貴公子の求婚(和泉桂)

 20,2009 19:27
直衣と烏帽子姿の男性二人の表紙絵に惹かれて読んだ作品。久しぶりの「表紙買い」かも。

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佐々 成美

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(あらすじより)「昨晩のそなたは、なかなかの珍味だった」。生まれてこの方一度も恋をしたこともなく、女人よりも書物を偏愛している貧乏公家の小野朝家は、ある重大な決断を迫られていた。苦しい小野家の財政を立て直すため、結婚しなくてはならないというものだ。愛する書物を守るため、憂鬱ながらも嵯峨野に暮らすという姫君のもとへ向かった朝家だが、か弱きはずの姫に反対に押し倒されてしまい…!?貴公子と貴公子、平安の風雅な婚礼奇譚、登場。

時代モノBLは好きだけど、平安時代って、ビミョーよね……と思う。受けの方が姫君の格好をしていたり、子どもみたいな格好をしていたり(実際少年なんだろうけど)――まあ、あんまり資料もないのかもしれないけど、どうも「平安時代=女性っぽい時代」みたいな雰囲気濃厚で、それで押されてもなぁ……という感じ。個人的に、BLネタとしてはあまり食指が動かないというか。この作品の前作「姫君の輿入れ」も、主人公が姫君として育てられている設定でしたね。読んでないんだけど。

でもこの作品は、どっちも貴族の、それも大人の男。珍しいんじゃないでしょうか、この設定。おまけに朝家が、自身の勤める式部省で仕事に励む様子が描かれたりしているのも面白い。

さて、朝家はなにはさておいても書物が好き、という貧乏貴族。珍しい本を半年分の禄で手に入れたり、冊子と漢籍に埋もれて暮らしているという部分を読んだとたん、わたしの脳内でオタクと断定されました。しかも見た目も冴えない。何しろ、嵯峨野で隠遁生活を送る謎の男・蘇芳の歌人に、陰で「牛蒡」と言われているぐらいなのだ。イラストでも、いかにも冴えなさそう。

そんなイケてない朝家だけど、蘇芳を朝廷に出仕させようと仕事に励む姿はいじらしい。途中、薫物合せや歌合せに、四苦八苦しながらも真剣に取り組もうとする様子も可愛げがある。それも自分のプライドのためなどではなく、友人・実親のメンツをたてるためというのが、またいとめでたし。

そういう一生懸命なところや、友人を思いやる気持ちを持っているからこそ、朝家、蘇芳の心を掴んだんだろうなぁ……と想像できる。蘇芳も、朝家を陰ながらサポートしたり、恋愛に疎い朝家を巧みにリードしたりするところは、さすが攻め様という感じ。だが、最後の最後まで自分の正体を明かさないのは、ちょっとヒドいと思いますよ、蘇芳。それも、朝家が嫌っている「将久」その人ががまさに自分だと知りながら。

朝家が出家しようと寺に向かうシーンで、どうしても置いていけずに書物をたくさん積み込んでしまい、牛車の動きが鈍い……という描写に、思わず

――煩悩だらけじゃん、朝家!――

と、フキ出しながら突っ込んでしまいました……オタクの面目躍如だな。ま、その後、蘇芳(将久)も同じことを突っ込んでいたけども。

それにしても、最初に朝家が訪なう予定だった、「前大納言の姫君」は、どうなったんだろう――朝家、間違ったまま、しかも間違っていることをしばらく家人には内緒にしていたのだ。朝家が訪れるかどうかは知らなかったから、別にどうってことはないのか……?

平安時代の貴族の結婚スタイルについては、「あさきゆめみし」のおかげで知ってはいるけれど、男同士はどんな風に会っていたのかなぁ……と思った。やっぱり夜這い? 男同士なら、女性に対するよりはわりと簡単に会えたんでしょうかね?

あとがきで和泉桂さんが、「執筆中は、これは自己流の平安風世界だから! と開き直った」と書かれていたけど、いやいや、時代考証が正しいかどうかはわからないけど、平安時代の貴族世界っぽいムードを満喫できました。

でも次回作は「内親王の降嫁」って――また女装……!?
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Tags: 和泉桂 佐々成美 歴史/時代BL

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