秘すれば花(大竹直子)

 16,2008 23:56
日曜に、先輩ズと立ち寄ったヲタ系書店で買ったこの本。

秘すれば花 (キングシリーズ)秘すれば花 (キングシリーズ)
大竹 直子

小池書院 2008-11-28
売り上げランキング :

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

(あらすじより)時代歴史ロマンの旗手が描く、性別を超えた愛の物語。
「女敵」…純愛を忠誠に隠して、若衆は殿のために散っていく。「秘すれば花」…鬼夜叉に艶を教えたのは、なんと足利義満。「乱刃」…牛若丸に懸想した弁慶だが、気がつけば逆の立場に。このほか、全9話+ほのぼの四コマ「あんこ之助がゆく!」を収録。


著者サイン入り。お一人様1冊まで」のコピーと、「弁慶が受けですか…」のポップに、3人ともが買ってしまった。弁慶が受け……なんて斬新な。

PC160162.jpg
これがそのサイン。作品は、大竹さんだけに時代ものばかり。一部、男×女モノも入っています。

で、気になった“弁慶受け”の「乱刃」。なんだか弁慶がやけにカッコよくて、びっくり。ちょっと現代のヤンキー(って、古…)っぽい、イキがっている青年な雰囲気というか。

しかも、これまた美少年な牛若丸の、弁慶を組み伏せる早業といったら! なに、そのスゴ腕!?――と、弁慶じゃなくても呆然としてしまう。

……まあ、これはこれでアリかな、と思う。いや、わたしはキライじゃないですよ? ただ、弁慶がこれまでの定説どおりにゴツくてもイカツくても、いいんじゃないかなぁ……と思わないでもない。あとがきによると、弁慶が美しくなったのは編集担当者の要望らしい。大竹さん自身は「弁慶はマッチョな体育会系が好み」で、さらに「義経も本質は体育会系だと思う」とのことで――その言葉に、思わず納得したわたしだ。牛若丸の、あの素早い弁慶の組み伏し方、それに全体に漂う「試合に負けても悔いなし!」的な爽やかさは、体育会系ゆえなのね……!

そのほか心に残ったのは、足利義満と鬼夜叉(のちの世阿弥)が登場する、表題作「秘すれば花」。美しく芸達者だけど、父親の観阿弥からは「芸に色気がない」とダメ出しされている鬼夜叉。しかも観阿弥一座の人気を妬んで、ほかの一座が鬼夜叉の殺害を目論む。

何者かに襲われ、乱暴される鬼夜叉だけど、その時に、芸に大切なものが何かを悟る。そして実は、その“何者か”は、時の将軍・義満でした――というストーリー。将軍、お戯れが過ぎまする。

義満と世阿弥の関係は、よく知られていること。世阿弥は、芸事に精進し続け、それを極めたというストイックな印象も手伝って、爛れていない凛とした感じがするのがいい(義満は逆に、すごくスノビッシュな感じだけど)。そんな世阿弥の鬼夜叉時代は、やはり芸に打ち込み続ける、ストイックな美少年だったんだろうなぁ……という妄想が、わりと膨らみやすいのかもね、と思い出したのがこの作品。

飛天の舞 (プチフラワーコミックス)飛天の舞 (プチフラワーコミックス)
上杉 可南子

小学館 1990-07
売り上げランキング : 592864

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

(あらすじより)突然、近江興行をいい出した、大和の申楽一座の太夫。しかし、近江には舞の名手・犬王が…。放埓な父の行動に対し反発する鬼夜叉は…!? 表題作ほか三編を収録。のちの観阿弥・世阿弥を主人公に、幽玄な脳の世界を描く歴史ロマン!

……古い作品なので、今は取り扱いがなく、画像がないですね……。画像はコレ。
hiten.jpg
ここで、ためし読みができるようです。

こちらも表題作の「飛天の舞」、そして確か「飛花落葉」が、鬼夜叉の物語だったと思う……手元にこの本がないのでウロ覚えだけど……。こちらの背景は、義満登場以前。そしてここでは鬼夜叉は、父親の観阿弥に屈託を抱いている。偉大な父親をいつか失うのではないかと、子ども心に恐れる鬼夜叉の強がりと素直さが、ちょっと色っぽい絵柄にマッチしていたのが印象的。

上杉加南子さんの時代モノや和モノ、なんともいい難い余韻と色気が、それこそ耽美っぽくて好きだったんだけど、今はレディコミで全然違うものを書かれてるんだよね――個人的に残念。

ともかく、わたしの中では、上杉作品の鬼夜叉物語→大谷作品の鬼夜叉物語と、時間軸が勝手にムリなくつながっている。鬼夜叉、魔性の受けだな。

そうそう、大谷さんの「秘すれば花」に戻るけど、四コママンガ「あんこ之助がゆく!」がかなり好きだ。四コマだと、ほかの作品みたいな妖艶さが薄まって、プリティーな感じ。特にスキなのは、あんこ之助の守護役・茶柱。真剣トンチキの見本だ、茶柱……!
関連記事

Tags: 大竹直子 上杉可南子 歴史/時代BL 複数レビュー

Comment 9

2008.12.19
Fri
00:10

みっと #-

URL

lucindaさん こんばんは
「飛天の舞」懐かしいですね~。本棚の奥から発掘してしまいました。

かなり陰惨な目にも合うのに、鬼夜叉の清冽な魂は失われず、純粋無垢な色香が、更に人をひきつけてしまう・・。まさに魔性!おまけに鬼夜叉の年齢ですが、私の記憶では14,5歳だったんですけど「十にも満たぬ子供」だった・・。
リアルなシーンは全く無いのに、品良くドキドキさせられます。(大きな野犬と戯れるシーンとか、ひいきにしてくれている都落ちの公家に、別れが寂しいと寄り添うところとか)

もっとドロドロした話だったかと思っていましたが、読み返してみると観阿弥の飄々としたキャラや、これから申楽を世にしらしめるという芸への情熱など、観阿弥、世阿弥物語としての要素がしっかり描かれているので、しみじみとした読後感でした。


編集 | 返信 | 
2008.12.19
Fri
07:44

lucinda #-

URL

「飛天の舞」、お持ちでしたか!

>かなり陰惨な目にも合うのに、鬼夜叉の清冽な魂は失われず、純粋無垢な色香が、更に人をひきつけてしまう
そうそう、まさにそんな感じでした。それにしてもまだ10歳未満の設定だったんですねぇ……! 痛ましいけど、後に世阿弥として芸を極めると思うと、ちょっと感慨を覚えます。

編集 | 返信 | 
2009.02.19
Thu
14:31

poppy-23 #amXlFcx2

URL

はじめまして。

はじめまして。大竹さんの「秘すれば花」のレビューを探していて
ucindaさまのブログにお邪魔しました。
とても完結明瞭で分かりやすいレビュー、楽しく拝見させていただきました。
ありがとうございます。
能楽が、大好きで能楽のコミック(できればBL)をいつも探しています~。
大昔は花郁由起子さんとか、、よかったですね。
「飛天の舞」は、初めて知りました。
ちょっと見をして、そのまんまアマゾンのマーケットプレイスで980円
送料320円で購入してしまいました~。

教えていただき、ありがとうございます。
大竹さんのコミックスって、あとは「源平紅雪綺譚」と「白の無言」
くらいしか知らなくて。もし、他の作品をご存知でしたら
教えてくださいませ~。

編集 | 返信 | 
2009.02.19
Thu
18:41

lucinda #-

URL

poppy-23さん、はじめまして!
コメントありがとうございます。能楽がお好きだなんて、すてきですねぇ…。
能楽を扱ったBLコミック、ってほかにあるんでしょうかね…? すみません、わたしもよく知らなくて…。BLじゃないけど、上杉加南子さんの、このころのほかの単行本(「うすげしょう」か「大正のきいろい月」かのどっちか)には、現代の能楽師が登場する作品が載っていたような記憶がありますが……あやふやですみません。でも男女モノだったはずです。

大竹さんのコミックは、わたしも「白の無言」しか持っていないんですよねぇ……。あとは「白の無言」が登場する同人誌ですかね。
何もかも、お役に立てずにすみません……。しかしよろしければまたいらしてくださーい!

編集 | 返信 | 
2009.02.21
Sat
00:43

poppy-23 #amXlFcx2

URL

ありがとうございます。

lucindaさん。お返事ありがとうございました。
上杉加南子さんと、大竹さんの情報もありがとうございます。
大竹さん、同人誌も出てるんですか?
う~~ん。ほしいなあ。
あ、「秘すれば花」わたしもブログ書きました。一部、lucindaさんの
表現を使わせていただきました。一応、こちらのブログから参考に
させていただいた旨を入れて、ご紹介させていただきました。
とても楽しい、記事を拝見して勉強になりました。
これからも、時々お邪魔させていただきます~。

編集 | 返信 | 
2009.02.21
Sat
00:58

lucinda #-

URL

ご丁寧にありがとうございます。
ブログも、ありがとうございます(このコメントでは、poppy-23さんのブログ、わからないみたい……? ちょっと調べてみます)。
こちらこそ、またよろしくお願いいたします。

編集 | 返信 | 
2009.02.22
Sun
08:40

ヒトコ #hHr8eLEw

URL

lucindaさん、こんにちは。
「秘すれば花」実は私も昨年読みました。
今頃のコメントですが(^^;)

大竹直子さん初読みでしたが、表紙&タイトル買いです。
前に、ちょっと気になっていた杉本苑子さんの「華の碑文」を、
神保町の書泉ブックマートで見つけて読みました。
BLと並んで平積みしていたんですよ。
その流れで瀬戸内寂聴さん「秘花」を読んだので、
ついタイトルに目が行っちゃいました。

牛若×弁慶は新鮮でした。
五条大橋で牛若が弁慶を服従させた理由がそれだったとは!
実は昔、義経にハマっていたので、このお話が一番印象的でした。

編集 | 返信 | 
2009.02.25
Wed
03:54

lucinda #-

URL

ヒトコさん、コメントありがとうございます。レスが遅くなってすみません!

そうそう、書泉ブックマートって、関連している小説が平然と、BLの横に並べられてますよね(笑)。そうか、この本の隣りには、「華の碑文」が並んでいたんですねぇ……!

牛若×弁慶、なんかすごい爽やかな感じが印象的でした。弁慶が、あれでもっといかつい感じだったら……<まだいうか。

編集 | 返信 | 
2011.11.28
Mon
04:36

lucinda #-

URL

ブログ拍手RES

> 11/19 09:30の方

コメントありがとうございました。レスが大変遅れまして申し訳ないです。

上杉可南子さん、お好きなんですね~! 耽美な作品をまた描いてほしいなぁと思いますが……まあ、せめてあの頃の作品を大切にとっておこうと思います…。

編集 | 返信 | 

Latest Posts