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私立探偵・麻生龍太郎(柴田よしき)

 10,2009 21:47
「もう明日はJ庭なのに~!」と思いながらも、最後まで読んでしまった本。

私立探偵・麻生龍太郎私立探偵・麻生龍太郎
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(あらすじより)春日組大幹部殺害事件が解決し、刑事を辞めた麻生。彼は私立探偵として新たな一歩を踏みだした。彼の元には人間の業ともいえる様々依頼が舞い込んでくる。その中で麻生は練を守っていこうとするのだが……。

時系列としては、「聖なる黒夜」と「聖母の深き淵」の間だというこの作品。「所轄刑事・麻生龍太郎」のような、麻生が主人公の5編の短編集。

そんなささいなきっかけが、そんな大きな事件、あるいはそんな深刻な意味に繋がるなんて――!と、一度読み始めると、決着が見えるまで途中で放り出すことができない。

BLを読み慣れていると、展開がスピーディーであることと、要望(男同士(同性同士)の理想的な関係性の構築、エロ)が満たされることとで、一般小説を読むのがちょっと億劫になりがちなわたしだが――そんなハードルを軽々と超えてしまう一般小説は、やっぱりあるんだよなぁ……と、この作品を読みながら改めて思った。

多少ネタバレを含むので、折りたたみます。

一番印象に残ったのは、依頼人の叔母の指輪探しから思わぬ事件に展開していく「CARRY ON」。麻生に依頼する元検事で弁護士の絹子は仕事ができすぎて、実際にこんな人がいたら気後れしちゃうだろうなぁ……苦手なタイプだなぁ……と思う。でも麻生が男(=練)とつきあっていると知って言うこの言葉、

「セックスしなくていい男は、怖くない。セックスは好き、男の体は好き、でも男は嫌い。怖いから。それが大部分の女なの」

は、すごくインパクトがあった。ドラマや映画の影響だけじゃなく、よく女性が男性よりもゲイに関心を抱き、ゲイと友人になりたがる理由の一つは、この言葉が説明しているような気がする。

依頼人の身に覚えのないセクハラ問題を探っていく「TEACH YOUR CHILDREN」、かつて逮捕した男の息子との邂逅が絡む「DEJA VU」も好きだ。

さて、麻生は「黒夜」に引き続き、練がヤクザにならないように願っているし、練に何度も、直接そう言っている。けれども、練には練のしがらみがあり――それでも麻生が、「(たとえどうなろうと)お前とずっと生きていく」と言いさえすれば、練だってふんぎりをつけるだろうに……と、読んでいてため息をついてしまう。事実、練とは刑務所時代からの友人である田村もそう言っている。ということは、麻生は、少なくとも頭では、練を引き止める言葉をわかっているのだ。だが、麻生はそう言わない。麻生には、「練を線路に横たわらせた」という激しく自分を責める気持ちがあり、単に「お前のそばにずっといる」と言うだけではダメだと思っているからだ。

そんな麻生のことは、読んでいて確かにもどかしいし、鈍感、と思えなくもない。でもわたしの頭の中では、鈍感というよりも、すごく昔に読んだ、このエッセーの一節が思い出されたのだった。

人間には、二種ある。ある種のことは死んでも出来ない人間と、それが平気で出来る人間と。この差異は、階級の別でもなく教育の高低でもない。年代の差でもなく男女の別でもない。スタイル、と呼んでもよいもののちがいではないかと思う。(「人びとのかたち」塩野七生 新潮文庫P169~170)

いえ、「人びとのかたち」のこの部分を読み返してみると、そこでは映画「山猫」(ヴィスコンティ)を引用しながらの、特権階級(貴族)と政治について語られているので、はっきりいって、麻生の一見激鈍な態度とはまったく関係ない。ただ、麻生の練に対する建前やこだわりを思うと――麻生は「ある種のことは死んでも出来ないに人間」なのかもしれない……と思ったのだった。

とかいいながらも、麻生はほぼ練のために、警察を辞めているので、「ある種のことは死んでも出来ない」とも言い切れないのかもしれないけど。

わたしが気になるもう一人のあの人・及川は、麻生の記憶とともに気配だけ登場する。及川が、野心丸出しだった女性刑事を認めて本庁に推薦したという一文(「TEACH YOUR CHILDREN」)は、理由もなく「及川ならわかるわー!!」と内心、強くうなずいたのだった。

「epilogue」の後、ああいうことになるのか……と感慨深い。「月神の浅き夢」以降の麻生と練の話、出ないかしらねぇ……。及川が主役の物語も、もちろん大歓迎なんだけど。

#ちょこっと元箱根駅伝選手が登場しているのに、おおっ!と思ってしまった。登場するのは「CARRY ON」。ただ単に経歴として紹介されるだけなんだけど、しかし選手を辞めた経緯がとても切ないのだった。そういえばこの元選手を含めたインサイダー取引関係者のその後については、読者に「(当然)逮捕されたんだろう」という予感だけ感じさせて、はっきりと書かれていない。こういうところを読むと、この作品はただミステリではないんだよなぁ…と思ってしまう。

#この作品を読んで、改めて「さよならを言う気はない」(英田サキ)シリーズを思い出し、読み直したくなった。「さよなら……」は麻生×練の、ものすごーく巧いオマージュBL作品だと勝手に思っている。「さよなら……」の主人公二人は何とか幸せそうだけどねぇ……。
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Tags: 柴田よしき 塩野七生 警検麻ヤ ジェンダー ゲイ バイ

Comment - 2

2009.03.20
Fri
23:37

アラスカ #-

URL

先ほど本を読み終わり、それまで我慢していたこのブログの記事を読みました。で、本の中で一番印象に残った言葉が、まさしくlucindaさんと同じでした。
大きく頷く女性も多いのではないかと思います。

ああ、それにしても及川さん。チラリとでも出て欲しかったなあ。同棲中の彼氏との暮らしぶりとか知りたいし。

編集 | 返信 | 
2009.03.26
Thu
06:17

lucinda #-

URL

アラスカさん、コメントありがとうございます。
あの言葉、印象的ですよねー!! うまいこというなぁ、と思いました。

>チラリとでも出て欲しかったなあ
ですよねですよね。主役でとはいわないから(ホントは主役だと超嬉しいけど)、ちょこっと登場させてくれるといいのに……と、柴田よしきさんに向かって念を飛ばしています。

編集 | 返信 | 

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