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ミルク

 13,2009 23:22
映画「ミルク」をようやく見てきた。
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ショーン・ペンが、生前のハーヴェイ・ミルクそのままの熱演!という前評判はウソじゃないと思った。だって、確かにペン、これまで見たどの作品とも違って、まるで別人だったんだもの。

笑顔で、親しみやすい雰囲気で、ちょっとナイーブな感じ。

これまで見た作品では大抵、深刻そうに眉間にシワを寄せていて、ちょっと近寄りがたい気難しそうなムードを醸し出していた。笑顔って、印象に大きな影響を与えるんだなぁ……と、妙なところで実感したりして。

ペンの演技がミルクそのものというなら、ミルクはあんな風にいつも笑顔でユーモアを忘れない人だったんだろうなぁと思う。

映画自体、素晴らしい作品で、すごく感想を書きたいと思いつつも、でもどう書いたらいいんだろう……と、ちょっと考えあぐねてしまった。そのせいか、まとまりのないボソボソ感想になったので、ここから折りたたみます。
作品は、1972年、恋人とサンフランシスコに移り住んだミルクが、やがてゲイや有色人種、シニア層など社会の弱者の声を伝えようと、政治の世界に足を踏み入れ、1978年、同僚に射殺されるまでを描いている。

全然政治には無関係だった男が、ゲイであることを公言し、マイノリティたちの生きる権利を守ろうと政治の世界に切り込むなんて、本当に勇気のいることだし、生半な気持ちじゃやり通せない。おまけに、嫉妬と重圧に苦しむ同僚の暴力によって、反論する間もなく、志半ばで人生は断ち切られるのだ。

――こう書くと、ミルクを悲劇のヒーローとして描いているようだが、決してそうではない。ミルクが成し遂げようとした変革や、ミルクが人々にもたらした(もたらそうとした)希望こそを、ミルクの死をも乗り越えて訴えている感じ。だからこそ見終わった後、悲しさも感じたけれど、同時に、これからがんばろうというような、ポジティブな気持ちも実感したのだと思う。

そして、何よりもわたしが心を打たれたのは、ミルクの弱さや悩みも描かれていたこと。

恋人となるスコットを駅でナンパし(これが電光石火のごとき早業)、40歳の誕生日を迎えて「40年間、まだ何にもしていない」と弱音を吐くミルク。「(自分が周りにカミングアウトできなかったせいで)これまでつきあった恋人4人のうち3人は自殺している」と苦しそうに言うミルク。ゲイの存在を認めさせるため、仲間に強引にカミングアウトを勧めた後、「自分だってニューヨークにいる時はゲイだとバレないようにクローゼットに隠れていたくせに」とスコットに非難されるミルク。

こういうシーンの数々に、ミルクが決して完璧な人間ではなく、悩み傷ついてきたことが伝わってきて、すごく親しみを感じてしまったのだ。

それにしても、ミルクが必死で阻止しようとしていたのは、同性愛者やそれを支持する人を教職などから解雇できるとする「プロポジション6」成立だったのだが、現在は、同性婚を認めない「プロポジション8」ですったもんだしているんだからね。カリフォルニア州以外では同性婚を認めている州がいくつかあるし、ヨーロッパでは国で認めているところもあるし、30年という時間の流れと重みを感じてしまう。

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マイノリティの権利を守ったり獲得したりするためには、政治はかなり重要だということは、昨年読んだこの本でもつくづく思い知らされたのだけど、この映画でも然り。ただ、このやり方が世界どこにでも通用するかどうかは別だと思いつつ――権利のために立ち上がり、時に戦うことの意味を、思わず考えずにはいられない。

さて、ショーン・ペンの演技も素晴らしかったけど、ほかの俳優たちの演技も負けず劣らず素晴らしかった。恋人・スコットを演じるジェームズ・フランコは、めちゃくちゃキュート。特に笑顔が!
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スコットと別れた後に転がり込んできた新しい恋人・ジャック・リラを演じるディエゴ・ルナも、カワイイんだけど心の脆さと不安定さに、見ていてハラハラした。BLにもよく登場するようなタイプだと思うな、彼は。しかし、ミルクの好みって、若くてイケメンでカワイイタイプだったのかなぁ……などと、ぼんやり思う。

クリーヴ・ジョーンズ演じるエミール・ハーシュは、以前見た作品の印象とのあまりの違いに、何度も目を疑った。
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どの役者さんも、しゃべり方や仕草など、モデルとなった人物やゲイたちを研究したんだろうなぁ……という感じで、改めて役者ってスゴい!と感心。

ミルクの選挙運動を支える唯一の女性でレズビアン、アン・クローネンバーグを演じるアリソン・ヒルもステキだった。というか、アンがミルクたちの事務所にやって来た時の、ゲイたちのあのよそよそしい態度ったら何なの!?と思ったほど。そんなにあからさまに敬遠しなくてもいいじゃんか!

ミルクを射殺するダン・ホワイトを演じるジョシュ・ブローリンもよかった。自分のメンツや他人からの評価などで自分自身をどんどん追い詰め、ミルクに対して嫉妬や羨望を抱いていく姿は、しかし決して、全くの他人事ではないようにも思える。
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映画の中の、最初のデモ行進で、ミルクがゲイたちに向かって呼びかけるシーンに、不覚にも涙を流し――それ以降、ミルクが当選して泣き、ジャック・リラが自殺したシーンで泣き、自殺を考えていたゲイの少年がミルクに感謝を伝えるシーンで泣き、プロポジション6が否決されたシーンで泣き――

意外にも、わたしには「泣ける映画」となってしまったのだった。もう1回ぐらい見たい。
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Tags: クィア映画 ゲイ レズビアン

Comment - 5

2009.05.23
Sat
20:40

まにまに #-

URL

lucindaさん、こんばんは。
先日はありがとうございました!
やっと観ましたよ、ミルク。
ショーン・ペン、素晴らしかったです。
ジェームズ・フランコもよかった~!
ミルクを精神的に支える役どころが素敵でした。
私も何かしなければ!って思わされる映画でした。
ビアンが一人しか出てこなかったのも気になったし。

この映画、ノンケの子と観に行ったのですが、彼女が今アメリカで同性婚をめぐってすったもんだしていること、まだまだゲイへの偏見が根強いことなどを知らなかったこと知り、かなりへこみました。
もちろん説明しておきましたけどね。
なんだか映画よりこっちの方が現実を思い知らされた気がします。

私はDVDになったらもう一度、一時停止と巻き戻しを繰り返して、ミルクの言葉をかみしめながら観たいなと思いました。
字幕が早すぎて、正直追いきれなかったんです(笑)

編集 | 返信 | 
2009.05.24
Sun
01:28

ヒトコ #hHr8eLEw

URL

地元で1週間だけ上映があったので、2度目を観てきました。
ほんとうに、思いのほか何度観ても泣ける映画でした。
特に、ミルクとスコットの会話など、
再度みても、ジーンとしてしまいました。
当選の場面も泣けましたね。
映画を見るまでミルクの事を知らなかったので、
「ゲイの市長と呼ばれた男」も読んでみてるんですが、
翻訳ものは苦手で、MILK以外の活動家の話など
ちょっと解り辛かったりしてます(^^;)
映画では、MILKの活動に的を絞って、
政治活動についてもよく纏めてあると思いました。
ほんとうに、良い映画でした。観て良かったです!

編集 | 返信 | 
2009.05.25
Mon
22:53

lucinda #-

URL

コメントありがとうございます。

レスが遅くなってすみません。

>まにまにさん
こちらこそ、先日はありがとうございました!
S.ペンもさることながら、J.フランコもいいですよねー!! ほかの共演者もみんなよかったと改めて思います。そして、たしかに、わたしもDVDを何度も一時停止しながら見たいと思いましたね。字幕を追うのが大変だったということは、それだけ情報量が多かったということなのかもしれません。

同性婚のことを知らない人も、いるんですよねぇ。やっぱり関心があるかどうかの違いは大きいということかもしれません。

>ヒトコさん
ああ、2度ご覧になったんですね~!
わたしも映画を見るまでミルクのことを知りませんでした。翻訳本もゲットしているなんて、さすがヒトコさん!
ミルクとスコットの何気ない会話が、あとあとジーンと響くような気がします。わたしももう1回ぐらい見ようかなぁ……。

編集 | 返信 | 
2014.01.27
Mon
20:24

zebra #ngCqAwRo

URL

ミルク殺害の犯人 そんな理由が許されるワケないだろ!

DVDでみました。

ショーンペン アカデミー主演男優賞を受賞しましたね。
でもミルク すごい思想です。

偏見と戦い、同性愛者たちだけでなく 児童や女性 黒人 アジア人など少数派の声を大事にしたミルク・・・・反対派の者たちの圧力や脅しにも屈しなかった。
次第に認められるようになり 一般のマジョリティ派にもミルクを支持する者も出てきた。

亡くなり方は残酷ですが ミルク殺害の犯人の弁護士 とんでもない理由で 計画性の無い殺人だったので ”故殺”だと主張・・・
 被告はジャンクフードを食べ過ぎで精神を病んでいたので犯行におよんだと・・・
 その主張を認めて懲役7年。
なんだ、それ・・・ふざけてる。下手な言い訳にも使えない主張だったな。その後 釈放されてから古巣に戻っても孤立し 自殺したとか・・・

ミルクの殺害が きっかけで遺言を録音したレコーダーが公開されたので なんとも皮肉なものです。

編集 | 返信 | 
2014.01.30
Thu
02:48

lucinda #-

URL

コメントありがとうございます

>zebraさん
ショーン・ペンの演技は素晴らしかったです。

ミルクを殺害した弁護士が、そんな主張をしていたとは、知りませんでした。しかし結局自殺したと聞くと、因果応報という言葉が頭に思い浮かびました…。

編集 | 返信 | 

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