恋は甘いだけじゃない

 11,2006 23:50
そんなことを感じさせられる、木原音瀬の小説。とくにこの2冊は、恋の苦しさとか痛さとか苦さとか、なんというか、できることなら味わいたくない感情を思い起こさせられるような。

LOOPLOOP
木原 音瀬

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HOMEHOME
木原 音瀬

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「LOOP」の痛さ。それは、主人公・義国の中にいる宮澤という男の、好きな女への執念にも近い思い。しかも宮澤は、その女と相思相愛だったわけではなく、無理矢理、ほかの男から女をかっさらって軟禁することで、手に入れようとする。女は当然、宮澤を許さない。宮澤は女の手にかかって亡くなるが、亡くなってなお、女に未練を残している見苦しさややるせなさ。そして、女の生まれ変わりである英一も、なし崩し的に義国に惹かれるようになるのに、前世の女の想念のおかげで義国を受け入れられない。

「HOME」の痛さ。それは、主人公・篤が、双子の弟の恋人をずっと好きだったこと。そればかりか、その男の亡き後に引き取った、男の姉の子ども・直己に想われていることに、いつまでも気づかない。気づいて(というか気づかされて)うまくいきそうになったとたん、直己は事故で障害の残るケガをし、お互いの気持ちが、びゅんびゅんすれ違って破綻しかける。

………こんな、泣きを入れたくなるほどシビアで痛い設定なのに、読み始めたらとまらない巧さは、木原音瀬の真骨頂じゃなかろうか。恐らく多分。

「LOOP」では、義国の体を支配する宮澤にイラつく。前世で遂げられなかった思いを、現世で遂げられたからといっていきなり消えるとは、なんという身勝手さ。でもそれが宮澤らしさかもしれない。わたしとしては、宮澤にはまったく共感できないのだが、恋の妄執とはかくあるべし、というものかも。宮澤と宮澤が愛した女が成仏したあと、義国と英一が恋人同士のままというのが、ストーリー的には救われる気がする。これで「はい、さようなら」だと、あまりにむなしい。

「HOME」では、宮澤ほどイラついて共感できない登場人物はいないのだが、篤の、どこか自分が傷つきたくないゆえの小心的な行動は、歯がゆい。直己の一途さと全然噛み合わない、このじれったさ! ラストもびっくり。直己、そこまでするか。

あ、待て待て、篤の友人・立原のお節介さには、ちょっとイラッときたかもしれない。篤を心配するのはわかるんだけど。

木原音瀬の作品は、わたしの場合、読む時にはちょっと覚悟がいるのだ。かるーく、あっさり、ちょっとしたトラブルもちょちょいと解決!というワケにはいかないから。これってホントにBLなの?って、それはBLへの偏見か。でも、軽めの作品(一見、シリアスな設定でも表面的というものも多い気がする)が多いなかで、やっぱりこの人の重さや深さは異色だと思う。そして、その作品の登場人物が、男×男ではなく男×女でも成り立つかと問われると――そうではないと思えるところが、やはり別格。

BLで仮に500ページ以上の作品が出版されるとしたら、それを書けそうな作家のひとりかな、と思う。逆にそういう作品が書かれたら読んでみたい。

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Tags: 木原音瀬 藤田貴美 複数レビュー

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