズ)
(2009/03)
高塔 望生

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能楽プロデューサー×能楽師

〔香水〕ブルガリソワール(「ブルガリ プールオム ソワール」が正式名称? 攻め)、オー・ド・カルティエ(受け)
〔車〕BMW(赤。攻め)
〔酒〕ナシ
〔ファッション〕白地模様大口袴と紺地の長絹、赤地の厚板、赤地の花筏、揚羽蝶柄の腰帯、薄紫の太刀の柄巻(「清経・恋之音取」装束)
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「清経・恋之音取」のワンシーン

受けがつけている香水「オー・ド・カルティエ」は、男女問わず使えるグリーン・アロマの香水らしい。そして赤いBMWって、いかにも甘ったれな攻めが好みそう。こういうところで、キャラの性格付けが暗示されているような。ファッションの能の装束は、受けが弟子に見立てたもの。

『サテュロスの蹄』(B-PRINCE文庫、2009年)
サテュロスの蹄 (B‐PRINCE文庫)サテュロスの蹄 (B‐PRINCE文庫)
(2009/06/08)
高塔 望生

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投資会社社長×ニットメーカー社長

〔香水〕エルメス「ロカバール」(攻め)、プラダ「プラダマン」(攻め)、プラダ「インフュージョンオム」(受け)
〔車〕ポルシェ911カレラ4カブリオレ(シルバーメタリック)、マセラティ・クアトロポルテ、アストンマーティンDBS(シルバーグレイ)※すべて攻め。
〔酒〕コニャック、百年の孤独(麦焼酎)タリスカー(ウィスキー。10年もの)、
〔料理〕ファルファッレと蒸し鶏のサラダ レモンドレッシング和え

香水は、受けが「インフュージョンオム」を好きなのを知り、攻めがブランドを揃えようとエルメスからプラダに変更したという、香水で2人の関係がわかる設定。オトナだなぁ……。車も、攻めはバシバシ変えてますな。今回、酒に初めて焼酎が出てきた。


うーん、こうしてみると、わたしが思い込んでいた香水や車のこだわりは、どの作品にも表れているというわけではなさそうですね。それに、香水や車の具体的な銘柄は、初期の作品にはあまり見られなかったし。調べてみなくちゃわかんないもんだ。また、わたしは見逃しているけど、ほかの人には気になるアイテムもあると思う。

そんななかで、酒の銘柄はデビュー作品からほぼずっと具体的に書かれているなぁ……。ここで取り上げられた酒は、大抵、攻めと受けが親密になるきっかけとして、あるいは、2人の親密さを表す道具として用いられている。

ワインやカクテルを除いてウイスキーやバーボンなどといった蒸留酒が多いのは、男っぽさを演出する意味があるような気がしないでもない。ワインやカクテルに比べて、ウイスキーやバーボンって、ちょっとハードでヘビーなアルコールって感じ、しませんか?

車は、スポーツカータイプが多い。色はクールで男っぽいシルバー系。そう考えると、赤いBMWに乗っている「愛執に…」の攻めは例外かも。

そして香水は、攻めに設定されていることが多く、アンバーが効いたスパイシー系、あるいはウッディー系が特徴かも。この中で知っている香りもあれば知らない香りもあるけど、香水の紹介を読んでいて「男っぽい……!」と思ったのは、ゲラン「エリタージュ」かなぁ……。ジャン=ポール・ゲランが56歳の時、意中の女性に気に入られたいがために創った香水だとも言われております……おフランスだ……。
エリタージュ
ウッディ・スパイシーが基調のエリタージュ。女性をエスコートするのに相応しい香りだそうですよ

料理は、ほとんど攻めが受けのために料理するのも興味深い。受けが料理しているシーンは、「烈日の残影」でしか見られなかった。攻めが料理上手……いいなぁ、いいなぁ!

そんな高塔作品の攻めを乱暴にまとめて評するならば、強引で、自信にあふれた、場合によってはわりと傲慢な“俺様”な感じなんだけど――受けに一途で、単に自分勝手なワガママな男ではないとといったところかな。

彼らがスパイシーなアンバー系の香りを漂わせ、スポーツカーを乗りこなし、蒸留酒を好んで、受けのために料理し――うーん、やっぱり、渋好みというかオトナの王子様系かしら?

こういったディテールを追いかけるのが楽しいのはもちろんなのだけど、これに加えて高塔作品の場合、キャラたちの仕事の様子がガッツリ描かれ、その職業に興味を持たせてしまうところがすごい。メーカー勤務のリーマン、弁護士、医者、古美術商などなど、まるで 経験されているかのような饒舌な展開に、思わず唸ってしまうのだ。

次は、わたしの好きな高塔作品のレビューをアップします。
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Tags: 高塔望生 勝手に祭り 桃山恵 石田育絵 有馬かつみ 左崎なおみ 高峰顕 カワイチハル ムラカミユイ

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