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イラつきの境界線―「シンプルライン」(杉原理生)、「堕天使の背骨」(鳩村衣杏)

 01,2009 02:21
BLを読んでいると、「ん? この設定(or展開orシチュ)はどっかで読んだことあるぞ?」と思うことがたまにある。


まあ、テンプレと揶揄されるBLの、その中でもより多くの読者に支持されそうなストーリーが書店に並んでいるだろうことを考えると、バリエーションにも自ずと制限ができてくるものなのかもしれないけれど。


さて、部屋を片付けていて掘り起こした作品の一つ、杉原理生さんの「シンプルライン」。杉原作品は概ね心の中に大切にしまっておきたいような可憐さが好みなんだけど、時々、しまっておくのは取り止めようかと思う作品にぶち当たることがある。まあね、どんな好きな作家でも、打率10割ってわけにはいきませんからね。


そしてこの作品は、その、しまっておくのを躊躇してしまった作品なのだった。


ネタバレを含むので折りたたみます。
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連れ子同士で、一時期血の繋がらない兄弟だった圭一と孝之。10年後、大人になって再会した二人は、改めて兄弟のような、友人のような、不思議な関係を築き始める。弟だった孝之への恋心を自覚していながら隠す圭一と、兄だった圭一へ想いをストレートにぶつける孝之。しかし、圭一にはどうしても孝之を受け入れることができない理由があって―。


何がスンナリ心にしまえなかったかって、圭一の曖昧(に見える)態度。親同士の再婚で一時は弟だった孝之のことが好きなのだが、「孝之はもしかしたら血の繋がった弟かもしれない」疑惑に苛まれ、慕ってくる孝之を受け入れられない。


しかし「弟かもしれないから」と自分にブレーキをかけている割りには、自分を好きな孝之の気持ちを知りながら自宅に上げたり、もう来るなと言ってみたり、「どうしてもお前を好きになれない」と拒絶しつつも、「ほかの男よりもいいものを与えてやる」という孝之の言葉に傷つきヤケになって孝之と寝てしまったり、翌日に「兄弟かも」などと爆弾発言をしてまた拒絶したり――


あんた、どうしたいの?


――と心の中の突っ込みがどうにも収まらなかったのだった。なんなの、この流され侍っぷりは。


そもそも、孝之のことを誰よりも愛しているのに「本当の弟かもしれない」という懸念から身動きできないというのなら、迫りまくる孝之と寝てしまう前に、さっさと打ち明けりゃいいじゃん――と、情緒も色気もヘッタクレもないわたしなどは思うわけであります。それを言っちゃあおしまいなのは、わかるんだけどさ。


結局は、圭一と孝之に血の繋がりはないことがわかり(それがわかったのも孝之が確かめたおかげ)、「もう絶対ぼくを離すな」などと言って2人は結ばれる。幸せそうでいいけど、なんかこう、スッキリしないんだよなぁ……。


――なんだかこれと似たような作品を以前、読んだことがある。でもその時は、これとは逆に、読後に満足感と充足感を感じたんだよなぁ……と思い出したのが、この作品。


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「どこへもやらない。もう二度と―」司書として働く淑仁のもとに突然現われたのは、出版社社長となった義弟の晶。養父から虐待を受け晶の家に引き取られた淑仁は、17の夏、晶と関係を持つが、彼の将来を思い姿を消していた。再会するなり強引に淑仁を連れ帰った晶は、何も言わず消えた淑仁への愛憎から無理やり抱く。冷めやらぬ積年の想いを抱いて再び出逢った2人。罪に濡れた羽根は穢れ、堕ちてゆくだけだとしても共に生きてゆけるなら…。許されない想いの果ては―。


こちらも義弟×兄でお互い本当は想いあっている。そして、兄は義弟との血の繋がりを恐れているにも関わらず、何も知らない義弟はガンガン迫ってくるという点もそっくり。


ただし、「堕天使…」の方は、本当に血が繋がっているとことを兄の淑仁は知っていて晶から離れた――というところがミソ。


読み返してみると、淑仁もイヤだとかダメだとかいいながら、強引な晶に無理矢理抱かれてしまうのは、ある意味流されているともいえるのだ。それに、血が繋がっているとさっさと晶に打ち明ければ、晶の苛立ちも収まっただろうに……と、やっぱり思ってしまう。


それでも読後、「うーん、ちょっぴり耽美でよかったなぁ……」と思ってしまったのはなぜなのか?


1)淑仁の拒絶をものともせず、晶が強引に淑仁と関係を持つため、淑仁にも同情してしまい、淑仁の「イヤだ」「ダメだ」にイラつかずにすんだ。つまり、晶はおあずけを喰らわずに自分の欲求を満たしているので、「ま、それなりにどっちもシアワセなんじゃない?」と割り切れた、のかも?


2)血の繋がりから晶を拒絶する淑仁だが、晶の役に立ちたいと、自分の得意なこと(人気ブックレビューサイトを運営している)を通して、晶の仕事を手伝おうとする。つまり、ただ気持ちだけではなく、行動で晶への想いを表現している淑仁に、好感が持てた。


3)淑仁の幼少時代の悲惨な経験(義父からの虐待)と、淑仁と晶がお互いに想い合うようになったエピソードをうまく絡めて、ストーリーのクライマックスに盛り込まれているので、「近親相姦かよー」と萎えまくらずにすんだ。


というところじゃなかろうか――と推測している。<エラそう……


この作品、「彼の背に甘い爪痕を残し」のスピンオフ作品なんだけど、「彼の背に……」とは雰囲気がまるで違うのに驚いた。心がホッコリと温かくなるような「彼の背に……」に比べて、このヒリヒリするような、そこはかとなく隠微な感じは何なんだ! しかも鳩村作品の中でもかなりエロシーンが多め。


これを読んでいる時、当時ダウンロードしたばかりのアリシア・キーズの「Go Ahead」が頭の中にずっと流れていて、しかもそれが作風にピッタリに思えて、より一層、作品世界に浸っていた……ような気がする。


さて、これまで過去2回、設定などが似ている作品のディテールを比較したことがあるが、今回もやってみた。


★キャラクター・攻め★
■シンプル…工学系専門書を取り扱う出版社のの編集者・孝之。実家は重機械メーカーなどいくつかの会社を経営。元・義弟。


■堕天使…老舗出版社の社長・晶。もちろん出版社は、実家が経営していたものを継いだ。義弟。


★キャラクター・受け★
■シンプル…フリーの翻訳者・圭一。孝之より2歳年上。


■堕天使…図書館司書・淑仁。超人気ブックレビューサイトを密かに運営し、出版社からもコンタクトがあるほど。晶より3歳年上。


★攻めと受けの関係の秘密★
■シンプル…親同士の再婚による元・義兄弟。後に親は離婚。しかし親同士は元々恋人同士で、圭一は実の父親のことを何も知らないことから、もしかして孝之とは異母兄弟かも…と思い悩む。


■堕天使…義父から虐待されていた淑仁を、晶の両親が引き取り養子にしたことで、兄弟に。しかし実は、一度だけ実母と関係を持った養父の実子。つまり晶とは異母兄弟。


★攻めと受けの過去★
■シンプル…早くからお互いに意識し合うも、離婚により母親と出て行くことになった圭一18歳のある夜、まだ16歳の孝之を押し倒す。以後、圭一はそれを後悔しているが、孝之はそれがきっかけで圭一を追いかけることに。


■堕天使…早くからお互いに意識し合うも、子どもだけの別荘でのバカンスで、14歳の晶が17歳の淑仁を口説いて関係してしまう。しかしその後、養父から晶とは異母兄弟だと知らされ、淑仁は家を出ることになり、晶も海外の学校にやられてしまうものの、諦めきれない晶は淑仁を追い続けることに。


★攻めと受けの関係の進行状況★
■シンプル…仕事で再会した圭一と孝之。孝之は圭一に迫りつつ、無理に思いを遂げようとせず、圭一に邪険にされても、忍耐強く誠実に圭一の心が開くのを待つ。“いい人”な攻めだが、それ故に、受けの心が揺れていたのかも。


■堕天使…ひっそりと暮らしていた淑仁を晶が見つけ拉致。ほぼ軟禁状態で、淑仁が泣こうが嫌がろうが、無理矢理関係する。モロに癇の強い鬼畜攻め。淑仁は冷静で忍耐強く、仕事で晶をサポートしようとする。


★当て馬的キャラクター★
■シンプル…圭一の元彼・益本。バイセクシャルで結婚したものの、離婚し、圭一とヨリを戻そうとする。圭一が孝之と落ち着くまでに、孝之を拒絶する理由として、益本の存在が利用された。後日譚で、これまた圭一の元彼・黒澤が登場。


■堕天使…淑仁の恩人の息子・文宏。しかし淑仁は、晶を拒絶する理由として文宏を利用したりしなかったので(そもそも元彼じゃないし)、あまり活躍せずにフェードアウト。



★作品の雰囲気★
■シンプル…圭一がウジウジと悩むのに、優しい孝之が合わせて、ジレジレとストーリーは進行。杉原作品特有の、「お互い両思いなのに想いが通じない焦れったさ」満載。つか、むしろ焦らせすぎじゃ?


■堕天使…晶が有無を言わさず淑仁をさらって思いを遂げつつ、徐々に経営危機の会社を2人で立て直そうと、ストーリーは展開。これもある意味、鳩村作品特有の、「泣いても笑っても、キャラたちはしっかり働く」現実感は健在。





こんな感じかな。


キャラたちが所属する業界が出版業界だったり、攻めの実家が会社を経営しているってところが、偶然にも同じでビックリだ。しかし似ているところはいくつかあっても、作風はまったく違う。そして似ている作品を比較するたびに同じことを言っているけれど、この作風の違いが、作家の持ち味や特徴だと思うのだ。


それにしても、「シンプル…」の攻め・孝之は優しくて誠実な男なのに、そのおかげで、読んでいるわたしはイライラしていたなんて。優しいだけじゃ、だめなのね……。


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Tags: 杉原理生 鳩村衣杏 亀井高秀 ひたき 2作品比較 複数レビュー

Comment - 4

2009.05.03
Sun
18:29

ぴよこ #-

URL

「スンナリ心にしまえない」話ってありますよね=3
「あんた(主人公)、どないしたいねん!?」
「かーっ、書いてる人ももう収束させようよ!」
納得いかんわ!!!と思いつつ、オチは知りたい!!!で、
早く読み終えるために夜更かししてみたり。。。
(そんなに必死にならなくてもいい。)

話の流れで言えるはずの一言をあえて言わないとか、
主人公が流されすぎて何がしたいのかよくわからないとか、
話のややこしさに作為的なものを感じたら、読み流し決定。
携帯小説とかお昼の連ドラも、
「喰いとめられたはずの波乱万丈」の波に乗り切れなくて苦手です。
私のイライラスイッチは「あんた、どないしたいのん!?!?」だと思われます。

編集 | 返信 | 
2009.05.03
Sun
19:25

lucinda #-

URL

>納得いかんわ!!!と思いつつ、オチは知りたい!!!で、
早く読み終えるために夜更かししてみたり

同じです(笑)。読み捨てることができないのが、セコいというか、未練がましいというか。
「喰いとめられたはずの波乱万丈」の波に乗り切れるかどうか、きっと本当にささいなことなんだろうと思うんですけどね。でもそれが人それぞれなんですよねぇ、恐らく。

「あんた、どうしたいの!?」と思うキャラへの人柄が「嫌い」側に傾くと、もうあきまへん。いわゆる「ズルい男(女)」にイライラしちゃうのかなぁ……。

編集 | 返信 | 
2009.05.05
Tue
23:21

茉莉 #-

URL

基本的にBLの受は、”本人が思ってもいなかった恋心を攻から寄せられる”人が多いので、肉体的のみならず精神的にも流されがちな人が多いですよね。
でも、意味もなく過剰に流される受が私もダメですね。自己主張が出来なさすぎる人間が、そもそも好きじゃないからかもしれません。
そんな風に、自分の中に無意識の基準ができているみたいで、それを満たさない話だと(特に小説は)読み続けられないのですが、最近、あれほど苦手だった近親相○モノもその基準さえ満たせば、むしろスキだということに気がつきました(遅)。
可南さらささんの話だったんですけど、いまだに単行本にならないので、もしかして気に入ったのは少数派なのかも?
基準ってやっぱり人それぞれなんですよね・・・。

編集 | 返信 | 
2009.05.06
Wed
17:33

lucinda #-

URL

茉莉さん、コメントありがとうございます。
無意識の基準、ってのはありますよね。以前、先輩と盛り上がった「アタシ倫」も、無意識の基準だと思います。ほかの人が絶賛していても自分はイマイチ……というのも、自分の中の無意識の基準から外れている、といえるかも。当然、人それぞれなわけで……。

近親相○モノOKっすか……。いや、まあ、まったく読めないわけじゃないなぁとは、思っているんですけどねぇ……でもなんかなぁ……(ため息)

編集 | 返信 | 

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