BLの不思議ちゃん?―「冷たいシーツの上で」「君を抱くまなざし」(たけうちりうと)

 21,2009 23:28
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ああ、気分が盛り上がる!

さて、小林典雅作品が「BLの規格を外れている」と評されることがままあるようだけど、実はたけうちりうと作品も、ちょっぴりBLの規格を外し気味なんじゃないかと思っている。

例えば、つい最近読んだ本はこれなのだけど――。

冷たいシーツの上で (SHYノベルス)冷たいシーツの上で (SHYノベルス)
たけうち りうと

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大学付属病院でレントゲン技師として勤める立科怜は、研修医の厳原慈乃が気になって仕方がない。男としての強烈な色気、そして医師としての類い希な能力を持つ厳原。厳原のすべてが知りたい! そんな怜に厳原は冷たい言葉を投げつけた、「私に近づくな」と…。

あらすじ(or 内容紹介)を読むと、一見、ごく一般的なBLのように思える。「そんな怜に厳原は冷たい言葉を投げつけた」のくだり辺りは、いかにもドラマチックな展開が待っていそうだ。

この作品の場合、“夜の救急病院”“搬送されてきた、刺傷を負った警察官への診療拒否と再搬送要請”という出だしも、どことなく緊張感をはらんでいるように思える。

ところが――ドキドキしながら読み進めるうちに、おや?と思うのだ。ストーリーにはしっかり引き込まれている。読んでいて容易に展開が読めるわけじゃない。それなのに、あれ~?と思ってしまうのは、緊張感はいつの間にか、そらっとぼけたような飄々としたのんびりムードに取って代わり、深刻さをかわされているような不思議な気持ちになるから。

濡れ場はもちろんあるのだけど、それもごくあっさり。でもよーく読んでみると、結構きわどく描写されているのだが、なぜか印象は微エロ。攻めの厳原の色気も、読んでいてちゃんと伝わってくるがしつこさはない。

なぜ!?

シリアスかつドラマチックに展開すると思われたのに、どこかおかしみが感じられる文章に時にニヤニヤしながら読み続け、思いがけぬ結末に「はぁー」と唸って、本を閉じる。ある意味、ドラマチックな展開が読み手を待っているといえるかも。

多分、多くのBLなら、出だしの緊張感が維持されているようなテンションが保たれている(あるいは保とうと努力されている)と思うのだ。それが時に、途中で破綻したとしても。でもたけうち作品は、テンションがいつの間にかすりかわっているのがどうにも不思議で仕方がない。

あんまり不思議なので、どうして「狐につままれた」ような気持ちになるのか、理由を考えてみた。

■怜や厳原、厳原の指導医・安藤、安藤の教え子・DJという主だったキャラたちのセリフのやりとりに、軽口や冗談がふんだんに織り込まれている。
■主要キャラたちのセリフが、キザっぽさギリギリ手前な印象
■エロシーンをはじめ、オノマトペがほとんど使われていない

――以前、オノマトペの使用率からエロシーンのエロさを考えたことがあったけど、やっぱりオノマトペを使わないと、“品”が出てくるものなんだろうか? のんびりおとぼけムードは、たけうちさんの本質ゆえなのかしら。

これも、「狐につままれた」感いっぱいの作品。読み返してみると、この作品でも、主要キャラたちのセリフのやりとりは洒落ていて、全体にオノマトペが目立たない。

君を抱くまなざし SHYノベルス君を抱くまなざし SHYノベルス
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学生・一之瀬大河はある海洋遺跡の調査のため沖縄を訪れ、そこで海洋博工事の中心的存在・司馬北斗、北斗の親友であり中央のエリート官僚・堂島忠相と出遭う。遺跡の保存と工事を巡り対立する大河と北斗は、強く反発すると同時に強く惹かれて!?

あらすじからは絶対に、作品に漂うどことなくユーモラスでとぼけた飄々さは窺えないと思う。

しかし、わざと核心を外しているような文章運びのせいか、最後まで、遺跡とトンネルはどうなるのか? 大河と北斗はちゃんとくっつくのか、展開が読めずに密かにドキドキさせられる。

そして読後は、入り組んだ人間関係もさらりと描かれた、ほのぼのタッチのヨーロッパ映画を見終わったような気分になるのだ。

――たけうちりうとさんに、また一本取られちゃったなぁ――

と、作品を読み終わるたびに思ってしまう。シリアスなストーリー内容を、ただシリアスに展開させない筆力は、たけうちさんの余裕と懐の深さのなせる業なんじゃないかな。

#ところで、「君を抱くまなざし」のエリート官僚・堂島は、国土交通省に所属しているのだが、「なつかない男」にも国土交通省の、ちょっとひねくれたエリート官僚が登場し、主人公の受けを翻弄する。どうして国土交通省!? たけうちさん、何か関わりをお持ちなのかなぁ……。

#しかし「なつかない男」でも“ドキドキ→飄々のムード転換”を楽しんだものの、どうしたことか女性キャラの佐喜ちゃんが鼻に付いて、興をそがれたような気分になった。佐喜ちゃん、「畑に種をまきましょう」の菜々子に次ぐ、“My憎々しいキャラ”だな。
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Tags: たけうちりうと 蓮川愛 石原理 複数レビュー

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