スポンサーサイト

 --,-- --:--
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

「上海金魚」「透過性恋愛装置」(かわい有美子)

 11,2009 23:44
先週末にひいたカゼの快復が一進一退を繰り返し、なかなかスッキリしない。しっかり睡眠を取ると調子がいいようなので、これ幸いと早くベッドに入ってみても――。

スンナリ寝られません……。それで仕方なく本を読み、面白くなると眠いのを我慢して読み続け、結局睡眠時間はいつもより少なめに――と、もうまるでだめ子状態。でもノッてくると途中でやめるのはいかにも惜しいんだもの。

「上海金魚」「透過性恋愛装置」も、こうして途中でやめられなかった作品なのだった。

ネタバレを含むので折りたたみます。
上海金魚 (CROSS NOVELS)上海金魚 (CROSS NOVELS)
かわい 有美子

笠倉出版社 2003-05
売り上げランキング : 216183
おすすめ平均

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

しっとりとした花のような色香を持つ水端佑季の恋は、初めて訪れた異国の地、上海で終りを告げた。男の狡さに気付きながら、嘘を信じていた佑季は突然の別れに傷付き、旅先で出会った男、滝乃と体を重ねてしまう。滝乃の包み込むような優しさに、つかの間の関係だとわかっていても、心惹かれることを止められない佑季だったが…。

中国も南にいくほど、湿度が高くじっとりと暑いイメージがあるのだけど、そんなムードが、この作品には漂っているような気がする。上海、という地名に惑わされちゃったのかしら? ――いやいや、妻子ある男に捨てられた佑季の佇まいや、滝乃とのお互いの出方を窺って少しずつ間合いを詰めていくようなやりとりも、なんだか湿度の高い、しっとり感が感じられるような気がするのだ。

大人しくて控え目で、なんだか“奥ゆかしい”と言いたくなるような佑季というキャラの、このしっとり感への貢献度はかなり高いと思う。だって、滝乃へ傾く気持ちを抑えようとしたり(結局滝乃が辛抱たまらず佑季を誘った)、帰国して滝乃への連絡をためらい続けたり(結局滝乃が偶然に佑季を見つけて再会した)、偶然再会した滝乃に人目を気にしてぎこちなく対応してしまったりと、何かこう、息を詰めて状況をうかがっている感じがなぁ……まるで水の中から水面をうかがっている魚のような。

まさか、タイトルの「金魚」には、そんな比喩が込められていたのかしら……と勘繰ってしまったのだった。ま、佑季は一歩間違うと、ちょっと粘着質な人かも。

こんな奥ゆかしい佑季が、滝乃みたいに話し上手で勘も良くて気遣いもできる、スマートな男と親しくなったら、そりゃあ惹かれちゃうに違いないよ。

ストーリーは、静かに淡々と進む。上海の情景の描写も素晴らしいし、二人が帰国後に再会して愛し合った後、また会おうと約束する物語の終わり方もほんわり温かい気持ちになる。

ああ、いいお話だったなぁ……と思っていたのだけど、この作品の連作「透過性恋愛装置」を読んだら、俄然、こちらの方には「萌え」を感じてしまったのだった。

透過性恋愛装置 (CROSS NOVELS)透過性恋愛装置 (CROSS NOVELS)
かわい 有美子

笠倉出版社 2007-05
売り上げランキング : 3424
おすすめ平均

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

若手建築士として注目を浴び、己れのルックスにも自信を持っていた北嶋は、とあるコンペでホテルマンの牧田と出会う。その落ちついて控えめな物腰を軽んじ、コンペで最優秀賞を逃したことで牧田にいちゃもんをつける北嶋だったが、常に大人の余裕を持つ牧田に諫められ高慢な鼻をへし折られてしまう。それをきっかけに牧田の人間性に触れ、恋に落ちてしまった北嶋は、思い付く限りの策を弄するのだったが…。

イラストも同じ花本安嗣さん。花本さんのイラストは、この2作にピッタリ合っていると思う。

さて、滝乃の高校時代の同級生である北嶋が、もうどうしようもないほど傲慢で自信過剰でプライドの高い男でねぇ……。そんな北嶋が、「腰にクる低音ヴォイス」の持ち主・牧田に恋をして、牧田に会うためにわざわざ早起きして遠回りしたり、すでに終わったコンペの設計案を練り直したり、服装を気にしたり――とオタオタしているさまが、本当にス・テ・キ

そして俺様系王子な北嶋と、ゲイバーのバーテンダー・登との噛み合わないアホなやりとりが、これまたツボなのだ。登は、佑季の高校時代の同級生で、「上海金魚」にも登場するんだけど、いやぁ、絶対「透過性…」での方がイキイキしているって! おまけに「角刈りでオネエ言葉」ってのが、山田ユギさんのマンガに出てくるママを髣髴とさせる感じ。わたしの頭の中では、あのママのイメージで完全に固まっているもんね。

BLでは、キャラに「仕事ができる」という特徴(?)をつけがちだけど、牧田は本当に仕事ができそうだなと、読みながら感心した。アポなしでクレームをつけにきた北嶋への説明は、北嶋とともに納得してしまったもの。

そんな牧田に北嶋が惹かれるのは無理もなかろう……って、「上海金魚」でも、佑季が滝乃に惹かれるのに深く納得したわたしだけど、キャラたちの恋の進展にワクワクしていたのは、断然、牧田×北嶋の方だ。それはなぜかというと――先に書いた、「俺様系王子の恋をしてアタフタと、でも一生懸命な姿」に萌えたから、だと思う。

「上海金魚」はよくできた作品だし、いいお話だと思うけれど、わたしには萌えが足りなかった。なんだか、「いい人なんだけど、恋愛対象じゃない」というおなじみの言い訳みたい

――きっと、BL以外のジャンルの小説でも、似たような思いを抱くことはあるはず。だけどBLだと、それを「萌え」という一言で納得できる。

「萌え」って、便利な言葉だなぁ……と妙なところで改めて感心したのだった。

#両作品の同人誌も読んだのだが、北嶋の登場がやたらと多く、しかも印象的だった。著者のかわいさんにとっても、北嶋は動かしやすいキャラなのかも。
関連記事

Tags: かわい有美子 花本安嗣 連作レビュー

Comment - 0

Latest Posts

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。