夢は廃墟をかけめぐる☆(渡海奈穂)

 09,2008 23:33
「廃墟」の言葉の妖しさや、依田沙江美さんのイラストに惹かれて買ったこの作品。

夢は廃墟をかけめぐる☆ (新書館ディアプラス文庫)夢は廃墟をかけめぐる☆ (新書館ディアプラス文庫)
渡海 奈穂

新書館 2007-10
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(あらすじより)撮影に訪れた廃墟の島で、カメラマンの伊原木は一人の男と出会う。周囲の景色に無理なく馴染む様子に、伊原木は理想の“廃墟の精”を見出した。その彼と町中で再会する。妖精の正体は三島要、妻に離婚され会社からも不当解雇され、人生を捨てかけている元エリートサラリーマンだった。行き場のない三島を伊木原が連れ帰り共に暮らすうち、自由な伊原木に影響を受け三島も変わり始める―。年下攻ストレンジ・ラブ。

あらすじだけではわからなかったけど、この作品の中には、攻めの伊原木が廃墟オタクなのをはじめ、かなりディープなオタクたちがたくさん出てくる。それも、鉄道オタク、鉄道の中でも廃線(廃線した鉄道)にこだわるオタク、軍オタクなど、なんつーか、男子系オタクの濃いところがピックアップされている感じ。

ストーリーは、元エリートサラリーマンだった三島と、彼に一目惚れしたカメラマン・伊原木の、めでたく思いが通じるまでのアレコレ――なんだけど、三島の頑なさと伊原木の鷹揚さが、最初はかみ合っていないように思えてハラハラしてしまう。そんな二人に、オタクたちが絡むのが、ちょっと新鮮。

オタクたちの溜まり場である喫茶店「純喫茶・伴茶夢」のその昭和チックな店名や、喫茶店店長・真鍋の「プロレスラーのような体格をした強面の頭の薄い男」といった風貌に「~じゃない」「~でしょ」なやわらかい口調ってのが、なんだか一癖ありそうだし、三島と伊原木の関係に無関心なのか応援しているのかわからないオタクたちの、ちょっと不自然っぽい堅苦しいしゃべり方や、「……オタクね…」とわかるツボを押さえた描写がオカシイ。

そもそも、三島の「~ではないか?」とか「~してくれ」とかいった口調が仰々しいというか、時代がかった感じで物々しく、それゆえストーリーの展開が足踏みしているように感じられて、読み始めた頃は途中で何度も居眠りしそうになったのだけど――三島が会社員時代、年上の部下に対応するために身に着けたというこの口調は、ちょっと引いてみると、オタクたちのもったいぶった口調にも似ているようで興味深い。

個人的にウケたのは、三島視点で語られているこのナレーション。

基本的にみな専門用語や隠語で話すことが好きな性質らしく、演説の半分以上が三島にとっては呪文のようなものだったが、熱心に趣味について語る彼らを眺めるのはおもしろかった。

これ、そのまんま、わたしが先輩ズやディープなオタクたちの会話に立ち会った時の感慨だよ! 同時に、こんな会話を目にすると、三島同様、自分の底の浅さに考え込んじゃうんだけどね。

「世間体」というものを切り捨て「自分のやりたいこと」を見つめ始めた三島が徐々に気が付く、「伊原木との関係を大切にしたい」という思いに、じーんとしてしまう。遅ればせながらもそんな気持ちにちゃんと気が付いた三島はえらいと思うなぁ……。

あとがきの中で、「廃墟好きな伊原木は、この先ますます朽ちていく三島を永遠に愛し続けるのだと思います」と書かれている部分に、思わず吹き出した。「ますます朽ちていく」って、そんな身もフタもない表現! まあ、間違ってはいないけど。

それにしてもオタク属性を持つキャラって、やっぱりBL作品で増殖しているのかしら……?
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Tags: 渡海奈穂 依田沙江美

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