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俎上の鯉は二度跳ねる(水城せとな)

 11,2009 23:22
“待ちに待った”作品はこれまでにも何冊かある。でも、続編があると知りながら、携帯配信での掲載だったために確かめられず、「すごいよかった~!」とあちこちのブログに踊っていた興奮の言葉を、遠くから指をくわえて羨むばかりだったこの作品は、とりわけ“待った”感がある。

――何しろ、わたしのケイタイ、ロクにネットもできないダメッ子ケイタイなんだもの。

それにしても、予想と期待をはるかに超えた作品だったよ……!

ネタバレを含むので折りたたみます。
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水城 せとな

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妻と離婚した恭一(きょういち)。だが今ヶ瀬(いまがせ)との男同士の微妙な関係は、今も続いていた。今ヶ瀬に抱かれることに慣らされてゆく日々。ところが、恭一に思いを寄せる会社の部下・たまきの存在が2人の関係を大きく揺るがし始め…!? ケータイ少女誌「モバフラ」で配信された水城せとな大人気シリーズ完結編!!

一読した後に呆然としてしまったのは、なんという業(ごう)、なんという性(さが)なんだろう……! と感じ入ったから。作品のラスト辺りの、

「これが恋愛なら恋愛は業だ」

という恭一のモノローグが、文字通り心に迫っていて震えそうになった。「恋愛サイコー!」みたいな、そこらの雑誌や自己啓発本辺りで取り上げられている言葉が、何だかどれもこれもチャラく薄っぺらに見えそうなほど。

前作の「窮鼠はチーズの夢を見る」では、流され侍の恭一のことを、どちらかというと「しょうがない人」というような、ちょっと上目線から突き放して見ていたわたしだった。

ところが今回恭一は、一生懸命に誠実に今ヶ瀬との関係を考えていて、ただの流され侍がキッパリと決断力のあるイイ男になっていることに驚いた。そして、恭一の気持ちや言葉に、何度も共感してしまったことにも。

例えば、確実に愛されているという保証のもとで生きたいと思う気持ちや、今ヶ瀬としか同性との経験がないせいか「本物の同性愛者の男がどれくらい男を愛するものなのかわからない」という漠然とした不安、今ヶ瀬との生活は居心地がいいけど「これが愛かどうかはわからない」という自信のなさ――などなど。

しかし同時に、今ヶ瀬の心の不安定さ、感情の爆発と達観、恭一との関係の破綻への怯えにも共感してしまうのだ

恭一の新しい恋人・たまきが入院した後の、恭一と今ヶ瀬のやりとりは、まるで舞台の二人芝居のような緊迫感にあふれていて、固唾を呑みながらセリフを追った。

たまきと別れると告げた後の、恭一が今ヶ瀬の手にキスするシーンや(「窮鼠…」では二人の関係が始まる前に、今ヶ瀬が恭一の手にキスしていた!)、ラスト、「恋愛でじたばたもがくより大切なことが人生にはいくらでもあるだろ」と言った恭一と今ヶ瀬の後姿に、涙が出そうになった。

そう、恭一に共感し、今ヶ瀬に共感し、そして二人のやりとりを客観的に見守り――もう、読んでいる間中、脳みそフル回転。そりゃ、読んだ後はドッと疲れるってもんよね。

恭一と今ヶ瀬の関係を揺さぶるたまきは、思いやりのある明るいお嬢さん。「窮鼠…」の知佳子や夏生のようにエゴ丸出しではないだけに、「恭一はたまきと落ち着いてしまうのかなぁ……」と途中まで淋しく、でも仕方なく思っていたほど。

でも、恭一が別れを切り出したシーンでの肝の据わり方には、ちょっとビビった。そうよね、ただただ優しく明るいだけのイイ人キャラは登場しないよね、この作品では……!

この作品はBLで括られていない。でもわたしは、こんなBLが読みたかったんだ!――と、読んだ後につくづく思った。男同士のカップルには幸せになってほしいのは大前提として、彼らの世界に女性がちゃんと存在し、そのおかげで作品がより立体的に見えるような、キャラたちの感情がドクドクと行間から伝わってくるリアルな作品

読んでいて「リアル」だと感じられる作品は、別に日常の現実がそのまんま描かれているものばかりではないと思うし、「リアル」だと感じるポイントも人それぞれだと思っている。ありえないようなファンタジー設定でも、そこでのキャラクターのセリフやモノローグに、「その通りだ!」と共鳴できる何かがあれば、それはその人にとって「リアル」なんだと思う。

そしてこの作品は、わたしにとってリアルに思える作品だったのだ。あとがきで水城せとなさんが、

「読者からの感想を読むと、恭一と今ヶ瀬は、男女問わず読者に近いキャラなんだと思った」

というようなことを書かれているが、それも当然だと思える。恭一と今ヶ瀬は男だけど、彼らの言葉や行動、気持ちには、性別を超えて多くの読者が共感したんじゃないかな。

ああ、しかしエラいもんを読んでしまった。読むと消耗するけれど、きっとこれから先、何度か読み直すに違いないよ。

――あ、「こういうBLを読みたかった」と書いているけど、「こういうBLだけが読みたかった」わけじゃありませんよ。ほかにも求めるタイプはいろいろあるんです。読書には貪欲なんですもの、わたし。

#今ヶ瀬の不安定っぷりは、恋に狂ったこの映画のヒロインを思い出してしまった。ストーリーは全然似てないんだけどね。
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奇しくも両方ともイザベル・アジャーニ主演。すでに目がイッてる気がするのは思い込みのせいかしら。アジャーニ、元気なのかなぁ……。
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Tags: 水城せとな リバ 同性愛

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