うそつき(烏城あきら)

 25,2008 02:17
新作が待ち遠しい作家の一人、烏城あきらさん。待ちに待ったこの作品を読みながら、われ知らず、「うまい……」と呟いていたのだった。

うそつき (二見シャレード文庫) (二見シャレード文庫 う 1-7)うそつき (二見シャレード文庫) (二見シャレード文庫 う 1-7)
桃月 はるか

二見書房 2008-09-22
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(あらすじより)夜逃げした両親に置き去りにされ、叔母に育てられた誠。高校を中退し、高速道路のサービスエリアで天津甘栗の販売員として勤める彼に声をかけてきたのは、若干二十三歳で運送業を営む輝夫だった。休憩時間のトラックキャビンでの短い逢瀬。輝夫はためらいなく誠を求め、誠は戸惑いながらそれに応えようとするが、ある出来事がきっかけで輝夫の態度がよそよそしくなって…。サービスエリアの常連でバイク便を営む修平とその恋人・克美の物語「ひみつ」と、2カップルの書き下ろし後日談「わがまま」を収録した三本立て!

烏城さんが、巧みなストーリーテラーであることは間違いない。そして、文章が上手いのも言うまでもない。わかっちゃいるんだけど一読して、久々に「やられなぁ……」と思ったのだ。「これ、今年のベスト3に入るなぁ」と確信したのだ。まるで評判のエースから、鮮やかに三振を奪われたバッターのように。あるいは見事なシュートを決められたゴールキーパーのように。<注:あくまでも想像上のさわやかな敗北感。

この作品、これまでの主だった烏城作品の特徴がすべて入っていると思う。つまり、

■ガテン系な仕事(今回は配送業)に従事する主人公
■仕事に対するキャラたちの真面目さ
■脇役に元気な老人
■テンポのいい会話
■エッチにおける、攻めのしっかり感じている様子

という風に。キャラたちは恋に悩んでいるけど、仕事をおろそかにしない。というか、それ以前に、べらぼうな金持ちという設定ではなく、貧乏だけど地に足をつけて、仕事にも恋にもコツコツ前向きに取り組んでいる様子が、個人的には好印象。

そして、今回の主要キャラ4人は、誰もが挫折感や喪失感、孤独感を抱えているのだが、それらがごくごくサラッと描写されているにも関わらず、ストーリーが進むにつれて、実にうまーく浮き彫りにされるのがニクい。読んでいるわたしも、挫折感や喪失感、孤独感にシンクロしそうになっちゃったよ。

烏城作品ではほぼ初めての、関西弁で会話が進む作品(舞台がどうやら兵庫らしいので、兵庫弁?……っていうんだろうか?)。そのせいなのか、全体的に人情モノっぽい雰囲気が漂っているのだけど、女々しくないし、ビショビショとウエッティじゃない。湿り気があるのに、どこかサッパリ、カラッとしているこの絶妙なバランス。これを読みながら、わたしの頭の中では、歌謡曲チックなロックがBGMとして流れていたのだった。

えー具体的には……わたしの頭の中では、エア●スミスの「Cryn'」が流れていたと正直に告白しておきます。

よくよく考えてみると烏城作品のキャラ設定、特別奇をてらっているわけではないと思うのだ。それどころか、BLというジャンルの、ごくスタンダードな範疇に設定されていると思う。すなわち、“ちょっと寡黙で強引で、時にガタイがよくて、でも受けにメロメロな”攻めと、“強気でしっかり者だけどけなげで美形な、ちょい華奢か小柄な”受けという具合に。

この作品の主人公たち、「うそつき」の輝夫×誠と、「ひみつ」の修平×克美も、そんなスタンダードな設定の例外ではない。それなのに、いったんストーリーが動き出すと、彼らは実にイキイキと動きだして、マンネリ感やありきたり感を感じさせない。

「うそつき」では、輝夫のわかりやすいヤキモチ焼きっぷりと誠のキレっぷり、「ひみつ」では、修平の途方にくれた様子と克美の動揺が、印象的だったなぁ……。読み終わると、とても上質な映画を見たような気持ちになった。それだけわたしにとっては、ストーリーの情景が目に浮かぶ感じだったということだ。

――え? 全然レビューになってないって?

スミマセン。でも何はともあれちょっとだけでも読んでみて――そして、烏城あきらの才能に震えなさい!<これ、「冴子の東京物語」(氷室冴子)で、夢枕獏氏が書かれていた解説のタイトルを引用させていただきました。いや、今回のこの作品を読んだ後、このタイトルが自然に思い出されたのです。まったく、爽やかにキめられちゃったなぁ……ホームラン……(まだ言うか)
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Tags: 烏城あきら 桃月はるか ガテン系BL 感じる攻め

Comment 2

2008.09.25
Thu
21:08

月読 #-

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■エッチにおける、攻めのしっかり感じている様子
↑これに大きく頷いたワタシ(笑)
「烏城」の場合は仕事・人間関係・えちにおいてもすごくフェアな感じがするんですよね。
「うそつき」は未だ手元にこないけど、早く読みたい!足踏みしてます(笑)

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2008.09.29
Mon
22:01

 #-

URL

lucinda

月読さん、レスが遅れてごめんなさい!

うん、烏城作品、受攻関わらず、人間関係がフェアな感じ、しますね。そこはすごく魅力です。
月読さんのレビューも拝見しましたよん。ウフフ…。

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