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陰陽師葦屋道満<天の巻、地の巻>(剛しいら)【いとをかし平安BL】

 09,2009 23:36
Myツボな平安モノポイントを押さえた作品第3弾。剛しいらさんの平安モノは、陰陽師が大活躍の、恋あり、戦いあり、陰謀あり、涙ありの、一大活劇ともいうべき作品なのだった。絶版なのが惜しまれる……!

ネタばれを含むので折りたたみます。
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人々が魑魅魍魎に怯えて暮らす平安の都に、高い通力を噂されるその陰陽師・葦屋道満はいた。桜庭中将政満と橘少将康彰の道ならぬ恋を成就させた道満は中将の家人の前田友則という想い人も得て、権力者の欲や呪詛とは無縁の暮らしを願うが、宮中では帝に仇なす不穏な気配が起こり始め…安倍晴明と対決!?(あらすじより)


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攫われた少将を救い平安京を狙った盗賊の野望を潰えさせた道満達は、その盗賊と共にいた不思議な力を持つ美童が安倍晴明と名乗り宮中に出入りし始めたのを知る。道満達の不信の念をよそに通力を利し評判を上げていく晴明の思惑とは一体…?平安の都に凶星が瞬く時、星の声を聴く男は己の宿命を知る。(あらすじより)

アマゾンには画像もないので、表紙絵を別にアップしてみました。水上有里さんのイラストも美しく、ちょっとドラマチックな感じでとってもステキ。ロン毛のガタイのいい男が主人公の道満ですよ! 「ロン毛はイヤって言ってたくせに~」と思われるかもしれないけど、道満は仕官していないアウトローで、しかも「枯れ葉色の髪と緑の瞳」を持つ異形の男(まるで外国人だ)という設定なので、これでいいのだ。

ちなみに、「地の巻」の表紙の手前にいる、美少年は安倍晴明。「天の巻」の道満ともども、眼力が強そうで、いかにもただ者ではなさそうだな。

この作品が出た頃(「天の巻」は2001年、「地の巻」は2002年)、世は陰陽師ブームに沸いていて――それは映画化された「陰陽師」(夢枕獏 原作)の影響なのだけど、剛さんが大胆だと思うのは、そのブームの主役で、「陰陽師といえば」の代名詞的存在の安倍晴明を悪役に設定したところ。そして夢枕版「陰陽師」では、晴明に何かとちょっかいを出す得体の知れない葦屋道満を、「現世の生命には限りがある。何事もあるがままに」と泰然と構えたヒーローとして描いている。

「天の巻」の最初のあたりは、「今業平」と姫君たちを魅了しているハンサムな桜庭中将が、姫君と見まごうばかりに美しい橘少将(左近の桜、右近の橘って感じの名前がスキ)を見初め、恋を成就させるために夢で「百夜通い」をしたり、呪いのために生まれてからずっとしゃべれなかった橘少将の姉姫・橙子が、道満によってしゃべれるようになったかと思ったら、「とりかへばや物語」のように男装して宮中に出仕するなど、楽しいおとぎ話みたいなムード。橙子の勇ましさと、歯に衣を着せない物言いも痛快だ。

ところが、姉の代わりに橘少将が盗賊・山王丸に拉致されてから、物語の主題は「京の都の破壊を目論む陰謀」にシフトし、いよいよ謎の美少年・安倍晴明が登場するのだ。前半ののほほんとしたおとぎ話的エピソードも、実は道満VS晴明を描くための前振りだったことが、「地の巻」を読むとわかる。

晴明は腹黒い残忍な悪役ではあるけれど、魔物に拾われて白狐に育てられた、人の心を知らない哀れな少年として描かれている。そのせいか、全然嫌いになれない。主上を恨み、都で略奪しまくる山王丸も、橘少将に横恋慕したり、晴明の不思議な力を恐れたり、何かと心が揺れていてカワイイ。というか、片目を失ってはいるけど逞しい体で馬を駆る山王丸は、イラストで見てもステキだ。陰謀さえなければ、桜庭中将と、橘少将を巡る恋の鞘当てをずっと繰り広げてくれてもいいぐらいだ。

晴明の企てた陰謀は、山王丸が捕らえられ、しかも刑場から救えなかったことで潰える。決して、道満の不思議な力で防げたわけではないのがポイント。ちなみに山王丸が捕らえられた遠因は、晴明の、橘少将への嫉妬。「夢にも逢いみん」でも主人公は嫉妬に苦しんでいたし、嫉妬って本当に恐ろしいですね。

都を破壊しようとしていた腹黒い晴明は、自分の生命を差し出した山王丸によって生まれ変わり、都を護る陰陽師となる。山王丸が「これからはずっと共にいる」という晴明への遺言を道満に託けるシーンは、涙が出そうになった。

やたらに術を使って己の力を見せびらかしたりせず、悠然としている道満と、道満に惹かれていくまっすぐで素直な気性の桜庭中将の家人・友則は、剛しいら作品の典型的な攻めと受けの一つ、という感じ。いやー、でも、道満みたいな攻めはわたしのツボなんだよなぁ……!

そしてすごく印象的なのが、夜は人となる、犬のヌイとブン。老犬・ヌイが亡くなるシーンも、泣けてしょうがなかった。まさに、「現世の生命は限りがある」そのものという感じ。

平安の都の様子もイキイキと描かれ――牛車が立ち往生したり、物の怪に怯えたり、公達がよよと泣いたり――何より、先にレビューをアップした2作品に比べ、登場人物たちが最も平安時代っぽいしゃべり方をしていた気がする。たまに、桜庭中将の物言いが江戸っ子のように歯切れがよくて、「剛作品っぽいなぁ」と心の中で微笑していました。

読み終わるのが何とも惜しかったけど、それだけ読後の満足感も大きかった。もしもこの作品が新装版で出たとしら、やっぱり買っちゃうだろうなぁ……ただし、水上さんのイラストじゃなかったら、ちょっと考えちゃうけどね。
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