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狂犬(剛しいら)

 01,2009 17:30
剛しいら新作は、キャラ文庫ということで、ちょっと油断していた。

――ヘンな意味ではなく、「顔のない男」シリーズとか「仇なれども」とか「命いただきます!」とかとか、キャラ文庫での好きな作品はたくさんある。だけど、まさかレーベルを超えて思いがけない人物が(気配だけ)登場しているなんて! 欣喜雀躍の大興奮。

もちろん、作品自体にも大興奮なのだった。

ネタバレを含むので折りたたみます。
狂犬 (キャラ文庫)狂犬 (キャラ文庫)
有馬かつみ

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何にでも食らいつく凶暴な男―あだ名は“狂犬”。警視庁テロ対策課勤務の立佳は、その男・鬼塚にたった一人で接触する羽目に!元傭兵の鬼塚は、秘密裏に入国した要注意テロリストの情報を唯一握っているらしい。しかし鬼塚は「服を脱いで這いつくばれ」と初対面の立佳を、銃で脅しながら強引に抱いてきて…!? 硝煙の匂いをまとう男と、暗殺の恐怖に身を晒す。緊迫と官能の三日間―。

大体、キャリアとはいえまだ配属2年目のペーペーな立佳(はるか)が、元傭兵の警察からマークされているような鬼塚に一人で接触させられるなんてありえないだろ!――などという突っ込みも、今回は慎まなければなりません。なぜって、そこにストーリーの伏線が張ってあるから。

立佳が鬼塚の元を訪れてから発生する、不審なテロ事件は、小泉の仕業なのか? 小泉の目的は何なのか? 小泉の背景には何がついているのか?

――いろいろな疑問をはらんで、ストーリーは緊迫しながら進んでいくのだが、そこに登場するいくつもの人間関係が、あまりに魅力的。

まず、鬼塚と、鬼塚の傭兵時代の同僚にしてテロリスト・小泉との愛憎入り混じった因縁。ラストが近づくにつれ、小泉の鬼塚に対する歪んだ乙女のような気持ちに、ちょっとほだされそうになってしまう。そして鬼塚と立佳が少しずつ距離を縮めて心を開いていく様子。互いの傷を癒しあいつつ、互いを守りあおうとする一生懸命さが伝わってきて、この対等な感じはまさにBL!と膝を打ちたくなること請け合い。

「十五年、あいつの頭の中にいた俺じゃなくて、ほんの数日一緒にいただけの、あんたを助けたんだよ」

という、ラストの小泉の立佳への言葉に、鬼塚を真ん中にした3人の関係がよく表れている感じ。ゲイで絶倫の鬼塚を振りつつも忘れられなかった不能の小泉。小泉の想いを深く考えることなく、小泉の目の前で別の男をバンバン引っ掛けてはヤリまくっていた鬼塚。リビドーってやつは……。

そのほか、鬼塚の部下・森下の鬼塚への忠誠ぶりは、剛作品おなじみの、まさに「男惚れ」という感じだし、小泉を追うCIA捜査官・グランドと鬼塚のやりとりも硬派な雰囲気で悪くない。

加えて、鬼塚と関係している日本のヤクザというのが、クールで淫靡な辰巳の兄貴がボスに君臨している「傾正会」だし、森下はもともと、「東雲塾」出身。そう、辰巳のストイックな舎弟・中村が所属し、「ライオンを抱いて」の攻め・宍戸将英が主催する右翼の私塾だ。

――同人誌ならともかく、商業誌でこんな風に他作品と密かにリンクしているのを見つけると、猛烈に嬉しくなるのは、わたしだけですか!?

これほど魅力的なキャラの関係性の中で、唯一パッとしないのは、立佳の所属する警察ぐらい。この作品はもちろんだけど、「はめてやるっ!」にしても「ライオンを抱いて」にしても、いずれもダークサイドの人間が主人公ゆえか、“警察”が、頭でっかちの、小回りのきかない愚鈍な組織として、そして警察官は利己的な欲求を抱えるスノビッシュな人物として、皮肉っぽく描かれているのが面白い。もしかしたらこういう一連の剛作品、BLのピカレスク、といってもいいかも。

正直なところ、鬼塚と小泉の追いかけっこや、警察の陰謀などは、ページ数の制限のせいか、ちょっと物足りない感じはある。そうねぇ、いろいろディテールにこだわったら、上下2巻ぐらいあってもおかしくない内容じゃないかしら。そうすると、ラストの小泉の告白も、もっと深く感動できたかもしれない。でもそれをギュギュギューッと1巻にまとめて、なおかつ満足させてくれるなんて、ただただ素晴らしくありがたい。

さて、この作品を読んでいる途中、鬼塚と立佳は非常に対称的に描かれているなぁ……と思うことが何度かあった。

戦いの中で自分の知識と腕をフル活用して生きてきた鬼塚と、旧家に生まれ“エリート”組織の中で従順に生きるよう訓練されてきた立佳。

どちらも根本的なところは、「大人に虐待されてきた子ども」という共通点があるものの、鬼塚は明らかに肉食獣的で、立佳は草食獣的だ。今流行の「草食系」とは大分意味合いが違うけれど。

そういう対比を感じながら思い出していたのが、最近読んだこの本。

ママ、大変、うちにコヨーテがいるよ!ママ、大変、うちにコヨーテがいるよ!
高見 浩

角川書店 2005-07-30
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ハリウッドの丘に住む若きコヨーテ、アントワン。自由に森を駆けめぐる生活をこよなく愛しているが、飼い犬のバディと知り合ったのをきっかけに、二人の立場を入れ替えることに……レナード節健在の小気味よい童話。

もう、わたしが大大大スキなエルモア・レナードの、まさかの動物ファンタジー。野生のコヨーテ・アントワンが、かつて映画で大活躍した飼い犬のジャーマンシェパード・バディの元へ潜り込んで飼い犬のフリをして暮らしてみたり、逆にバディがアントワンとともに、コヨーテのような暮らしをしてみたりする。

アントワンのワイルドさと、バディの、ちょっとやさぐれ気味ではあるもののソフィスティケートされた物腰との対比が、何だか「狂犬」の鬼塚と立佳の対比に似ているような。

結局、アントワンもバディも、自分の元の場所で生きていくことを決意するのだが、それよりも内心残念だったのが2匹の関係。鬼塚と立佳は、互いの傷を癒し合う関係になったけど、アントワンとバディは、張り合ったり助け合ったりしながらも、どこからどう見ても「友情」で収まっていたのんだよなぁ……。もっと腐の匂いがするかと思っていたので肩透かし。まあ、BLじゃないんだから当然なんだけど。

ただし、バディと共に飼われていて、ドッグ・ショーの女王でもあるプードルのミス・ベティを挟んだ3匹の関係は、無駄なお色気がなくてちょっとやおいくさい。いえ、レナードは男女の関係でもやおいくさくて、そこが好きなんですけどね。
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Tags: 剛しいら 有馬かつみ エルモア・レナード 警検麻ヤ 複数レビュー 草食男子

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